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寝取られて壊れた俺に、あの子がいびつにハマってくる♦︎♦︎♦︎義妹を養うために、ブラック業界(不動産)で頑張ります!  作者: 白井 緒望


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第29話 面接

 「これ、約束の立ち退き料です」

 俺は女性に15万円を渡した。


 女性は金を受け取るとバッグに放り込んだ。


 「それで、ここにサインをお願いできますか?」


 俺はテーブルに退去確認書を置いた。

 女性がサインを終えると、さらに書類を2枚差し出してサインしてもらう。


 残置物を自分のものだと確認する書類と、所有権放棄についての書類だ。


 「カギはドウスル?」


 ——民法 第200条【占有回収の訴え】

 民法には権原のない占有者をも保護する条文がある。

 一方的な締め出しは許されない。



 部長を説得するために、同居人を締め出すと言ったが、実はリスクが高い。


 「鍵は開けっぱなしでいいです。カギは貴女がもっていてください」


 どうせ、この家に盗まれるような物はないのだ。


 俺はテーブルの目立つところに、何人いるのかも分からない不法占有者宛の手紙を置いた。


 中には、不退去の場合の賃料相当額請求書と2週間後に鍵を閉めるという旨が書いてある。


 女性に聞いたところでは、他にも占有者はいるが、何人いるか、いつ戻ってくるかは、ハッキリは分からないとのことだった。


 連絡がなければそれで良し。

 退去に同意してくれれぼ言うこと無し。


 問題は連絡がきたが、退去に不同意な場合だ。

 そうなったら結局は強制執行しかない。


 時間も金もかかる。


 少なくとも火曜日は誰も居ないとのことだったので、立ち退き日を火曜日にした。対面でのトラブルは避けたいし、あまり子供に見せたいものでない。


 「じゃあ、行きましょうか」


 

 「ワカッタ」


 バタンッ。

 俺は社用車のトランクに荷物を入れた。


 3人なのに手提げのバッグが数個。これが、3人がこの国で手に入れた全部。

 

 車の後ろの席には子供が2人。

 助手席には女性。


 子供はしばらく騒いでいたが、10分もすると寝てしまった。

 

 俺は運転しながら女性に聞いた。


 「子供達の父親は日本人なんですか?」


 「ナマエもシラナイヒト。たぶん日本ジン」


 女性はビーチサンダルにTシャツ短パンの軽装。胸元からはバストが見えている。


 「アンタ、シンセツにシテクレル。ワタシにホレタカ?」


 その言葉に、俺は自動応答の音声を聞いているような気持ちになった。

  

 不法滞在なら仕事を見つけることすら難しい。それでも、生きていかなければならない。


 それなのに、できることは限られる。


 ——きっとこの女性は、こうやってこの国で生き抜いてきたのだ。


 「入国に来たのは、観光ビザで?」


 「ギノウジッシュウ」


 なるほど。

 オーバーステイか。


 俺の前の会社にも技能実習生がいた。

 少なくとも俺がいた会社では、実習とは名ばかりの、労働力の搾取だったと思う。


 でも、不法入国でなくて良かった。


 「子供は学校には?」


 女性は首を横に振った。


 「通わせない理由でも?」


 すると、女性と手が触れた。

 冷たくて細い指。震えている。


 「バレテ、コドモとバラバラニナラナイ?」


 「今回の場合、その心配はないと思います。むしろ、逆。学校に通ってる方が安全です」


 すると、女性は擦り寄ってきた。

 「アンタ、ホントはワタシにホレタカ?」


 俺は女性の手を戻した。

 「惚れてません。手伝うのは、ただの気まぐれですよ」


 俺は女性を見た。

 やつれているが、綺麗な顔をしている。


 でも、幸せには程遠い。

 なんだかやるせない。


 「特別在留許可っていうのがあって、日本生まれの子供がいれば考慮されるらしいです……あっ、つきましたね。話の続きはまた後で」


 

 キッ。

 俺は車を停めた。



 「この店です」


 「ワタシデキルカナ?」


 「頑張ってください。俺は、外で子供と遊んでますので」


 女性は車から降りると店に入って行った。

 ここは、先日、面接をお願いした中華料理店だ。


 子供達が駆け寄ってくる。


 不法就労……。

 俺がしていることは、きっと、この国では正しくない。


 でも、この子達を見ていると。

 1人で迷って泣いている——子供の頃の桜藍を想ってしまう。

 

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