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NTR復讐のはずが、義妹が可愛すぎて自分がデレた  作者: 白井 緒望


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第124話 敵

 「委員長、この議事録。都合よく切り抜かれていて、実際の会話と全然違うんですけれど」

 俺はそう言いながら、膝上で手を握りしめた。


 「言いがかりをつけないでください。山路課長、君の勘違いなんじゃないか?」

 委員長は、露骨に面倒そうな顔をした。


 「勘違いじゃないです」


 「じゃあ、『何ページの何行目がどう違うのか』明確に教えてください。こちらで検証するので」


 「そんなこと覚えてる訳がないじゃないですか。録音を禁止したくせに、挙げ足を取るようなことを言わないでください」


 委員長はニヤっとした。

 「禁止なんてしていない。『控えて』とお願いしただけ」


 「そうですか。禁止はされてないんですね」


 俺がポケットに手を入れると、井上さんが制止しようとする。だが、俺はそれを無視した。


 

 トンッ。


 俺はテーブルにスマホを置いた。

 画面には▶のボタンが点滅している。


 ——『会社にいられなくなるかも知れない』

 睦月の言葉が脳裏をよぎった。


 一瞬、躊躇した。

 心の中がザラつく感覚。


 俺は、唾を飲み込んで、再生ボタンを押した。

 すると、すぐに音声が流れ始める。


 委員長の声。

 『よく正直に言ってくれたね。あ、井上君。わたしの最後の発言は削除で』

 前に、委員長が葛城に絡んだ時の発言だ。


 会議室がザワつく。

 委員長は手を前に出して腰を浮かせた。


 「もういい! 偽造音声は沢山だ。すぐに止めて! どうせ、AIか何かで作ったんだろう」


 「いえ、本物ですよ」


 「あの時、ヒアリングの開始前に『スマートフォンの電源をきって、カバンに入れさせた』じゃないか」

 部長の唇が震えている。


 俺は腕を上げた。

 「俺のスマートウォッチ。単体で録音できるんですよ。それでも文句があるなら、音声ファイルを差し上げますんで、声紋鑑定にでも出してください」


 「何もそこまでは……」

 部長は椅子に腰を落とした。


 「ええと、誘導尋問が1番わかりやすいのは……3/12 13:31。初回ヒアリングでの音声です」

 俺は再生位置を調整した。


 スマートフォンから音声が流れる。

 『ねぇ。聞いてるの? 彼女の方は肯定してるのに、君は否定するんだ? 『発言に矛盾あり』と。井上君。これ記録して』

 低く高圧的な委員長の声。


 「初回ヒアリングの13:31。葛城。この時点で俺とのことを肯定していたのは本当? 首のジェスチャーだけでいいから」


 葛城は手を膝において、首を横に振った。


 「人事部長に、先輩を助けたいなら認めるように言われたのは……この後です」


 「でも、オフィスで顔を合わせた時、葛城は辛そうな顔をしてた。それはなんで?」


 あの時の葛城は、ヒアリング前なのによそよそしくて、目を腫らせていた。


 「それは……」

 葛城は胸に手を当てた。


 「葛城。どうせ俺はもう『懲戒解雇』なんだよ? これ以上、状況が悪くなることはないから。教えてよ」


 葛城はチラッと委員長の方を見た。

 委員長は顔を横に振っている。


 「先輩が会社に来る前に、人事部長に呼び出されて。『葛城君が連絡をとると、山路君の発言の信憑性が下がる。個人的な連絡を控えるように』って言われて」


 「他には何か言われた?」


 「『私は葛城君の味方だよ。言うことを聞けば、悪いようにはしない』って。それなのに先輩が解雇って、人事部長は嘘つきです」


 葛城の唇が歪む。


 ふぅ。

 俺は大きく息を吐いた。


 まともに葛城と連絡が取れていない。

 もちろん、事前の仕込みもできていない。


 だから、これは賭けだった。

 

 パンッ。

 俺は資料を叩いた。


 「他にも議事録との矛盾は無数にあります。今の共感して油断させる方法も、連絡を分断させて対象者を孤立させるやり方も、誘導尋問の典型的なやり口です」


 会議室がザワつく。


 「この一点だけでも、本査問会の事実認定がいかにいい加減であるかが分かっていただけると思います」

 俺は早口にならないように、ゆっくりと言った。


 人事部長が立ち上がった。

 

 「当査問会の品位を貶めるような発言はやめたまえ。そもそも、そんなことをして私に何のメリットがあるんだ! 私と内海部長は同じ部署にいたこともないのに、とんだ言いがかりだよ」


 「……それ、本当ですか? 両部長は転職組で前の職場が同じだったと聞いたことがあるんですが」


 「偶然だよ。私が前にいた◯◯住専は、数千人規模の会社だ。それくらいの偶然は普通にあることだろ」


 「そうですか。お二人がどんな部署にいたか、◯◯住専に問い合わせればすぐに分かることですが?」


 「やれるもんならやってみたまえ。内部組織の情報を競合他社に提供するとは思えんがね」

 委員長の語気が強い。


 そうきたか。

 これで落ちてくれれば、楽だったのだけれど。


 決定的なもう一つの方法がある。

 正直……気が進まない。


 「そうですか。確かにそうかもしれませんね」


 俺は葛城の方を見た。


 誘導尋問を証明できれば、俺の名誉だけは回復できるだろう。


 でも、もう一つ心配事がある。

 それは、俺が去った後の葛城のことだ。


 だから、睦月に相談した俺の一番の要望。

 それは『内海部長を道連れにすること』。


 俺は葛城に問いかけた。

 「葛城。あの日、君が内海部長にどこに連れて行かれたかの話をしていいか?」

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