第10話:怪しい男
「やぁ、ここは初めてかな?」
無精ひげを生やした30代ぐらいの怪しい男が話しかけてくる。
「あなたは誰だ?」
警戒してそう問うと、男は慌てた様子で答えた。
「ああっ!全く怪しい者でもないんだがね!ここらでギルドに勤めてるしがない魔術師さ……。」
「ただ単に、ここらで見ない顔だな。って思って声をかけた次第さ。」
「それって、ナンパってやつですか?」
フィリスは純粋に聞く。
「そういうわけじゃなくて……、ここは僕の行きつけの店でもあるから、おススメの品でも教えてあげようとしただけで……。」
「うーん……。でも、あんまりこういうことはしないんだけど、あんまりにも悩んでいるもんだから、ちょっとね。」
フィリスと小声で話す。
(あれ、絶対ナンパですよ……。)
(まぁ、ナンパじゃないにしろ、怪しいのには変わらないし、断るか。)
男の方に向き直る。
「その好意には感謝するが、ここは断る。すまないが、この街に来たばかりで警戒してるんでな。」
「なるほど……まぁ、それもそうか。なに、無理強いはしない。」
「話を聞いてくれただけでもありがとう。」
男は頭を下げる。
「それなら帰ることにするよ。」
男はこちらに背を向け、出口へ歩く。
男は背を向けながら言い放つ。
「ああ。一応名乗っておくとするか。」
「僕の名前はアルベルト・エリデアム。ギルドで魔術の研究をしてるから、暇だったら8号研究棟寄ってみてくれ。じゃあ!」
私達、というかフィリスは特に唖然と男を見送った。
まさか、あの男がフィリスの言っていた叔父だったとは……。
奇妙な出会いに驚きつつ、フィリスの方を見る。
「ええ!?あれが私の叔父ですか!?!?私が覚えてるのだと、もっとこう。好青年的な感じだったのに!」
「面影はあったのか?」
「どこかで見たことあるような?ないような?ってレベルだったんで、申し訳ないです。まぁ、どこで働いているか知れただけでも良かったですけど……。」
「明日行く場所は決まったな。挨拶もしといたほうが良いだろうし、私としても知り合いはなるべく増やしたい。」
そう話ながらも、メニューを見るが、どれも美味しそうでまだ悩む。
さっきは断ってしまったが、おススメの品だけでも聞いとけばよかったと思いつつも、"定番!"と書かれたメニューを頼むことにした。
「私達にはギルドマスターっていうこのギルド領内で最強の知り合いがいるんですけどね……」
この世界に来てから、ギルドマスターに会うまでそれほど人と会わなかったせいか、ギルドマスターの凄みがいまいちわからない。
「そういえば、フィリスから見て、あのギルドマスターは魔術を使えそうに見えたか?」
密かにあのギルドマスターとの会話の途中、イージスを使い魔術の跡を探ったが、私にはわからなかった。
「うーんどうでしょう。見かけ上はあんまり使えるようには見えませんでしたけど、特異魔術を持つぐらいの高位の魔術師となると、見かけ上でも騙せるんですよね。」
「でも、魔術師も大量に有するギルドのマスターなんですから、多分使えるんじゃないですかね?」
「なるほど。あと、そのスキルってのは、難しいものなのか?」
「そういえば説明してませんでしたね!特異魔術って言うのは、ある魔術を極めた末に辿り着く、その人だけの魔術って感じですね!」
「例えば、水にかかわる魔術を極めると、自身の魔力から水を生成して、それを自由自在に操れたり。と言ったことができるんですけど……。」
「これは、多分実際に見ないと凄さが伝わらないと思います!私も偶然村に1人いたので、凄いなーって思えますけど、見なかったらいまいちわかってませんもん。」
「なるほど。まぁ、このギルドの依頼をこなしてるうちに見れるだろ。」
「そもそも魔術師が多いんで、特異魔術持ちも多いんですよね……。だから、結構すぐ見れると思いますよ。」
話していると、やっと注文したものが届いた。
フィリスと私は談笑しながら、その料理を食べ終えた。
「いやー美味しかったですね!やっぱりロレイアちゃんと出会って、これまでの何十倍も幸せです!」
「いやー。これまでがひどすぎただけではあるんですけどね。」
「そうだ。部屋に戻ったら、私のいた村について、色々聞かせてあげますよ!ロレイアちゃんだけにこれまでのことを話させるのも申し訳ないですしね!」
そう言って、もう夜になった街を少し回りながら、ホテルへの帰路についた。




