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寝取られて壊れた俺に、あの子がいびつにハマってくる♦︎♦︎♦︎義妹を養うために、ブラック業界(不動産)で頑張ります!  作者: 白井 緒望


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第41話 欲望

 「ただいまぁ」

 俺は玄関先に入るなり座った。


 身体がどっと重くなる。

 まるで泥濘にでも浸かっているみたいだ。 



 ふわっ。


 背中に心地よい温もり。

 桜藍がくっついてきた。


 「お疲れさまです」 

 粒の揃った、綺麗な声。



 ゾワッ。

 身体に突き上げるような感覚。


 桜藍の手首を掴んで、そのまま押し倒したい衝動に駆られた。


 でも、この衝動の根底にあるのは愛情ではなくて、ただの欲求、種の生存本能。


 『桜藍がいい』ではなくて『桜藍でいい』。

 そういう欲望。



 すると、桜藍が俺を心配そうに覗き込んできた。


 ——全然ダメだろ。

 優しい桜藍に、すごく失礼だ。



 俺は桜藍の頭をポンポンとした。

 「いつもありがとう。桜藍が居てくれるから、頑張れるんだよ」


 すると、桜藍は跳ねるように立ち上がった。


 「そう言ってもらえると嬉しいです。今日は、春馬さんの好物のトンカツです」


 トンカツが好物だなんて一回も言ったことがないのだけれど。いつのまにか、そういうことになっているらしい。


 むしろ、胸焼けしそう。

 

 お風呂から出ると、味噌汁の匂いがした。

 桜藍が、テーブルにお皿を並べてくれる。


 最近は、会社であったこと桜藍に話すようにしている。少しカッコ悪いことでも、できるだけ話したい。


 2人で食事をしながら、今日あったことを話した。


 すると桜藍は頬を膨らませた。


 「その課長さん、良くないと思います! 面倒なことばっかり、春馬さんに押し付けて」


 桜藍は、いつも俺の味方をしてくれる。


 すごく有難い。

 でも、時々、ふと思うのだ。


 これが夢で。

 本当の俺は、まだあの薄暗いワンルームでうずくまっているのではないか。


 俺は首を横に振った。

 思考が低空飛行している。


 

 なんでだろう。

 すごく嫌なことがある訳ではない。


 池田課長も永瀬課長も。

 タイプは違うけれど、何か聞くと、自分の手を止めて、こちらを見て答えてくれる。


 前の職場は違った。


 質問しても上司は手を止めてくれない。面倒くさそうに言うのだ。


 「それくらい自分で判断しろ」


 そして、分からないまま進めて失敗すると「なんで聞かなかったんだ」。


 だから、どちらの課長もきっと良い上司だ。

 俺の知らないことを沢山知っている。


 あぁ、そうか。

 これは、敗北感だ。



 ムギュ。

 口にトンカツを押し込まれた。


 「春馬さん。暗い顔してますよ」

 桜藍は言うと、自分もトンカツを食べた。


 

 「同じ箸なんだけど」

 俺の言葉の数秒後、桜藍は耳まで真っ赤になった。

 

 「春馬さんっ。なんか今日は暑いですね。あっ、わたしもお話あるんです」


 「なに?」


 「学校で三者面談があるらしくて。パパもママもいないから、あの。その。……春馬さん、来てくれませんか?」


 桜藍の言葉に、低空飛行の思考が、ギュイーンと急上昇する。


 俺を頼ってくれることが、すごく嬉しい。


 だから、俺は即答した。


 「うん。もちろん行くよ」


 


 

 

 

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