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寝取られて壊れた俺、義妹が可愛すぎるから養うことにした ♦︎♦︎♦︎義妹に癒されながらブラック不動産で働くことになった  作者: 白井 緒望


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第61話 失恋

 ワンニャンルーム

 現地販売会。もとい、三条君リハーサル会場。



 「好きです! 付き合ってください!……どうっすか?」

 三条君がビラを持った片手を差し出して、頭を下げた。 



 ころん。

 どこからか飛んできた蝉が、アスファルトに転がる。



 「んーっ。もうちょっと……かな?」

 桜藍は紙を受け取って、困った顔をした。


 「思った以上に不器用だね。三条君」

 俺は両手をあげた。

 

 「だって、さっき山路さんが『心がこもってない』って言ったからじゃないですか」

 三条君は不満そうに言った。


 「だからって今のはないでしょ。逆にわざとらしいよ」


 すると、桜藍が声を上げた。

 「春馬さん。紙に『好きです』と書いてあります。本気が伝わってきますよ?」

 

 困ったな。高評価だ。

 桜藍は、甘すぎてこういうのには向いてない。

  

 もっといいアドバイザーはいないかな。


 すると、桜藍はスマホをいじりだした。

 「こうしていても分からないし、亜梨沙さんに聞いてみましょう!」


 あっ、桜藍と亜梨沙ってLINEを交換してるんだっけ。止める間もなく送っていた。


 「あれぇ、いつもすぐに返事がくるのになぁ」

 桜藍が首を傾げる。


 むしろ、『いつも』亜梨沙と何を話してるかの方が気になるのだが。



 カコンッ。

 三条君とテーブルに座って、缶コーヒーを飲む。


 桜藍は少し離れた場所で、野良猫の写真をとっている。俺は桜藍の方を眺めながら、缶コーヒーをブラブラさせた。


 「それにしても、三条君が連絡してきたときには驚いたよ。いきなり『告白してフラれました』だもんな」


 三条君は不満そうな顔をした。


 「いや、山路さんも『いけると思う』って言ったじゃないですか」


 三条君はコーヒーを飲み干した。

 空き缶をテーブルにおいた時の三条君の指。


 人差し指の薄皮がめくれていた。


 「そりゃあ、嫌われてはいないだろうし。でも、あれはないでしょ」


 「善は急げっていうじゃないっすか?」


 「で、実際には?」


 「空気感の演出でセックスしようとしたら、拒否されたっす。で、ヤバいって思って、あせって告白したら亜梨沙に『バカじゃないの』って言われました」


 「ほんと、バカだよ」


 「山路さん、知らないっすか? セックス中はドーパミンっていう快感物質が出るっす。つまり、それを利用するのは合理的っす」


 「バカな上に小狡こずるい。まぁ、ああいう子は意外と直球に弱そうだよな」


 「なら、さっきのラブレター手渡し作戦で」


 「あくまで『初回』ならな。だって山路くん、もう2度もフラれてるんでしょ?」


 「はい。帰れって言われたから、また告白したら『シネ』って言われました」


 「俺も亜梨沙と同意見」


 「ひどいっす。俺の味方は桜藍ちゃんだけっす」



 すると、桜藍が戻ってきた。

 「春馬さん、ニャンコ、すごく可愛いです。写真をとろうとすると前足を揃えてくれるんです」


 『猫は四六時中、前足を揃えている』と言おうとしたが、俺は言葉を飲み込んだ。


 「あっ、亜梨沙さんから返信来ましたよ」


 俺と三条君は顔を見合わせた。


 「んで、なんて?」


 ごくり。

 三条君の喉が動いた。


 桜藍はスマホを見せてくれた。


 「『あいつバカだから無理』ってLINEきました」



 

 ♦︎



 「山路さん、道路から湯気があがってるっす」


 アスファルトに焼かれた景色がゆらり。

 俺と三条君は、アルミのテーブルに顔をくっつけて、それを眺めていた。

 

 「あれはまさしく蜃気楼。都会のロマン」


 「さっきお天気アプリに赤い字で『40℃』って出ましたけど。それも蜃気楼っすか? つか、桜藍ちゃん、大丈夫っすかね?」


 「まぁ、ここにいて熱中症になられるよりは」


 桜藍には亜梨沙の部屋に行ってもらった。


 「はぁ、俺、まじでダメなんすかね」

 三条君は頭をこっちに向けた。


 「あっ……」


 「なんすか?」


 「なんでもない」


 後頭部に白い粒がいくつか。

 三条君は、円形脱毛症になっていた。



 ジー、ジー。

 蝉の声。



 浮き輪をもった子供達が、わぁわぁ騒ぎながら通り過ぎた。



 「あれっ、この前の不動産屋さん」

 聞いたことあるような、ないような声。


 俺は顔をあげた。

 すると、この前、内見してくれた女性客だった。今日は子供は連れていない。


 「あれっ、この前の。お仕事中ですか?」


 「ううん。今日は夜勤明けだから。実家に娘を迎えにきたの」


 三条君が耳打ちしてきた。

 「山路さんっ。この知的な美人さんは誰っすか?」


 女性は会釈した。

 「わたし、相模千晴っていいます。勤務医してます」


 この前よりも、さらに気さくな雰囲気だ。


 それにしても医師?

 きっと全額ローンでもいける。完璧属性じゃん。


 「あっ、俺は三条天音っていいます。ここの山路さんとワンニャンルームが売れなくて困ってる者っす。……絶賛、失恋中っす」


 「へぇ。お話、聞かせてよ」

 千晴さんは、今は時間があるらしい。そう言うと、椅子に座った。


 大人の女性だ。

 もしかすると、相談相手にはうってつけかも知れない。


 俺は事情を説明することにした。


 千晴さんは何度も頷きなら、ちゃかさずに聞いてくれた。


 「なるほど。セフレって……子持ち30代には分からない感覚だわ」


 千晴さんは三条君をチラッと見て、話を続けた。


 「まぁ、イケメンだもんね。実はね、山路さんのアドバイスのおかげで、前の家の借り手が見つかったの」


 「えっ、じゃあ」

 ここに来て、ワンニャンルーム完売か?


 

 「でも、なにせ大きな買い物でしょ? 少し迷ってるの。まぁ、考えて正解が出る類のことではないのかも知れないけれど。ねぇ、三条君、君、その子のこと本気なの?」


 「マジっす」


 千晴さんの視線が、三条君の後頭部で止まる。

 「……真剣なんだね」


 パンッ。

 千晴さんは手を叩いた。


 「よし、決めたっ。私も三条君の頑張りにかけるよ。3度目の告白がうまくいったら買うことにしようかな。私、こういうのは縁起を担ぐようにしてるの」

 千晴さんは、そう言って微笑んだ。


 「……は!?」


 俺と三条君は顔を見合わせた。

 前向きなのは嬉しいが、脈略がなさすぎる。


 それに縁起もなにも、すでに2回フラれてるんですが。


 既に縁起が悪いです。

 

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