表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
寝取られて壊れた俺に、あの子がいびつにハマってくる♦︎♦︎♦︎義妹を養うために、ブラック業界(不動産)で頑張ります!  作者: 白井 緒望


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/51

第6話 面接


 目の前には杉山。


 その横には女性が座っていて、PCに何かを入力している。眼鏡をかけていて背筋がピンとした優秀そうな女性。


 秘書だろうか。

 映画の一場面みたいだ。


 設立数年で年商数百億を達成するような会社だ。きっと、優秀な人たちだらけなのだろう。


 「そちらに座ってください」

 杉山の声に、俺は従った。


 俺は大学2年の時、杉山と同じゼミだった。杉山は真面目だが要領が悪くて、——俺は内心で、そんな杉山を見下していた。


 杉山は華奢だ。身長も大きくない。

 でも今の俺には、杉山が大きく見える。


 ごくり。

 心拍数が上がっていく。



 バンッ。

 杉山が机を叩いた。


 俺は身体がビクッとした。

 前の会社の上司も、よく机を叩いた。


 「ねぇ。山路君。自己紹介は? 君は何をしにここにきてるんですか?」


 抑揚がない口調。

 杉山が何かを話すたびに、息苦しくなる。


 「ええと、山路春馬と言います。前の会社はヘルスケア関係でして」


 「関係? 曖昧だなぁ。そもそも、まだ入って数年の会社ですよね? なんでやめたんですか?」


 「いや、その。それはブラック企業でして」


 「あぁ、君はそうやって周りのせいにするタイプですか。社長から聞いてると思うけれど、うちの会社も相当にキツいよ? 大丈夫なんですか?」


 「そ、それはもう。粉骨砕身ってやつでして」


 「ありきたりだねぇ。もう少し期待していたのだけれど」

 杉山の眉が歪む。


 「すいません」


 「あのね。君は謝りにきたの? 言いたいことは、ハッキリ言わないと伝わらないよ?」



 ♦︎


 ——『なぁ、杉山。好きな子がいるなら、ハッキリ伝えないと、何も伝わらないぜ?』

 

 これは、大学時代に俺が杉山に言った言葉だ。


 当時、杉山は同じゼミに好きな子がいた。でも、オドオドして、その子とまともに話すらできていなかった。そんな彼に、俺は今の言葉を投げかけたのだ。


 その頃の俺は、柚子と付き合いはじめたばかりで、浮かれていた。


 今の俺には分かる。


 あの時の俺の言葉は、親切心でもアドバイスでもない。……ただの意地の悪いマウント。



 「はぁ」


 杉山がため息をついた。

 俺を見透かすような視線。


 「ねぇ、山路君。聞いてる? 黙っていたら何もはじまらないよ?」


 「……」


 「あー、もういいです。次の予定もあるので。結果は追って伝えますので。お引き取りください。本日はありがとうございました」

 

 苛々している。

 今日、初めての杉山の感情。



 これは、落ちたわ。


 「ありがとうございました」

 そう言いながら、どこか他人事だった。


 すると、杉山が言った。

 「あー、あと一つだけ。君、他の会社も受けるんでしょ? だったら、シャツのアイロンくらいちゃんとかけた方がいいよ? 不慣れなアイロンだと、もたないんだよね」


 その言葉で、俺は脳に血液がなだれ込んでくるのを感じた。


 俺はまた逃げ出そうとしていた。

 1人ならそれでもいい。


 でも、いまは違う。

 桜藍が、妹がいる。


 「すいません。あと少しだけ」


 「なに?」


 杉山の目を見た。


 「俺、家族を養わないといけないんです。妹には俺しかいないんです。だから、俺は根性なくてダサいけど。会社の理念に共感したとかカッコいいこと言えないけれど」


 俺は深く頭を下げた。

 すぐ目の前に、机の木目が見える。


 「絶対に最後まで逃げ出しませんので。だから、俺をここで働かせてください」


 すると、隣の女性が口を開いた。

 「どんな部署でも不満は言いませんか?」


 「金がもらえて、合法な仕事なら」


 杉山はメガネを胸ポケットに入れた。

 「……分かりました。今日のところはお帰りください。結果は後日連絡しますので」



 ヒュオ。

 ビルから出ると、風が吹き抜けた。


 

 スマホを見ると、桜藍からメッセージが入っていた。

 「春馬さんなら大丈夫です!」


 ごめん、大丈夫じゃなさそう。

 そういえば、弁当。


 俺は、近くの公園のベンチに座った。

 ピンクの巾着をあけて、弁当箱を取り出す。


 蓋を開けると、ピンクのハートが描いてあった。


 「ったく。兄貴にハートなんて使っちゃダメだろ。玉子焼き、なんか形が崩れてるし」


 でも、見た目は悪いけれど。

 桜藍の弁当は、すごくうまかった。


 コポコポ。

 水筒には熱いお茶。


 ベンチに水筒を置いた。


 「……ダメだろうな」


 俺は、蓋に残ったお茶を飲み干した。


 「帰ったら、面接のことを桜藍にちゃんと話そう」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