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寝取られて壊れた俺、義妹が可愛すぎるから養うことにした ♦︎♦︎♦︎義妹に癒されながらブラック不動産で働くことになった  作者: 白井 緒望


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第67話 月光


 「話って?」


 桜藍がもそもぞ布団の奥に入って、毛布の端で顔を隠した。


 「うん。本当はもっと早く話すべきだったんだけど、春馬さんには、なかなか言えなくて」


 その言葉に、なぜか、柚子の顔を思い出した。

 別れ際、柚子もこんな声をしていた。


 「……うん」



 「先月、わたしの叔父が訪ねてきたの」



 「えっ、だって桜藍は」

 

 叔父?

 桜藍に本当の家族が?


 「うん。わたしは保護された時、何も覚えてなくて。だから、いきなり叔父だと言われても信じられなかったんだ。でも、その人、真剣で。目と髪の色がわたしそっくりで」


 「そっか」


 桜藍と初めて会った時。

 俺、桜藍になんて言ったっけ。


 ——『君、親戚とかいないの?』


 肩が震える。怖い。

 この先を聞きたくない。



 「その人がいうには、わたしの本名『サラン•フォーチュン』。父親はイギリス人で、旅行中に天災に巻き込まれたと」


 「フォーチュン……。名前は今と同じなんだね。そっか叔父さんか」

 

 俺は、何も見えない天井に手を翳した。


 「それでね」


 「うん」


 「その叔父さんが、『イギリスに戻ってこないか』って」

 

 「それってどういうこと?」


 「わたしの本当の……父は母と大学で出会ったらしくて、同じ大学にわたしを通わせるのが夢。そう生前に言っていた、と」


 「うん」


 「学費も生活費も全部出してくれるらしいです」


 ——俺は、初めて会った時、桜藍に『出て行って』って言った。


 「ははっ」

 暗闇にかざした腕を、何度か握った。


 「春馬さん?」


 「きっと、有名な大学だよね」


 「大学名は……です」


 桜藍の口から出たのは、俺でも知っているような名門大学の名前だった。


 「そっ……か」

 

 桜藍がどうしたらいいか、なんて。

 決まりきっている。


 「そしたら、わたしのために通帳のお金使わなくてもいいかなって」


 ダメだ。

 桜藍の言葉が頭に入ってこない。


 「……すげーじゃん」


 だから、これはきっと相談じゃない。



 報告だ。



 俺は、桜藍に背中を向けた。

 毛布を掴んでたぐよせる。


 何か言わないといけないのに。

 何も言葉が出ない。


 「それでね、大学を本気で考えるなら、『高校からイギリスに来ないか』って」


 俺は毛布の端をギュッと握った。


 「叔父さんは、どんな人なの? お金とか大丈夫なの?」


 大丈夫だから迎えにきた。

 そんなこと、分かりきっている。


 でも、俺は。

 その叔父さんが『貧しければいい』、って思っている。


 「イギリスで事業を営んでいるらしくて。先々は、わたしもそれに関わって欲しいって」


 ああ、そうだよな。


 俺は、なぜか、かぐや姫を思い出した。

 かぐや姫って、最後はどうなるんだっけ。


 「桜藍、かぐや姫ってさ」


 「え? 急にどうしたの?」


 「かぐや姫って、最後どうなるんだっけ?」


 カーテンが揺れて。

 月の光が桜藍の顔を照らした。


 「えっと、確か。月に帰って幸せに暮らすんじゃなかったかな」


 そうだ。

 でも、少し違う。


 かぐや姫は、月に帰る時に、地球のことを全部忘れるんだよ。

 

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