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寝取られて壊れた俺、義妹が可愛すぎるから養うことにした ♦︎♦︎♦︎義妹に癒されながらブラック不動産で働くことになった  作者: 白井 緒望


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第49話 後悔

 「分かったよ。でも、妹が待ってるから、また今度な」


 「うん」

 寂しそうな亜梨沙を見ていると、自分の中が空っぽになった気がしまた。


 「これ、家で食べなよ」

 コンビニの前で、俺は大福と肉マンを渡した。


 「なにこれ、丸いのばっかりだしー!」

 両手で持って、亜梨沙はほっぺにくっつけた。


 なんだか、自分の行動が照れくさい。

 「ふふっ。惚れるなよ?」


 「分かった。好きにならないように頑張る」 

 少しだけいつもより早口な亜梨沙の声。


 笑顔で見送ってくれる亜梨沙を振り返りながら、俺はさっきの言葉を後悔した。




 帰り道。


 遅くなったときは、いつもコンビニで桜藍にお土産を買う。でも、今日は買わなかった。


 家の前で時計を見た。

 23:00。


 (すっかり遅くなっちゃったな)


 俺は玄関ドアを開けた。

 「ただいま」


 「おかえりなさい」

 パジャマ姿の桜藍が台所から走ってきた。



 テーブルに座って一息つくと、出汁の匂いがしてきた。鍋で何か煮込んでいるらしい


 俺は部屋に戻らずに、面談で気になっていたことを聞くことにした。


 「桜藍。PTSDの病院いってみる?」


 桜藍は少しだけ寂しそうな顔をした。


 「わたし、ゆっくりでいいです。ゆっくり好きをためて、宝物がもっと増えてからがいいです」


 「うん。何度もごめんな」


 桜藍は首を横に振った。

 「違くて。わたし、嬉しいんです。パパとママいなくて寂しいけれど、春馬さんがいてくれる。たくさん心配してくれる。いま、昔のことを思い出しても、たぶん、ただの空っぽだから」


 ただの空っぽ……か。


 「ご飯にしましょう」

 桜藍がそう言うと、お皿を持ってきてくれた。


 だし汁に浸かった餅巾着。

 「おでんじゃん。珍しい」


 「喜んでもらえました?」


 しかも、俺の好きな餅巾着特化型。

 「あぁ。コンビニのより断然に家おでんだよ」


 「色々入れたから、お代わりは、お鍋から選んでください」


 桜藍に鍋の蓋を開けてもらう。

 「ママが、春馬さんは餅巾着が好きって言ってたから。沢山いれました」


 たしかに、やたらと餅巾着が多い。

 「餅巾着、すごい量だね」


 桜藍は、ふふんと胸を張った。

 「もはや、餅巾着の大群の中に他の具が入ってるイメージです。余っても、おでんって次の日の方がおいしいし」


 

 「桜藍。ごめん、伝えてなかった俺が悪い」


 「ど、どうしました?」


 「たしかに、おでんの具は煮込むほどウマイ。だけれど、いくつか例外があってだな。餅巾着もそのひとつなんだ。すまん」


 脳裏によぎるかつての大失敗。


 「ええーっ。煮たらお餅は柔らかくなるんですよ?」


 「だからだよ。極限まで柔らかくなって、ある時、中身の餅が忽然と姿を消す」


 「どこに消えるの?」

 桜藍の喉元が、こくりと動いた。


 俺は両手をあげた。

 「わはははっ。なんと鍋の底に張り付くのだっ」


 「ひいぃ。お鍋から取れなくなるぅ」


 俺と桜藍は、ひたすら餅巾着を食べることになった。


 「でも、もぐ。おでん好きなんだ。ありがと。……もぐ」


 俺が12個。桜藍が6個食べて、ようやく餅巾着がなくなった。


 「結局、他の具を何も食べれませんでしたね」


 「ごめんな。餅巾着の危険さを伝えてなかったから。あっ、あとで渡したいものがあるんだけど、部屋に行っていい?」


 桜藍はあたふたした。

 「あっ、はいっ。でも、優しくしてくださいね」


 ん?

