停電のその後
「すぐに決められるようなことじゃないよ。ゆっくり考えてもらったら?」
今まで静観していたムツキが兄を窘めた。ミツムネは「それもそうか」とソファに腰を下ろし、脚を組んだ。
「決まれば、宮司のミズノに声を掛けてください。それまでは参拝をお忘れなく。」
「分かりました……。」
「何で受けなかったんですか?」
境内を後にして、坂を下りながらリリカがナナミに聞いた。
「え?だって、……どんなことに巻き込まれるか分からないし……。」
「でも、週一でミツムネ様に会えるんですよ!?」
(そこなの?)
「はぁ〜〜〜、めっちゃイケメンだった〜〜。」
鼻歌混じりに坂を下っていくリリカを見ながら、ナナミはがっくりと肩を落とした。
リリカと別れ、マンションまで戻ってきた。エントランスの掲示板に、何やら貼り紙がしてある。近づいて読んでみると、今朝の停電について書かれていた。
(えー……、朝十時五十分に起きた停電はマンション裏の工事現場で、重機が電線を切ったため……。ん?)
ナナミは何度か目を瞬いて張り紙をよく読んだ。
(すぐに電力会社が復旧作業に取り掛かり、……十二時には復旧しました……。)
ナナミがシロヤマ神社へ向かったのがちょうど十二時。大荷物を抱えて、汗だくで坂を登った苦労は一体は何だったのか。もし神社に行かなかったら、ミツムネからの怪しい誘いも無かったのだろう。
(え?何だったの?)
ナナミはショックでしばらくその場から動くことが出来なかった。




