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寝取られて壊れた俺に、あの子がいびつにハマってくる♦︎♦︎♦︎義妹を養うために、ブラック業界(不動産)で頑張ります!  作者: 白井 緒望


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第43話 駆け引き

 「山路くん。どう、イメージできる? この広大なLDKで、ブランデーを傾けるの」


 永瀬課長は、悪臭漂うワンニャンルームで、どこかで見たハードロッカーのように右手を突き上げた。


 いや、まぁ。

 確かに6階で景色はみえるけれど。


 「課長、山と畑しか見えませんけれど」


 「いいねぇ。これ、3,000万はいっちゃうんじゃないー?」


 この人、全然聞いてない。

 このエリアはファミリータイプで二千万円台前半が相場だ。


 無理だろ。




 ピンポーン。

 リフォーム業者が来た。


 この前の男性だ。

 リフォーム会社は、この男性のところに決まったらしい。



 課長はネクタイを直した。


 課長とリフォームのプランを決めている。

 俺はそれを横で聞いて、メモをとる。


 業者の男性が、部屋の四方を指差した。


 「永瀬さん、本当に間仕切り壁は無しでいいんですね?」


 「それでOK。豪華なワンルーム作っちゃいましょう! コストは壁紙15 ドアノブ5 床は上貼りで20くらい?」


 男性はヘルメットのつばを掴んだ。


 「いや、永瀬さん。まさか、この物件、表層リフォームでいくつもりですか? どうみてもフルリフォーム適用ですけれど」


 「普通に表層でいくでしょ。エアコンの穴も一つしかないんですよ?」


 前回の現調の後、径の問題でエアコン2台は厳しいことが分かった。すると、課長はワンルームのままにすると言い出した。


 俺はメモを取りながら言った。


 「課長、郊外なのにワンルームで本当に大丈夫ですか? 前に池田課長が、郊外はファミリータイプしか売れないって言ってましたけど」

 

 すると、永瀬課長は鼻で笑った。


 「池田君? 彼はねー。もっと冒険した方がいいよ。不動産は出会い、つまりタイミングなの」


 課長は、床を指差した。


 「ここさ。染みがあった所だけ床剥がしできる? 糞尿がコンクリまで行ってるからケレンもー」


 業者の男性はカバンから何かのファイルを出した。


 「いや、たしかに。下地の接着剤まで匂いがつくことはありますけれど。一部だけ剥がすとか、うちはやったことないし。そんな施工じゃ、経年でガタガタになりますよ?」


 課長は床に膝をついて、人差し指の第二関節でコンコンとフローリングを叩いた。


 「ここね。LL-45なの。全面張り替えたらたら、いくらかかるのよ。それだけで軽く50よ?」


 今日の課長は強気だ。


 「いや、でも」


 「あー、ならもういい。他に頼むから」


 すると、男性は声を荒げた。

 「は? こっちはもう人工にんくの手配してるんだ。勘弁してくださいよ」


 2人の熱気にあてられたのだろうか。

 ふわっと悪臭。


 ゲホゲホッ。

 俺はマスクをしているのに、むせてしまった。


 課長の声が低くなった。

 「ならやってよ。なんとかするのがおたくの仕事でしょ。それにねー。床を剥がすなら管理組合の許可も必要になる。下の階に住んでる爺さん、偏屈なのよ。あの人がゴネたらどうすんの? おたくがその分、値引きしてくれるの?」

 

 「それはできませんけど……」

 

 挨拶回りで、俺は下の爺さんにもやりこめられた。でも、なんで課長がそのことを知ってるんだ?

 

 課長は続けた。


 「規約上、床の一部施行は取り決め無し。工事は1日でできるっしょ? 爺さんが文句いっても、その頃には既に終わってるから」


 

 俺も業者の男性と同意見だった。

 この部屋は、表層のリフォームじゃどうにもならない気がする。


 俺は玄関ドアを見た。


 「課長、あのドアも引っ掻き傷だらけなんですけれど、あのまま売るんですか?」


 きっと犬猫が引っ掻いたのだろう。

 玄関ドアが傷だらけの家。しかも高い。


 そんな家を誰が買うのだ。


 課長は髪をかきあげた。

 「あー、いいのいいの、あのままで」


 そのまま売るつもりか?

 訳がわからない。



 すると、課長が言った。


 「山路くん。今日の18時から管理費値上げの総会があるから。そこにいってきて」


 「えっ、俺は何をすれば……」


 「管理費上がったら物件売れないっしょ? だから総会で『断固反対』って言ってきて」


 課長はそう言うと、俺に黄色いヘルメットを渡した。ヘルメットの正面には『断固反対』と書いてある。


 ……は?


 これ持って、単身突撃しろと?


 


 

 


 


 

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