 よく分からない反応だ。


 「待ち合わせ23時55分でいい?」


 「待ち合わせ? すごい細かい時間。分かりました」


 「家の中なのに待ち合わせって変かな?」


 「デートみたいで、わたしは好きですよ?」

 桜藍は微笑んだ。



 大急ぎで風呂から出ると、時間ギリギリだった。


 桜藍の部屋の前に立つ。

 時計を見ると、23時55分ジャストだった。


 クンクン。

 自分の胸元の匂いを嗅ぐ。

 新品パジャマの良い匂いがした。


 「前にバースデープレゼント渡さなかったし、喜んでくれるといいのだけれど」


 同じ家なのに、俺は桜藍の部屋に入ったことが殆どない。



 俺は息を止めた。


 トントン。


 ガチャ。

 ドアが開く。


 さらりとした銀色の髪が目に飛び込んできた。


 「あのっ。こんばんは」


 「ふふっ。いらっしゃい。この服、前に春馬さんに買ってもらったのです」


 桜藍はロングスカートのワンピースに着替えていた。白いニット地に黒いリボン。


 くるりと回ると、リボンが揺れる。


 もう8月だから季節感はない。

 でも、わざわざ着替えてくれたことが嬉しかった。


 桜藍は頬を膨らませた。

 「あーっ。春馬さんこの服のこと、忘れてるんでしょ?」


 「いや、なんとなくは……」


 「もうっ。春馬さん、わたしが試着すると、その服を全部かっちゃうから、そんなことになるんですよ?」


 「ごめん、あの。俺もスーツ着てきた方が良かった?」


 「春馬さんはそのままで。ところで、その袋はなんですか?」


 俺は時計をみた。

 23時59分。あと1分だ。


 「……これ誕生日プレゼント。遅れちゃったけど」

 大袋を渡すと、桜藍は両手で抱えた。


 「開けていい? あっ、部屋に入ってください」


 久しぶりの桜藍の部屋は。

 少しだけ、物が増えてた。


 前にあった写真立てはなくなっていて、モニタータイプのフォトフレームになっていた。


 電源が切れているみたいで、画面が黒い。

 

 桜藍はテーブルの前に両膝をつくと、ラッピングバッグから箱を出した。


 「もし、期待はずれだったらごめんな」

 三条君に相談したら、『これはないわー』と言われた逸品だ。


 桜藍は箱からプレゼントを取り出した。


 「なんか丸くて沢山穴が開いてる。これ、ロボット? よく分からないけど、ありがとうございますっ」


 そもそも、品目を把握できてなさそう。

 変わり種も良し悪しだ。

 


 「いや、どういたしまして。部屋の電気を消していいかな?」


 「はい」

 桜藍は、電気のスイッチに触れた。

 

 「あっ、あれっ」

 うまくできなくて、何度も電気がついたり消えたりする。


 数度目で部屋が暗くなると、俺はプレゼントをテーブルに置いた。


 スイッチを押す。

 すると、ブーンと音がして、天井に満点の星空が映し出された。


 「わぁ。綺麗」

 桜藍は夜空を見上げた。


 「これ、ホームプラネタリウムなんだ。三条君にやめとけって言われたんだけど、俺はどうしてもこれをプレゼントしたくて」


 桜藍が俺の腕に抱きついてきた。


 「すっごいよ、流れ星もある!」

 キラキラした目で星を見ている。

 

 2人でベッドの横に座って見上げる。


 「そういえば、どうして23:55の待ち合わせだったんですか?」

 桜藍は首を傾げた。


 「一緒に日を跨ぎたかった」


 「……ありがとうございます」

 桜藍は俺の服の袖に触れた。


 無音で真っ暗。

 心地いいのに、逃げ出したい。


 「あっ、これ、日本以外の星空にもできるみたいよ」


 桜藍が言った。

 「わたし、フランスの夜空が見てみたいです」


 サイドのボタンを押すと、夜空の雰囲気が変わった。


 毛布を膝にかけて、また空を見上げる。

 ベッドの背もたれが柔らかい。


 「セーヌ川……。いつか一緒に見たいな」

 桜藍はそう言うと、俺の肩にもたれかかってきた。桜藍の頬が、汗ばんだ俺の二の腕にくっつく。


 「そうだな」

 

 「川沿いは夜風が寒いから。抱きしめてください」


 ゆっくりと肩に手を回す。

 桜藍の肌に触れる寸前、指先が震えた。

 何度かやり直して、ようやく肩を抱き寄せた。

 

 そのまま1時間ほど、2人きりでいた。



 そのうち2人の呼吸が重なって。

 口が自然に動いた。


 「桜藍の空っぽをうめたい」

 「Je veux rester avec toi pour toujours.」

 2人の言葉が交差した。


 桜藍の外国語が微かに残る。

 意味は分からないけれど、優しい響き。


 「いまの英語?」


 「フランス語……一度きりだから意味は内緒です。でも、春馬さんの言葉は、もう一度聞きたいよ」


 桜藍は舌先をペロッと出した。

 


 

 


 

 

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