第4話:街
朝から歩いて3時間ほど経ち、ようやく街らしき影が見えてきた。
さらに近づくと、街の風貌がより明らかになっていった。
街は10mほどの壁に囲まれており、街の周りには集落等が点々とある。
街の中の方は、レンガ造りのような、石造りのような、中世~近代にかけての建物が混ざったような不思議な雰囲気をしていた。
集落の人々が畑仕事や馬の手入れをしているのを横目に街へ向かう。
ひとまず、話を聞くのは街についてからにしよう。
そう思いつつ、歩く。
壁に取り付けられた門の前まで来た。
ここまでくると、人の流れが多くなってきたが、門の両脇には槍を持った兵士?が立っているものの、特に検問等はしていないようだ。
「よし。行くぞ。」
「はい!」
フィリスが元気よく返事をする。
フィリスと共に門をくぐる。
そこには―――。
活気あふれる街並みがあった。
どうやら、私達が入ってきたのは、露店が連なる市場に出る入口だったようだ。
お代はいくらだい?
さぁ、安いよ安いよ!!!
これ、いいなぁ。
あれほしい!
そこら中で活気の良い声が聞こえる。
活気の良さに気圧されていると、気良さそうな露天商が声をかけてきた。
「おう!嬢ちゃん達!ギルド領内は初めてかい?」
「まぁ、はい。」
ギルド……。何かの組合だろうか……?
フィリスに視線を向けるが、首を横に振る。
どうやら知らないらしい。
「すみません。かなり田舎の方から来たもので、あまりここら辺について知らないのですが、色々教えてもらってもよろしいでしょうか?」
「いいぜ!」
案外すんなり了承してくれたのに驚きつつも質問する。
「まず、ここを管理している人々や組織について、教えていただけますか?」
「ああ?そりゃギルドだろ。ここらの街や村は全部ギルドの管轄だぜ?」
まずは、そのギルドについて聞かないとか。
「すみません……私達、本当に田舎から来ていて、ギルドについて全くと言っていいほど知らないんです。そこから教えていただけますか?」
「それは結構な田舎から来てるな。ギルドは……そうだな。この世界平和を保つための組織って感じだな。」
「ギルドってのは、元々冒険者が集まる場所だったんだ。新しい地を冒険し、開拓する者達のための組織。それがギルドだった。」
「たくさんのやつらがギルドに入り、ダンジョンやら未開の地やらに夢を見て冒険をする。」
「そういう場所でしか手に入らない物もたくさんあるから、冒険者ってのは、結構割のいい職業だったんだぜ?」
「たくさんの力ある者達が同じ組織に属していたんだ。」
「あれは……そうだな、20年ぐらい前か。」
「ある戦争があったんだ。」
「南のイベリスタと、東のバルカニアの戦争だ。」
「それはそれは悲惨で、惨い戦いだった。」
「その戦いに、当時のギルドマスターが主導して、ギルドが参戦したんだ。」
「参戦、って言うと、どっちかの味方をしたってことです?」
フィリスが聞く。
「いや、ギルドは両国を相手どって、戦争を終わらせようとしたんだ。」
規模はわからないが、ギルドは国家を2つ相手どれるほどの戦力を有しているのか。
「その結果、ギルドは両国に勝ち、両国は白紙講和になった。」
なるほど。
「それで手に入れた領土がこの街ってわけか。」
「いや違うぞ。」
あっさり否定される。
「その戦争を止めた功績を、アルミス教の総主教やら、財界のお偉いさんたちが認めて、ギルドを国際的な秩序保持のための組織にしようってことになったんだ。」
「で、色々あって、すべての国の国境周辺を管理して、戦争が起こらないように各国を監視してるのが今のギルドってわけだ。」
「今も冒険者の募集はやってるから、よかったらお嬢ちゃん達もギルドに行ってみるといい。」
今の会話である程度の国際情勢はわかった。
国境部分を管理して国際平和を維持する組織……。
それがギルドというわけか。
そういえば、とフィリスが言う。
「魔王ってどこにいるか知ってますか……?」
露天商はきょとんとした顔で言う。
「魔王?何だ?おとぎ話の話か?」
フィリスと目を合わせる。
魔王がいないのか……?
「いえ!なんでもありません!!それと、ありがとうございました!!!」
フィリスが慌てて挨拶をする。
「なんてこたぁねぇ。もし何か欲しい物でもあれば、贔屓にしてくれよな!」
手をふる露店商を背にしつつ、人気の少ない場所へ向かう。
「どういうことだ……?」
あの後も通りすがりの人に魔王の事を聞いたが、現実の存在として知っている人は誰一人としていなかった。
「私にも何が何だか……」
「勇者さまがいるんですから、魔王もいると思っていたんですが、言い伝えが間違っていたんですかね……?」
その可能性はあながち否定できない。
なにしろ、私もその言い伝えが載っていた書物を読んだことが無いからだ。
「"旅をする"という目的に変わりはないが、逆にどうして私、というかイージスの事を予言できたのかが不思議だな。」
「それは私にも……とりあえず、ギルドに行ってみますか?」
ギルドには人も情報も集まるという。
こちらの世界で暮らすためにも、職に就いておいた方が安心できるわけで、行かない手はない。
私たちはギルドに向けて足を進めた。




