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寝取られて壊れた俺に、あの子がいびつにハマってくる♦︎♦︎♦︎義妹を養うために、ブラック業界(不動産)で頑張ります!  作者: 白井 緒望


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第15話 試練

 自分の脳細胞が加速していく。


 リスクは?

 労力に見合うのか?


 それまでの間にどんな業務をする?

 俺は我慢できる?


 いや、違う。

 これは全部、間違いだ。


 俺はまた正論をかざそうとしている。


 もっとシンプルなんだ。

 

 俺は桜藍に理想の女の子になって欲しい。そのためには、金と仕事がいる。


 必要なのは——。


 引き受ける覚悟。

 そのひとつだけ。




 「やります」

 俺はそう答えた。



 「へぇ」

 飯島は、ただそう言った。



 「でも、俺はアンタを信じるんだ。裏切ったら許さない」


 パチパチ。

 飯島が手を叩いた。


 「山路、ふざけるなよ。お前に言われるまでもない。本気で信じてチャレンジしたから、俺たちはここまで来れたんだ」


 「そうですか。であれば、俺はそれを信じるだけです」


 飯島が背中を向けた。


 「山路、お前。少し変わったな。正直、今回もそれらしいことを言って逃げ出すかと思ってたんだよ。俺が戦ってる世界には、『やるか、やらないか』しかないからさ」


 「変わったのかな」


 「あぁ、小さいけど確実にな。お前を変えたピースは何なんだ?」


 俺はピンクの巾着袋を見た。


 「さぁね。変わったとしたら。あの日、叔父さんの電話に出たからだ」


 飯島は首を傾げた。


 「相変わらず、意味が分からないヤツだな。あ、お前、まだ柚子と付き合ってるの?」


 「いや、別れた」


 「そうか。まぁ、大学の頃の柚子は、あの時のお前の言うことを丸ごと信じてたからな。会うのが早すぎたな」


 どういう意味だろう。

 柚子が俺を信じていた?


 いやいや、普通に裏切られただけだ。



 すると、秘書の女性が立ち上がった。

 「社長、プライベートに立ち入り過ぎです。自重してください」


 「あぁ、こわいこわい。じゃあな。山路」


 そういうと飯島は出て行った。


 えっ。

 俺は落ちたのか?


 裏切ったら許さない、なんて挑発したから。

 怒らせてしまったのかも。


 「はぁー」

 俺よりも先に杉山が息を吐いた。


 「ほんと勘弁してよ。山路君が社長を挑発するような事を言うから。生きた心地がしなかったよ」


 「俺、落ちたのか?」



 誰も答えてくれない。


 

 秘書の女性が書類を整理しはじめた。


 ……そうか。ダメだったのか。




 杉山がゆっくりと首を横に振った。


 「採用されたの?」

 俺の声は震えていた。


 すると、秘書の女性が立ち上がった。

 「採用です。不動産競売部はハードですが、当社がスタートした時の事業です。それだけ期待されているということですので、しっかりと……」



 「まじかよ。ハラハラさせないでくれよ……」


  

 「山路くんも、変わらないね」

 女性が微笑んだ。


 その顔を見ていて、気づいた。

 「あの、もしかして。貴女も杉山さんなんですか?」


 女性はクスクスと笑って、頭を下げた。


 「わたしは杉山一希すぎやまいつき


 「ってことは?」



 「ここにいる杉山元吾の妻です」


 「ゼミで一緒だった杉山さん?」


 「ええ。貴方のおかげで夫と出会えた一希です。主人の横では紛らわしいんで、名前で呼んでください」


 俺は力が抜けて、その場にへたり込んだ。


 「ふざけるなよ。これじゃあ、同窓会じゃねーかよ。さっきの沈黙は何よ? とんだ三文芝居だぜ」


 杉山が笑った。

 「悪いね。まぁ、普通に不採用って線もあったからね」


 「そうか。良かった」

 俺はしばらく立てなかった。



 帰り道。

 オフィスを出て、すぐに桜藍に電話した。


 「採用されたよ」


 電話口の嬉しそうな声。

 「じゃあ、今夜はご馳走にしましょう!」


 「いや、まだ弁当食べれてないんだよ。緊張して食欲でなくてさ」


 「分かりました。じゃあ、お夕飯で一緒に食べましょう。早く帰ってきてくださいね。あっ、お酒飲んじゃいますか?」


 「お酒はいいや」


 この舞い上がった気持ちで酒を飲んだら、どんなことになるか。


 俺は自分の口が綻んでいることに気づいた。

 桜藍が喜んでくれると、俺は嬉しいらしい。

 

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