第12話:叔父
ギルド本部に向かう道中、フィリスはなんだかそわそわしていた。
「叔父さまと言えど、しっかり会うのは10年ぶりですし、覚えてるかどうかすらもわからないので、結構緊張します……。」
まぁ、どうにでもなるさ。と言うありきたりな言葉を吐きつつ落ちつかせていると、ギルド本部、研究棟の入り口まで来た。
受付に冒険者カードを見せる。
冒険者カードは、個人の識別にも使われるようで、その点は帝国よりも進んでいると感じる。
「アルベルト・エリデアム様は502号室にいらっしゃいます。」
受付はすんなりと、アルベルトの居場所を教えてくれた。
セキュリティ面は大丈夫なのかと聞くと、信用レベルが最上位ということで、大丈夫らしい。
恐らく、ギルドマスターかダルクあたりが色々やってくれたのだろう。
軽くあたりを見渡しつつ、アルベルトがいる場所に向かう。
少し学校にも似た雰囲気のこの建物は、魔術的な教育施設としての役割もあるようだ。
そんな風に観察していると、扉の前に辿り着いた。
フィリスが扉を叩く。
中からガサゴソと物音がする。
少し間をおいて、扉が開いた。
フィリスが少し驚く。
アルベルトは昨日と似たような服装をしていたが、昨日にもましてダルそうな感じだった。
男はぼそぼそと口を開いた。
「荷物は受け付けに渡しておいてくr……」
フィリスと男の間に数秒の沈黙が流れる。
「あのっ……」
フィリスが口を開いたと同時に。
「フィリスか…………?」
アルベルトも口を開く。
フィリスは更に驚いた様子で一応頷く。
「フィリス!!やっぱりフィリスか!!!道理で何処かで見たような気がしたんだ!!!」
「久しぶりだなぁ!!!大きくなったな!最後に会ったのは10年前か!?」
フィリスは気まずそうに言う。
「あ……昨日……ですね……。」
再び沈黙が流れる。
「ま……まさか……昨日久しぶりに飲んで酔っ払った勢いで話しかけたのが……フィリスだったのか……!?」
「ロレイアちゃんメインで話しかけてましたけど、私もしっかりいましたよ……」
ここまで呆れているフィリスは見たことが無い。
アルベルトはフィリスの後ろで壁に寄りかかっていたこちらに目を向ける。
「そちらのお嬢さんは……?」
一応正直に話すか。
「私は、ロレイア・バーベンシュタイン。異世界から来た魔術師……的なので、まぁ、そちらの出身の村で言う勇者だ。」
アルベルトは一瞬きょとんとしたのち、驚きの顔を浮かべる。
「ええっ!?あの伝説の勇者!?じ……実在したのか!?確かに……左手に見たことのない魔法陣のかかれた…………これあの本に書いてあった物と一緒じゃないか!?」
フィリスと似たような反応をしているな。と思っていると、アルベルトは興奮した様子に変わっていった。
「まさかあの伝説が本当だったとは!フィリスが見つけたのか?それは割と運命的だな!」
「さらには異世界から来ただって!?その世界でも魔術はあったのか!?どんな風な!?色々聞かせてくれ!!!」
ひとまず部屋に入れてもらい、一息つく。
ここは住居と研究室が合体しているかのような部屋のようだ。
そして、アルベルトの興奮は止まるところを知らず、色々と聞いてきた。
元の世界での魔術の立ち位置や、魔術の使い方。
私が喋る言葉を一言一句逃さないように聞いている。
フィリスは少し退屈そうに、部屋のお菓子をパクパク食べている。
「という感じで、私のいた世界では、500年前に魔力が発見されて以来、科学的な学問と、魔術的な学問が融合し始めたんだ。」
「ちょっと待った。500年前だって……?」
アルベルトは真剣な面持ちで考え込んでいる。
少し間をおいて、またこちらを向いた。
「いや、考えすぎかもしれない。大丈夫だ。話を続けてくれ。」
何か気になる……。とは一応初対面だ。言えない。
その後も話を続けるが、アルベルトの面持ちはどんどん真剣になってゆく。
一通り話を終えると、アルベルトは言った。
「ありがとう。これは、僕の研究、いや、この世界自体を紐解くための重要な材料になるかもしれない。本当にありがとう。」
「フィリスは……いまだにおこちゃまだが、どうか面倒を見てやってくれ。」
誰がおこちゃまだ!と、叫ぶ声もした気がしたが、しっかりと了承する。
「僕は少し調べたいことがあるから、今から大図書館に向かうから、今日は解散としよう。」
アルベルトは出口まで見送ってくれるようだ。
「今日はいい話を色々聞かせてもらった。暇な時でも用があるときでもいつでも頼りにくれ。」
そうアルベルトは言い。私たちは研究棟を後にした。
研究棟から遠ざかってゆく中、フィリスが口を開いた。
「いやー久しぶりに叔父さまに会いましたけど、話してみると、意外と印象は変わってなかったです。元気そうでよかった。」
「これからどうします?まだ昼過ぎですけど。ギルドで試しにクエストでも受けてみます?」
確かに、この世界に来てから、冒険者になったはいいものの、クエストを受けていないことに気づく。
「妙案だな。いくか。」
そうして、私達は、ギルド本部の冒険者ギルドへと向かった。




