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帝国の魔術兵は異世界で勇者となる。  作者: ボ・ボ=ボイラー


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第1話:勇者

 目が覚めると、知らない部屋のベッドの上だった。


 窓から差し込む朝日が眩しい。

 

 ここは、あの世か?

 

 五感を確かめる。手足は正常に動く。

 

 一息ついてから思考を巡らせる。

 

 あの世ではないとしたら、あそこまで覚悟を決めた自爆がまさか失敗に終わったのか?

 だったら、ここは敵国の捕虜収容所だろうか?

 いや、それにしては整備されすぎている。

 

 ふと見ると服も軍服ではなく、宿の部屋着のようなものになっていた。

 というか、もし仮に自爆が失敗に終わっていたとして、最低でも自爆の直前まで魔力が集中していた左手は焼けているはずだ。

 

 しかし、左手を見てみると、まるで何事もなかったかのように奇麗なままだ。

 さらには、かれこれ2週間ほど森の中で逃げていたにもかかわらず、全身の傷や汚れすらない。

 

 うん。なるほど。完全に理解した。

 やっぱりこの場所は死後の世界なんだ。

 

 勝手に納得をしていると、部屋の外で物音がした。

 身構えながら、扉が開くのを待つ。

 

 扉から出てきたのは、2つ結びをした司祭のようなの少女だった。


「ゆっ……勇者さま!?起きたんですか!?!?」


 慌てて駆け寄ってくる少女の口から発せられた言葉に困惑する。

 勇者……???


 ()()とは私の事だろう。しかし、勇者とはどういうことだろうか?

 別に世界を救ったりだとか、勇敢に化け物に挑んだわけでもない。


「すまない……起きたばっかりで混乱していて……聞きたいことは沢山あるんだが、まず、ここは一体どこなんだ?」


 何はともあれ、現状を把握しなくては。

 もしかしたら、死後の世界というものが、想像とかなり異なるのかもしれないし。


「あっ。確かにそうですね。確かにこの()()に来たばっかりですもん!わからないことも多いと思います!順に説明しますね!」


「勇者さまは!この世界を魔王から救うために異世界から現れた勇者さまなのです!!!つまり、ここは勇者さまの元居た世界とは別の異世界ってことです!」


「は―――?」


 魔王を倒すために呼ばれた勇者……?

 元居た世界とは別の異世界……?


 やはりわけがわからない。


「いったん着替えてもいいか?なんだか少し肌寒くてな。」


「確かに!ちょっとこの部屋寒いですもんね。」


 彼女は特に悪意などがあるようには見えないが、いつでもここを脱出できるように、できる限りのことをしておこう。


 横の机に畳んだ置いてあった軍服に素早く着替える。数々の戦場を共にしたボルトアクション式の愛銃や装備品も、部屋の端においてある。


 そうして、一応イージスも左手につけ…………。


 ありえない。


 大気中の魔力量が、帝国国内に比べても2()0()0()()()()もある。

 魔術をインフラとして率先して整備してきた帝国の200倍の魔力量、地球上のどんな場所であろうとあり得ない。

 であれば、本当に異世界なのだろうか???


「さっきの話の続きをしてくれないか?」

 

 もし仮に本当に異世界に飛ばされたのならば、元の世界に戻れるにしろ、戻れないにしろ、情報を集めないと。


「わかりました!」

 

 「私の村には『左腕に紋様の入った手套を付けし勇者が現れる時、魔王を倒す旅が始まる』って言い伝えが残ってまして、私の家系はその勇者が現れた時の為にずっと準備してたんです。」


「『左腕に紋様の入った手套』」と言っていたが、これか?」


 左手に付けているイージスを見せる。


「そう!それです!言い伝えが記された書物に描かれていたのと一緒です!」

 

 言い伝えに私の事が記されていた?いや、帝国軍ではイージスはかなり普及していた。

 であれば、帝国軍の誰かの事を予見していたのか?


「人違いではないのか?ここが、異世界……だとして、私の元居た世界では、この装備を付けた人々はかなりの数いたぞ。」

 

「そうなんですか!!?」

「でも、ここにいるのは勇者さましかいませんよ?」


 確かに、今この場にいる魔術兵は私しかいない。


「信じがたいが、この世界が私の元居た世界ではないのは把握した。しかし、なぜ私がその魔王とやらを倒さないといけないんだ?」

「倒したければ、異世界からやってきた私なんかじゃなくて、他の人達を頼ればいいんじゃないか?」


 当然の疑問を投げかける。


「……私の一族は、幼い頃から勇者と共に魔王を倒す旅をするための準備をしているんです。魔術を覚えて、モンスターの弱点を調べて、私は苦手でしたけど、体術だったりを学んだり。」

「なんだか、変な話ではあると思います。いつ来るかもわからない勇者さまの為に、一生準備をし続けるなんて。」

 

「だからこそ!勇者さまを見つけた時!本当に神様が導いてくれたのだと思いました!」

「まるで御伽話が本当になったような、そんな感動と衝撃でした!」

「確かに、いきなり魔王がどう。とか言っても、わけがわからないですよね……」

 

「なら――私と一緒にこの世界を旅しませんか――?」


「勇者さまも、この世界について、色々知りたいことがあると思います。」


「……ですから!魔王討伐は二の次に!この世界を回りましょう!!!」

 

 ぐ…ぐぐぐ……。

 ここまで、頼まれると断りづらい……。

 

「ここが異世界であるならば、私もこの世界について知らないといけないことも多いのは確かだ。」

「はぁ。わかった。そこまで言われたら、断れないしな。」


 私は元の世界では死んだも同然だ。ならば、この世界で生きてゆく方法を探さねば。


 「私の名前は、ロレイア・バーベンシュタイン。元の世界では……まぁ、魔術を使う兵士ってところだ。」

 

「ロレイアさま……ロレイアさま……よし!覚えました!」

「ロレイアさまも、魔術を使えるんですね!あとで色々元の世界の事も教えてくれませんか?」

 

「あ!!!名乗るのを忘れてました!!私、()()()()()()()()()()と申します!!!若輩者ではございますが、旅のお供として、頑張ります!よろしくお願いします!」

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