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寝取られて壊れた俺に、あの子がいびつにハマってくる♦︎♦︎♦︎義妹を養うために、ブラック業界(不動産)で頑張ります!  作者: 白井 緒望


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第20話 悲しみ

 その数日後、高橋さんと俺は、お爺さんの部屋の整理をしていた。


 お爺さんには子供がいたが、相続放棄したらしく、遺品の引き取りを拒否した。


 遺品を引き取ってくれる人がいないので、全て捨てることになる。でも、一応は、一覧を作って、形だけの公売手続きをしなければならない。

  

 家の中はグチャグチャで、ひとつひとつ整理していく。

 

 すると、通帳が出てきた。


 開くと残額は0円だった。お爺さんの財布には2,000円しか入ってなくて、きっとそれが全財産だった。


 ブルーマウンテンNo. 1の2,500円。

 その意味が分かった気がした。


 家の中にはアルバムが沢山あって、中には奥さんや子供と思われる写真が沢山あった。きっと、奥さんは他界していて、子供とは疎遠。


 高橋さんがダンボール箱にボンボンと遺品を放り込みながら言った。

 「写真、沢山あるね。息子さんも薄情だよね。写真くらい引き取ってあげればいいのに」


 「いや、そういうのも財物ですから。引き受けると、借金ごと引き受けることになっちゃうんですよ」


 すると、高橋さんが首を傾げた。

 「ふーん。薄情な法律だねぇ。そういえば、三条君、また来れるかな」


 「どうでしょう」


 三条君は今日は欠勤した。

 理由は言わなかったらしい。


 「ハエトリグモが死んでも休んでるくらいだからなぁ。厳しいかも。ちょっとこれ、玄関の方に置いてくるから」


 そう言って高橋さんは、ダンボール箱をもって部屋から出て行った。


 ゴーッと音がして、エアコンが動く。

 大きくて古びたエアコン。 


 トリプルキーのこのマンションは平成築なのに、きっとエアコンは昭和時代に作られた。


 俺はお爺さんのことを何も知らない。

 でも、この部屋を離れたくないってことだけはきっと真実で。


 それを思うと、三条君のハエトリグモのことさえ、本当なんじゃないかと思えてくる。


 俺はこんなお爺さん相手に、この前、してやったと感じていたのか。


 すごくやるせない気持ちになった。



 片付けが終わると、もう夕方だった。 

 スマホにメッセージ。


 課長からの夕食の誘いだった。


 店にいくと課長にビールを勧められた。


 「山路くん。仕事には慣れたか?」


 「あっ、はい。でも今回のことで……」


 「どうしたら」


 「仕事が分からなくなったというか」


 仕事として三条君に落ち度はなかったと思っている。でも、誰も悪くないのに、お爺さんは亡くなって、三条君は仕事を休んだ。


 なんだか釈然としないのだ。


 すると、課長がいきなり頭を下げた。

 俺はなんで謝られたか分からなかった。


 課長は言った。

 

 「綺麗事を言うつもりない。これも競売の現実だ。でも、これは俺が見せるべき現実だった。それなのに、俺は山路君に甘いところばかり見せてしまった。すまない」


 理由を聞いても、謝られた理由はよく分からなかった。



 「ただいま」

 家に帰ると、桜藍が出迎えてくれた。


 いつもは仕事の話を聞きたがるのに、何も聞いてこない。

 

 桜藍はただ、俺の背中に顔を押し付けて、すんすんと匂いを嗅いだ。


 「春馬さん。頑張った人の匂いがする」


 「まじ? 加齢臭かな……」


 「ねぇ。ぎゅーってしていい?」


 「ん、ああ」


 桜藍がぎゅーっと抱きしめてくれる。

 じんわりと温かさが伝わってきて、目尻がヒリヒリした。涙で上唇が塩っぱい。


 ようやく理解した。


 俺は、ただ悲しいのだ。





 


 

 


 


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