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寝取られて壊れた俺、義妹が可愛すぎるから養うことにした ♦︎♦︎♦︎義妹に癒されながらブラック不動産で働くことになった  作者: 白井 緒望


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第73話 寂寥

 鍋に火をつける。

 即席だしを入れて、沸騰する前に火を止めた。


 味噌を入れて……。

 おたまで飲んでみる。


 「あちっ。つか、うまくねーな。桜藍と同じやり方なのに味が全然ちがう。なんでだろ」


 『春馬さん。ふぅふぅして飲ませてあげましょうか』

 桜藍の声。


 振り返っても桜藍はいない。

 もう桜藍はいないんだ。



 成田空港から帰って、玄関ドアを開けると、桜藍の荷物がなくなっていた。


 桜藍の部屋にも、殆ど残ってない。


 全部をイギリスに持って行けるとは思わない。

 残りは多分、処分したのだ。


 まだ桜藍の匂いはするけど。

 やがて、なくなるのだろう。



 俺はカレンダーを見た。


 9月25日。


 桜藍が居なくなって数日なのに。

 こんなに寂しいとは思わなかった。


 会社から帰ってきて、弁当を食べて。

 ベッドで寝るだけの生活。


 ふと棚を見ると、コンドームがあった。


 (桜藍、置いて行ったんだ)

 その意図を想像すると、胸が苦しくなる。


 こんなに辛いなら、あのとき流されたら良かった。そうしたら、きっと桜藍は。



 今でもこの家にいた。

 むしろ、桜藍もそれを望んでいた。


 「はぁ」


 桜藍を送り出したのは間違いじゃない。

 でも、間違えれば良かった。油断すると、そう考えてしまう。



 「桜藍に会いたい」

 俺はまたうずくまった。



 次の日の昼休み。


 「山路さん。ヒゲくらい剃ったらどうすっか?」

 三条君がそう言った。


 「うるせー。これでも剃ったんだよ」


 「まじっすか? 山路さん落ち込みすぎっすよ。どうせ、何年かしたら戻ってくるんでしょ?」


 うちは空っぽなんだ。

 きっと戻ってこない。


 でも、三条君には言えなかった。


 「山路さん。合コンいくっすか? それかマッチングアプリとか? どうせ何年かあるんです。他の子とちょっとくらい遊んだって、桜藍ちゃん許してくれますよ」


 「いかねーよ」


 ほんとは桜藍に『恋人作って良い』って言われてるんだよ。


 

 その日の夜。

 俺は桜藍のSNSを見ようとした。


 でも、スマホを開いて、アプリをタップしようとすると手が止まった。何度か繰り返して、やっぱりやめた。


 楽しそうな顔をしていたら?

 想像するだけで、怖い。


 「じゃあ、せめて」


 フォーチュン財団について調べることにした。


 数代前の当主が貿易関係の仕事をしたのが始まりらしい。英語表記が多くてところどころしか分からなかったが、『The Earl of Fortune』の文字。

 

 「フォーチュン伯爵家って、……貴族? お金があって血筋が良くて、慈善事業してて、本業でも儲けてて。文句のつけようがないじゃん」


 安心したくて調べたのに、嫉妬と落胆しか残らなかった。


 「俺も頑張らないと」


 机に座って司法試験の参考書を開く。


 相手はあんな立派な家だ。俺なんかが頑張ってもどうにもならない。でも、今はこれしかできることがない。


 「はぁ」

 2、3ページめくって、また閉じた。

 

 買って随分経つのに、まだバーコードの付いたしおりが挟まっている。



 ♦︎



 それから1ヶ月が過ぎた。


 頑張らないといけないのに。

 全然、足りていない。


 

 そんなある日、再販部に新人が入った。


 新人は俺の横にきて言った。


 「本日からお世話になる『葛城このは』です。先輩に同行してOJTしてもらうことになりました。宜しくお願いします」


 スカートスーツに、踵の高いサンダル。

 肩までのボブ。髪の毛はグレーがかっている。


 どことなく、桜藍に似ている。



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