第7話:与太話
【パルデノシア近辺上空】
地上が霞んで見えるほど高高度に見えるが、意外にも飛竜の背中は快適だった。
魔術的な保護領域、いわゆる結界と言うものが張られているそうで、風も音もさほど気にならない。
「うぅ……。酔ったかもです……。」
フィリスがへたり込んで唸る。
私自身も、こんなに高所に来たことがないからか、少し具合が悪い。
そういえば。と思い御者に聞かれないよう気を付けながら話を始める。
「そういえば、フィリスは私の元の世界についても気になっていたんだったな。」
すると、フィリスはサッとこちらに向き直った。
「はい!とっっっっっても気になります!!!」
「なら、そうだな。」
「今、乗ってるのは飛竜ってやつだろ?こっちの世界には、こういうモンスターはいなかったんだ。」
「森の中で見かけた動物達みたいな生き物はいたが、ゴブリンやらドラゴンやらはいない。」
「そこは流石にロレイアちゃんの反応からわかりますよ!」
「まぁ、ドラゴンの代わりと言ってはなんだが、鉄の塊が空を飛んでいたんだ。」
「鉄の塊が!?そんな重い物がどうやって空を飛ぶんですか!」
「それは、空気抵抗?やら揚力?やらを使って飛ぶらしい。が、仕組み自体は私も詳しくは知らない。」
「だけど、その空飛ぶ鉄塊は、戦争に転用されて、たくさんの人を殺した。」
「空から爆弾を落とすだけでも、十分な脅威だからな。」
「ひええ……。そんなことが……。」
「あと、この世界とかなり違うところで話しやすいのは……、魔術の違いはもう話したから……。」
「そうだな、これについてまだ説明してなかったか。」
横にある銃を手元に持ってくる。
「それって、イージスと一緒に使う杖?的なのじゃないんですか?それでゴブリンを消し炭にしてましたし。」
「あれはこの世界の魔力が濃すぎるからであって……。という話は置いておいて、これは銃って言って、本来は鉛の弾を火薬を爆発させて発射させる武器だ。」
「鉛の弾を……?なんだかややこしいですね。弓とか弩じゃだめなんですか?」
「弓より速くて貫く弾を、装填さえしておけば、基本的にいつでも大量に撃てる。しかも矢よりも傾向しやすいし、大量生産可能。とすれば、凄さが伝わるだろ?」
「え。ええ??そんな凄いんですか?だったらゴブリンに撃てばよかったじゃないですか。」
痛いところをついてくる。
「前の世界からこっちに来る直前に使い切ってたから……。」
「実際に撃ってるところ、見たかったです……。というか、凄いですね!そっちの技術!多分ですけど、弓に魔術を込められる人とか、魔術を込められる弓を造れる人なんて、数えるほどしかいないと思います。」
「まあ、ロレイアちゃんの話聞いて、こっちの世界の魔術師って自分の身1つで基本なんでもやっちゃうんで、道具に頼る必要が無かったのかなって思います。」
「まぁ、私は杖に頼らないと魔術を上手く使えないんですけどね!」
確かに。と思う。
「ロレイアちゃん!そこは笑うところですよ!何真顔でこっち見てるんですか!」
「はははははは。」
「もーーーー!!!」
これまでの人生に比べて幸せな時間が過ぎてゆく。
しばらくすると、御者がこちらを向いて声をかけてきた。
「そろそろパルデノシアが見えるころだと思います。」
そう言われ、地上に眼を向ける。
雲を通り過ぎ、現れたのは巨大な城と広大な城下町であった。
飛竜は高度を落とし、城の近郊に位置する飛竜の発着場のような場所に着陸した。
飛行機の発着場と少し似ているな。と思いながら飛竜を降りると、馬車まで案内された。
どうやらこの馬車で飛竜から見えたあの城に行くそうだ。
ギルドマスターの権威に驚きつつも、不安の種が大きくなってゆく。
ここまで大層な歓迎があるのならば、絶対になにか裏がある。
フィリスもどこか不安げな顔をしている。
馬車に揺られながら、街並みを見る。
先程いた街と建物の雰囲気は変わらないが、どの建物もとても堅牢そうに見える。
人々の格好も、よりしっかりした服装の人々が多い。
「そういえば、フィリスの叔父さんんは、ここにいるんだったよな。」
「はい。多分ギルド本部⋯⋯、恐らく、あの城にいるんだと思います。」
あんな場所が職場かぁ、と思う。私だった帝都の帝国議会とかで働くなんて、豪華過ぎて無理だ。
「まぁ、ギルドマスターと会って、何事もなかったら会いに行くか。」
「確かに。助っ人はたくさんいたほうがいいですからね!」
そんな話をしていると、馬車が止まった。
どうやら到着したようだ。
馬車を降りて城をみる。近くで見るとその異様なまでの大きさが際立つ。
元の世界でもこんなに大きな建造物は見たことがない。
城の中を案内される。議会や会議室、裁判所に行政等といった国家運営に関わる部分が、ここにまとまっているようだ。
そして、最後に大きな扉の前に辿り着いた。
ゴゴゴゴ……。と音を立てて、扉を開く。
扉の向こうには、玉座、そして、そこに足を組みふてぶてしく座る女性とその後ろで仁王立ちをする人影があった――――。




