第130話 サイクル
一年後。
予備試験には受かったが、司法試験には落ちた。資金も心許ないのでバイトも始めた。
「そこまで」
試験官が解答用紙を集める。
模試を終えて会場から出ると、雪が降っていた。スーパーで売れ残りの惣菜を買って、家に帰った。
しばらくテレビを見ていると、今年の初雪だと言っていた。
スマホのカレンダーを見た。
1月23日。
仕事を辞めてから、人と話す機会が極端に減った。予備校も通信だから友達はいない。
葛城から連絡もなくなったし。
桜藍は、あれから一度も連絡がない。
すごく孤独だ。
時々、自分が何のために苦しんでいるのか分からなくなる。
1月23日。
……今日は俺の誕生日だ。
「ちょっときついわ」
居た堪れなくなって、外に出た。
あてもなくウロウロしていると駅前についた。人が沢山いる。マフラーに顔を埋めて無精髭を隠した。
葛城と距離を置いたときに思った。
本当は葛城と話がしたいし、会いたいのに。段々と離れていくのをただ見ていることは、思ったよりもずっと辛かった。
——柚子もそんな気持ちだったのかな。
「ご都合主義すぎだろ」
俺は苦笑いした。
その後も家に戻る気になれなくて。
気づくと、大学の前にいた。
今日は雪だから、学生は少ない。
ベンチに座って、ただ校舎を眺めていると、なんとなく心が落ち着いた。
見上げると、大粒の雪がゆらゆらと落ちてくる。
やっぱ、もう無理かも。
視線を落とすと、女性の足が見えた。
雪に不似合いなヒールで足先が出ている。
見上げると、知っている顔だった。
「春馬」
柚子だった。
俺の元彼女。
派手なドレスを着ていた。
季節にも彼女にも、似合わないドレス。




