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NTR復讐のはずが、義妹が可愛すぎて自分がデレた  作者: 白井 緒望


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122/132

第122話 道標。

 「……桜藍?」


 「うん。わたしです」


 沈黙が訪れる。


 「電話、どうして?」


 「亜梨沙さんが教えてくれたんです。春馬さんが困ってるって。着信もあったから気になってて」


 「そうなんだ」


 経緯なんてどうでもいい。

 俺は自分の部屋に向かいながら、スマホを頬に押し付けた。


 「ガサガサいって聞きづらいですよぉ」

 まるで、昨日まで一緒にいたような感覚。


 「あのね。会社でさ……」


 俺は査問会のことを話した。

 桜藍にはイヤな内容もあったと思う。


 でも、ちゃんと聞いてくれた。


 「なんかさ。色々あり過ぎて、俺、どうしていいか分からなくなっちゃって」


 ベッドに座って、両肘を抱き寄せた。


 「春馬さん。一緒にいられなくてごめんね」


 「俺こそ」


 「春馬さん。ほんとはね。わたし、春馬さんに初めて会った時、パパとママが死んじゃって、1人になって。昔のことも覚えてないし、親戚とかもいないし……」


 「うん」


 「消えてなくなりたいって思ってたんだ」


 「そうなんだ」


 「そうだよ?」


 「辛いだろうなとは思ったけど」


 「うん。バレないように必死だったもん。でも、頑張れた。どうして乗り越えられたと思う?」


 「分かんないや。どうして?」


 「……あなたが居てくれたからだよ」


 「でも、俺さ……」


 俺は桜藍を支配したいって思ってた。

 桜藍と暮らし始めたのだって、自分のためだ。


 「うん、口では『支配する』とか言ってたけれど。すごく優しくて、すごく頑張ってくれて。いつもわたしを笑わせてくれる。一緒に暮らしてるうちに、春馬さんは、わたしの居場所になった」


 「桜藍こそ、頑張り屋さんじゃん」

  

 ガサガサと動くような音。


 「違うよ。わたしはあなたの頑張りを追いかけてるだけ。イギリスに来れたのだって、春馬さんが背中を押してくれたからだもん」


 「でも、今の俺は」


 もう苦しくて、頑張れないよ。


 「春馬さん。窓を開けて」


 「うん。でもなんで?」


 「南の空に青くて明るい星が見える?」


 「ああ。シリウスだろ? 見えるよ」


 「シリウスはイギリスからも見えるの。こっちではまだ空が明るくて見えないけど、あと数時間したら見える」


 「時差があるもんな」


 「シリウスは真っ暗な空でも明るく光ってて。航海の道標なんだって。遠く離れてても同じ星が見えるのは、ちょっとだけ不思議だね」


 「一緒に見れたら良かったのに」


 「わたしは春馬さんを追いかけてるから。今はまだ……それでいいの」


 ああ、そうか。

 桜藍は俺に、立ち止まってほしくないのか。


 「……わかった」


 「うん。これだけで伝わっちゃうのかぁ。ふふっ。春馬さん、わたしのこと好きすぎだよ?」


 まだ告白してもいないのに、先回りされた。


 「ネタバレ禁止だから。桜藍だって、俺のことを、好きすぎだよ?」


 「わたしは、いいの。普段から素直に……ジェスチャーで表現してたから」


 「それ、素直って言わなくない?」


 「わたしの中では、素直なんです。あっ、わたし、春馬さんに不満があります」


 「なに?」


 「わたし、春馬さんのお部屋に行った時、パジャマの下、裸だったんだよ? それなのに何もしてくれなかった。いじわるだから嫌いです!」


 「だって、桜藍。未成年じゃん」


 「ほんと、それだけの理由?」


 「それだけだよ」


 「わたしは、春馬さんのそういうところも大好きだけど。あっ……」


 桜藍は言葉に詰まった。


 「それって」


 「今の忘れてください」


 「忘れるわけないじゃん」


 「やっぱ、春馬さんはイジワルです。そろそろ切るね。これ以上、お話してると、今すぐに帰りたくなっちゃうから」


 「電話、ありがとう」


 「ごめんね、わたし本当は、決心が揺らぎそうで。日本に帰るまで連絡するつもりなかったんだ」


 「こっちこそ、ごめん」


 「ううん。いいの。おやすみなさい。春馬さん。またね」


 「ああ、またな」


 「ブツッ」

 電話が切れた。


 (あっけなく切られたよ)


 電話口の静けさは寂しかったけれど。

 俺は窓を開けてシリウスを見上げた。



 『またね』……か。

 良い言葉だ。



 

 俺は睦月にメッセージを送った。


 「夜中にごめん。俺、やっぱりこのまま終わりたくない。力を貸してくれないか?」

 

 



 

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