03 魔力0の皇子
それから俺はルードに遠慮なく質問を繰り返した。
そのたびに淡々と答えてくれるルードの説明はとてもわかりやすく、膨大な量の情報もすぐ頭に入ってきた。
質問攻めで申し訳ないと思いながらもこれから生きていくうえで必要なので勘弁してほしい。
時間も忘れて質疑応答をしていたらいつの間にか太陽の光で明るかった部屋が、ロウソクをつけるほど暗くなっていた。
大体の情報を得た俺は、説明と並行して就寝準備をしてくれたルードに感謝を伝えておやすみ、とベッドにもぐった。
ルードが部屋から出るのを確認した後、ベッドの中で手に入れた情報をいったん整理する。
このオリビア帝国の現皇帝であるクラウス。
相当な実力とカリスマ性を持ち、冷徹にして傲岸不遜で冷酷無比。圧倒的な威厳と絶対的な支配力も兼ね備えている。
貴族にも宮廷内に仕えている人間にもクラウスに逆らえる者はいないのだとか。
これは絶対にかかわりたくない、というか関わったらヤバイ部類の人間だ。
実の父親なわけだから完全に関わらないようにするのは無理だろうから、目を付けられないようにおとなしく過ごそうとひそかに決意する。
そのクラウスを父に持つ俺以外の三人の皇子。
第一皇子:ノアは性格がよく人望も申し分なし。知力も高いが魔力が低め。
第二皇子:レオンハルトは魔力は高いものの知力は低めで、プライドが高い。
第三皇子:フィリックは十分な魔力と知力を持っているにも関わらず皇位継承に興味がなく、かなり軽い性格。
俺の兄弟たちはざっとこんな感じで正直不安しかない。
この三人の誰かが次期皇帝なんだよな、大丈夫か・・・。(さらっと自分を候補から外している)
頭を抱えたくなったが今悩んでも仕方ない。
現在の国の情勢は比較的安定していて戦争もなければ内乱もない。
なんでも今のこの状態はクラウスの圧倒的実力と権力で維持されているらしい。
まだ顔も知らないが、我が父親ながら恐ろしい。
魔力という言葉が出てきたとき気になってルードに聞いてみたところ、この世界には魔法も存在するみたいだ。
この世界に娯楽がどれくらいあるかは知らないが、楽しみが一つ増えた。
しかし魔力を持つのは皇族と上位貴族の一部の者だけで、稀に平民にも魔力を持つ者もいる。
魔力を持つ者は重宝されるが、皇族が魔力を持っていることは当然とされていてクラウスも膨大な魔力を有している。
実際これまで皇族が魔力を持っていないことは歴史上一度もないらしい。
皇帝の魔力が膨大であればあるほど他国への威圧となり抑制できるため、皇帝に求められる素質の一つでかなり重要なのが魔力というわけだ。
第四皇子である俺も持っているのだろうと思っていたのだが、なんとこの体には魔力がないらしい。完全に0。
魔力がとても少ないとかでもなく、全くないのだ。
魔力は生まれてすぐは感知はできない。感知するには魔力を身体に巡らせる必要があり、魔力を持つものは成長に伴って自然と巡らせられるようになる。5,6歳を目処に魔力を持つか持たないかを判断するのだ。
10歳までには最初の魔力循環をだいたい終えるため、10歳で完全に魔力を持つかどうかが決まる。
第四皇子は現在13歳なので魔力0と判断された。
そしてこの世界で黒髪はめったにいないらしい。
そのため宮廷内や貴族間では無能なうえに不吉だと散々言われている。
黒髪で魔力もないうえ元の第四皇子の性格は臆病で発言は少なく、社交の場では控えめ。争いを避け、前に出ることもないときた。
ゆえに現在第四皇子:ルシエルは皇位継承権争いから外されており、この離宮に追いやられているのだ。
これを聞いたときはどれだけ心が高揚したことか。
政治。外交。責任。人間関係。面倒な会議。皇位継承。その他諸々。
これら全てから今、解放されたのだ。
理想的な状況すぎて、ルードの前でょっしゃ!!、と思わずガッツポーズしてしまったくらいだ。
まあ相変わらずルードの表情に変化はあんまりなかったけど。
この離宮は以前までは宮廷として使用されていたが、追加で新しく宮造したことで使われなくなったらしい。
手入れもしておらず古びているが住めなくはない。
無能の皇子への嫌がらせのつもりなんだろうけど、今の俺にとってはここも十分豪華だ。
ありがたくこの広い離宮を思う存分使わせてもらうことにする。
まだ掃除をしたわけではないのであまり大きくはできないが気持ちが良いほどに伸びをする。
他にもルードからもろもろ聞いたが、ちょっと忘れた部分もある。
まあ困ったときにその都度聞けばいいので気にしないことにする。
「それにしても・・・」
ルードの説明の中で気になったこと。それはルードの態度だ。感情の起伏が全く見えないのはルードの性格なのだろうけど、なんというか俺への興味とかがない感じがする。
まあ元ルシエルの性格を考えるとわかる気がするが。
でもルードの第一声だったお目覚めになられたのですね・・・的な言葉にも、彼の瞳にも安堵や心配の色はなかった。
興味がないと言うよりは渋々、義務感で接している感じか。
俺としては嫌でも仕えてほしいわけではない。
嫌ならやめてもらって構わないし、なんなら俺一人でもなんとかなる気がする。
離宮にいるメイドは離宮の状態からするに非協力的な感じがするのであまり期待はできない。
とにかく明日はまず掃除だなと思い、襲ってきた眠気に抗うことなく意識は沈んでいった。




