第5話:ギルドと罠
ギルドと呼ばれている建物の前まで来た。
そこは街の中心に位置するようで、他の建物に比べても1回りほど大きい。
両開きの扉を開ける。
中に入ると、中は役所に近しい雰囲気であった。
正面には総合の受付があり、両サイドに冒険者カウンターと報酬の受け取り所があるようだ。
それ以外にはイスと机がいくつかと、酒場のカウンターのような場所もある。
「ここがギルドか……」
ここに来るまでに聞きかじった限り、この場所とは別に行政的なギルドの施設もあるようだが、そこはギルドの冒険者ですら入れず、職員のみが入ることを許されている施設らしい。
正面の受付に話かける。
「冒険者になりたいのだが、どうしたらいい?」
受付嬢はにこやかに答える。
「でしたら、こちらの書類をご確認の上、署名をして下されば、冒険者カードを発行いたします。」
結構簡単に登録できるんだな……。
「フィリスも登録するってことでいいんだな?」
一応確認する。
「はい!当然です!せっかく覚えた魔術を生かせないまま一生を終えるのなんていやなので!!!」
2人分の書類を貰い、確認する。
冒険中の責任が~どうとか、補償のための納付金が~どうとか。
小難しく書かれている書類を一応確認しつつ読み進める。
どうやら冒険者は歩合制のようで、各々がクエストと呼ばれるものを受け、それを達成することで、金品が手に入るようだ。
剣やナイフ等の装備品は、全損しない限り無償で貸し出しているようだ。
現在の装備がナイフと銃とフィリスの杖しかない中で、装備品が無償で使えるのは大きい。
その後も、まぁ当然と思える内容を読み飛ばさずに見る。
フィリスは横でぐったりしながら署名している。
十数枚ある書類に署名し、最後の1枚になった。
そこには。
―ギルドマスターの命は絶対であり、ギルドに所属する者としてこれを絶対遵守する。―
と記されていた。
フィリスを見ると、どうやら書き終わったようだ。
フィリスに聞く。
「最後の書類、ちゃんと読んだか?」
「えっ?あ……あ。ちゃんと読みましたよ?ちゃんと。うん。よみましたよ?」
これは読んでないな。
「まぁ、そんなこと言うんだったら、一応確認しますよ。2回目ですけどね。」
そう言って最後の書類を見るフィリスの顔がだんだんと青くなっていった。
フィリスがこっちを向く。
「……なんで……。」
「なんで、先に言ってくれなかったんですかぁ!」
「こっちがその文を読んだ時にはもうフィリスが署名をしてたからな。」
「もぉ!これからどうすればいいんですかぁ!これギルドマスターにあんなことやそんなことを命令されたら、それに従うしかないんですよ!!!」
しょうがない。私も署名して一応落ち着かせるか。
そう思い署名する。
「ほら書いたぞ。」
万が一ギルドマスターとやらにどうしても無理な命令をされたら、無視すればいい。
違約金やらなにやら払わせられるかもしれないが、しょうがない。
「なんでロレイアちゃんまで署名するんですかぁ!これ!魔術的な契約ですから、同意しちゃダメなやつですよぉ!!」
頭の中が真っ白になる。
「は?」は?―は?―
何を……言っている……?
一応滅多に使わない魔力解析に魔術を使うと……。
書類には見たことのない魔術がかけられていた。
魔術的な契約……??
こちらの世界の方が魔術的な技術は進んでいるのだ。
ならば、そのようなものがあってもおかしくない。
「これは……解除できるものなのか……?」
もしかしたらと思い、フィリスに聞く。
「この契約を提示してきた人、つまりギルド側が了承すれば、解除できます……けど、それ以外では無理だと思います。」
やっぱりダメかー。ダメなのかー。フィリス、見捨てるべきだったかぁ。
圧倒的な後悔を前に打ちひしがれる。
恐らく、この契約の魔術で、ギルドは冒険者達を戦争に引き出したのだろう。
「でっ……でも、最初の方に書いてあった気がするんですけど……。」
フィリスが1枚の書類を見せてくる。
そこには、『冒険者として優秀な者には特権が与えられる。』と書いてあった。
そして、その下の特権一覧の中で、フィリスが指さしているところを見ると『自由行動権』と書いてあるものがあった。
その概要としては、ギルド側の制約や命令を無視して行動できるという。
ギルド側、というのには当然ギルドマスターも入っているようだ。
「これは……確かに言ってはなんだが騙されたも同然の身としては、是非とも欲しいな……」
解除できないとなれば、いつ危険な場所に引っ張りだされるかはわからない。
元の世界でさんざん戦争させられたんだから、こっちの世界でぐらい戦争はしたくない。
「よし。早く冒険者登録を済ませて、クエストを受けるぞ。」
ならば、一刻も早く、この特権を手に入れなければ。
「うう……ロレイアちゃん……本当にごめんなさい……。私もこれからちゃんとします……」
書類をまとめ、受付渡す。
そうすると、1枚のカードが渡された。
これが冒険者カードというやつか。
何も書かれていないカードを眺める。
「こちらは、魔術的な刻印により、名前や現在の階位、パーティメンバーなどが随時更新されます。」
「無くされた場合は再発行できますので、こちらにお申し付けください。」
魔術にはそんな行政的な使い方もあるのか。と関しつつ話を聞く。
「クエストを受けるには、2名以上6名以下のパーティを組む必要がございますが、そちらの方と一緒でよろしいでしょうか。」
2名でいいのならば、私とフィリスで丁度いい。
「ああ。それで大丈夫だ。」
受付嬢がほほ笑む。
「これで、あなた方は晴れて冒険者となりました!改めまして、ようこそ!夢と開拓の冒険者ギルドへ!私達はあなた方を歓迎します!」
不気味なほどテンションが高くなったな。と思いつつ、ひとまず職を得たことに安堵する。
旅を続けるにも、物資や金銭が心もとない。とりあえず、簡単そうなクエストを受けてみるか。




