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寝取られて壊れた俺に、あの子がいびつにハマってくる♦︎♦︎♦︎義妹を養うために、ブラック業界(不動産)で頑張ります!  作者: 白井 緒望


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第16話 初出勤

 「山路くん。ここが君の席だから」


 教えてもらった住所は、都内の雑居ビルだった。

 

 1階と2階は風俗店で、3階に飯島エステートの不動産競売部がある。


 階段には足跡だらけのビラや空き瓶が散乱していて、あの綺麗な本社ビルとは全然違う。



 オフィスはファミリータイプのマンションほどの広さて、10名ほどが勤務しているらしい。


 入り口ドアを開けると、まず忙しく動き続けるコピー機と、けたたましく鳴り響くファックスが目に飛び込んできた。


 次に皆が一斉に顔をあげ、俺を睨んだ。


 一瞬、部屋が無音になる。


 ごくり。

 俺は唾を飲み込んで、お辞儀をした。


 「あの、私、山路といいます」


 数秒後には視線を戻し、皆んな無反応で仕事を再開した。

 (ここ、ヤバいかも知れない)


 俺の目の前には、いかにも不動産な雰囲気の中年男性。この小太りな人が俺の直属の上司らしい。


 「あー、わたしが課長の池田です。分からないことは、そこの高橋くんに聞いて」


 すると、課長の隣の女性が立ち上がった。

 俺と同い年くらいの金髪混じりの女性。顔立ちは悪くないが、どことなく疲れている。


 「高橋です。3年目。何かあったら、聞いてね」


 それと今日は欠勤だという半年前入社の三条君。俺を含めたこの4人が、チームらしい。


 「三条君はまた休み?」

 課長が聞くと高橋さんが答えた。


 「なんか、ペットのハエトリグモが死んだとかなんとか……」


 「ハエトリグモって、あの2ミリくらいの蜘蛛だよね?」


 「そうですね」


 「あんな小さな命のために会社に来れないなんて、三条君は本当に優しいなぁ」


 この殺伐とした雑居ビルとは真逆の朗らかな空気が漂う。

  

 「ちょっと高橋君。三条君に電話かけて」

 電話が繋がると、課長は受話器を耳に当てた。

 

 きっと、優しく諭すのかな。



 一瞬の沈黙。

 課長の口が動く。


 「てめぇ、この野郎! お前が来なくて債務者が飛んだら責任とれるのか、ごらぁ!!」


 「で、でもあまり追い込むと……死なれたら困りますし」

 電話の向こうから三条さんの声が聞こえる。


 課長がバンッと机を叩いた。


 「今から行って、お前の蜘蛛でも放り込んで来い。ん? 死ぬって言ってる? 落札された後も図々しく居座るような奴が死ぬかよ。死ぬなら他で死ねって言ってやれ!」


 課長は受話器を投げつけた。


 怒声の余韻が狭いオフィスに響き渡る。

 でも、誰も振り向きもしない。


 高橋さんは?

 さすがにこれが異常だと気づくだろう。


 すると、高橋さんはネイルを塗りながら、下敷きでパタパタと扇いだ。


 「あ、ここはね。競売にかかった物件を落札して、中の人を追い出す部署なの」


 ……マジかよ。

 ここ、ブラックなんてレベルじゃないぞ。


 ——でも、俺に逃げ場はない。

 

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