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寝取られて壊れた俺、義妹が可愛すぎるから養うことにした ♦︎♦︎♦︎ブラック不動産で働くことになったけど頑張りたい  作者: 白井 緒望


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第58話 嫉妬

 オフィスに戻ると、三条君は居なかった。デスクの上には鞄が放り投げられていて、横のゴミ箱は変形していた。


 三条君を探してウロウロしていると、高橋さんに話しかけられた。

 「三条君、荒れてたけれど何かあったの?」


 「ちょっと色々あって」


 亜梨沙、泣いてた。

 このままになんてできない。


 「ふぅん。喫煙所の方に行ったわよ。今頃、飛び降りてたりして。って、怖い顔しないでよ」


 身体中の血が沸騰しそうになる。

 死にたいのは亜梨沙の方だろ……!


 俺は深呼吸した。




 ガチャ。

 重いスチールドアを開けて、外階段に出た。


 バタバタと襟がなびく。

 紺色の空とビーズみたいなビルの光。



 三条君は、鉄格子の踊り場に座っていた。

 彼の広い背中は大きいままだったけれど、少しだけ猫背だ。


 俺は、彼の数段手前に座った。


 「やっぱ、さっきのことだよな?」


 「……」


 ぶわっと、生ぬるい風が吹き上がってきた。

 三条君の襟が、小刻みに揺れる。


 「俺って、なんなんすかね。なんでいつもこうなのかなぁ」

 三条君はくすんだ金髪を鷲掴みにした。


 「……こうって?」

 直後、俺は聞いたことを後悔した。



 三条君の唇が歪んだ。

 顎の筋肉が皮膚の下で何度か動く。



 汗と香水がまざった匂い。

 亜梨沙と同じ香水。


 「なぁ、三条君。俺、新垣さんとはなんでもないから。その、……ヤッてないし」

  

 俺、自分で追いかけてきたのに、なんで言い訳してるんだろう。


 「今まさに、これからな所だったじゃないですか」


 やっぱり覗かれてた。


 「それは誤解というか」


 ガンッ、ガンッ、ガンッ。

 三条君は、その場で地面を何度も踏みつけた。


 その音のたびに、心の奥がゾワッとした。

 

 「ヤッたかどうかなんてどうでもいいっす。それよりも、あの時の亜梨沙の顔。山路さんのこと真っ直ぐ見てた」


 声が掠れている。


 「そんなことないでしょ」


 「もういいっす。へんだと思ったっすよ。最近、いきなり部屋を片付けてはじめたり、なんか勉強はじめたりとか」


 勉強? そういえば、2、3冊、まんが三国志みたいなのあったけれど。



 俺は三条君の正面に回り込む。

 そして、肩を叩いた。


 「三条君。ちゃんと亜梨沙と話してみたら?」

 

 「そんなことしても、意味ないっすよ」

 

 三条君が少しだけ顔を上げる。

 隙間から俺を覗く瞳は、少し灰色がかっていた。


 俺はこの目を知っている。



 プープー。

 下の道路で、誰かがクラクションを鳴らしている。


 俺は頭をかいた。


 「……とりあえず、飯でも食いにいくか?」


 

 「桜藍ちゃんに会わせてよ。山路さんだけ亜梨沙と会ってるのに、不公平っす」


 「三条君。桜藍にちょっかい出したら……」

 

 三条君が顔を上げた。

 白目が充血している。


 「そんな元気ないっすよ」


 柚子に振られて、俺。

 どうしたんだっけ。


 ヒュオ。

 首元を風が抜けて、首にあたる刃物の感触が蘇った。


 あぁ、そうか。

 あの時、俺は——死のうとしたんだ。


 だから、俺は答えた。

 「……分かった」

 


 

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