モノローグ:シロヤマ神社
「ただいま」
ナナミが部屋を出てしばらくすると、ムツキが依頼人探しから戻ってきた。
「おつかれ。どうだった?」
「後で一人、来ると思うよ。」
「そうか。」
ムツキの言葉を聞いて、思わず口元が緩む。
「ナナミさんは帰ったの?」
「試したいことがあって帰ってもらった。」
ふーんと、特に追求することもなくムツキはソファに座り、タブレットでゲームを始めた。
先ほどの依頼では、ナナミの“幸運”がどこまで作用したのか判断出来なかった。いくら彼女の“幸運”が並外れていても、本人以外が恩恵に預かることは簡単ではないのか。
この後にくる依頼で、一つ確かめたいことがある。彼女の肩に触れたことで“幸運”の作用は強まるのか、それとも全く意味は無いのか。それは彼女が不在の状態でこそ、正確に検証できるだろう。
しかしカオルが姉に連れられてここへ来たというのは、なかなかの朗報だった。
ここ数年、休日は賑わいが少しずつ戻ってきているとは思っていた。シロヤマ神社の存在が依頼人だけでなく、その周りの人間にも広まってきているのは良い傾向だ。授与品を求める者も増えてきているとも聞いた。
この事業を始めて七十年ほどだが、思っていたより早く結果が出てきている。これは嬉しい誤算だった。
———そういえば、本殿に呼ばれていたのだった。
「ムツキ、父上がお呼びだ。行くぞ。」
第三部 完




