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寝取られて壊れた俺に、あの子がいびつにハマってくる♦︎♦︎♦︎義妹を養うために、ブラック業界(不動産)で頑張ります!  作者: 白井 緒望


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第35話 におい

 桜藍の瞳が潤んでいる。


 「あれっ。わたし、春馬さんのことお祝いしないといけないのに。あれっ。ご、ごめんなさい」


 桜藍は走り去ろうとした。

 

 「ちょっと待って!」


 手首を掴む。

 振り向いた桜藍は、泣いていた。


 正直、こんなことで泣いてしまうなんて、夢にも思わなかった。


 「離して!」


 桜藍がいなくなってしまう。

 その声を聞いてそう思った。


 すると、言葉が自然に出ていた。



 「俺、桜藍が卒業するまで彼女作らないから」

 

 なんでこんなことを言ったのか自分でも分からない。自分の倍近い年齢のオッサンにこんなことを言われたって、きっと迷惑なだけだ。


 「ごめん」

 俺がそういうと、桜藍が立ち止まった。


 「ほんと?」

 桜藍の唇から力が抜けた。


 ——もしかして、桜藍、俺のことを?


 桜藍が言葉を続けた。

 「わたしを1人にしない?」


 あぁ、そうか。

 この子は、またひとりぼっちになるのが怖いのだ。


 ——ソチさんのあの目。


 「……1人にしたくない」


 桜藍は俺の袖をつまんだ。


 「うん。許してあげます」


 許す?

 もしかして俺、浮気した前提になってるのか?


 桜藍は口を尖らせた。

 

 「それで、正直に告白してください。なにしてたの?」


 「いや、マジでなにも」


 桜藍は首を横に振った。


 「何もなかったら、こんな匂いしないもん。ま、ま、まさか。エッち?」


 なぜかカタコトだ。


 「いや、本当に何も。居酒屋さんで、店員の子に身体をくっつけられただけだよ」


 すると、桜藍が眉をつりあげた。


 「『だけ?』身体をくっつけるのは、だけじゃありせんっ!」


 「その匂い、イヤです。早くお風呂に入ってきてくださいっ!」

 桜藍はそう言いながら、グイグイと俺の背中を押した。



 ザザーン。

 俺は風呂に深く身体を沈めた。


 「それにしても、桜藍に、あんな謎属性がついてしまうとは。いや、でも、嫉妬されないよりはいいのか? ほどほどのやきもち焼きは、むしろ好みだったり」


 天井のタイルを眺める。

 すると、ぽつりと水滴が落ちてきた。


 「ほんと、競売部での数ヶ月はアッという間だったよな。色々あって濃すぎだよ」


 ザバァ。

 水面で右手を握った。


 「スタートからあんな問題物件抱えちゃって、俺、次の部署でちゃんとやっていけるのかな……」


 「やっていけます」

 折れ戸の向こうからの声。


 「桜藍?」


 今日は追い出せる雰囲気ではない。


 「春馬さんは頑張ってるから。やっていけるんです!」


 「ありがとう。さっきはごめんな」


 「……いつもの匂いに戻りましたか?」


 俺は腕の匂いを嗅いだ。

 石鹸の匂いがする。


 「あぁ、たぶん」


 すると、すりガラスの向こうで、桜藍が少し動いた。

 「今の春馬さん。前よりもカッコいいですよ?」


 「そう?」


 「色々お話してくれるし、わたしもこの時間が好きっていうか……逞しくなったし」


 「照れてのぼせそう」


 「ふふっ。ちょっとだけ我儘いっていいですか?」


 「なに?」


 桜藍の我儘?

 想像がつかない。


 「遊園地に連れていってください、わたし、◯◯パークに行ってみたいです」


 ◯◯パークは人気のテーマパークだ。

 季節のイベントにも力を入れていて、カップルの定番デートスポットになっている。


 前に桜藍を誘ったら、『入場料が高いから行きません』と言われてしまった。


 「もちろん。いいよ」


 「やった、ほんと?」

 そういうと、桜藍は脱衣所から出て行った。

 

 遊園地か。しかも◯◯パーク。

 何年振りだろう。


 桜藍も俺なんかと一緒で、本当にいいのかな。

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