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NTR復讐のはずが、義妹が可愛すぎて自分がデレた  作者: 白井 緒望


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105/132

第105話 説明

 『嘘に敏感』……か。

 家は人生最大の買い物だもんな。


 ごくっ。

 俺は唾を飲み込んだ。


 「はい。5年前にこのマンションで飛び降り自殺がありました。管理人さんにも確認したのですが、5階のどこかから落ちたということしか分かりませんでした。今回の価格はそれも考慮した値付けになってます」


 宮園さんが真顔になった。

 片肘を抱き寄せている。


 キィという音。

 どこかの玄関ドアが開いたらしい。



 俺は息をとめた。



 「……分かりました」

 宮園さんは笑顔だった。


 肩透かしをくらった気分。


 「良いんですか?」


 「えっ、だって。そんなこと言ったらどこにも住めませんよ? デメリットはちゃんと価格に反映されていて、きちんと話してくれた。わたしには、それで十分です」

 宮園さんの眉が下がった。


 「よかった」

 つい、本音が漏れてしまった。


 え、でも。

 お墓との組み合わせは?


 嫌悪施設で自殺は相当に印象が悪いと、睦月が言っていた。

  

 だが、外が墓なのは一目見れば分かることだ。

 分かっていることをあえて確認する必要もないか。


 すると、山田さんが俺の肩を叩いた。

 「まぁ、下はお墓ですけどね。でも、メリットも多いんです。まず、半永久的に建物がたたない。風通しがよくて、排気ガスが少ない。静かですし、そこの霊園は管理がいいので、鳥害や虫害の報告もありません」


 宮園さんはポンと手を叩いた。


 「そうなんですよねぇ。わたしはお墓はそんなに嫌じゃないです。そして、お盆の時は人が増えて、お経がうるさい。それも慣れてますので」


 ちょっと達観しすぎでは?


 俺が額の汗を拭うと、山田さんがチラッと何かの紙を見せてきた。


 『お客様アンケート お名前:宮園かほり』と書いてある。

 

 山田さんがその数行下を指差した。

 『祖母の家がお墓の前だったので、お墓に抵抗感はありません』との書き込み。


 「なっ!?」


 すると、山田さんはニヤッとした。

 こいつ、確信犯だ。


 俺が睨むと、その口角はさらに上がった。


 「では、これに記入をお願いします」


 山田さんは購入申込書を出した。

 宮園さんは、財布から一万円を出すと、記入を始めた。


 「ええっと、手付金は100万円くらいでいいですか?」

 宮園さんが項目ごとに山田さんに確認をとっている。


 俺はその様子を見ていて、ようやく自分の鼓動が落ち着いていくのを感じた。


 「あっ、ローンは使います。金額は2,980万円……」



 すると。



 「あっ」

 山田さんの声が裏返った。


 「どうしました?」

 俺が聞いても、すぐには答えてくれなかった。


 山田さんは何かをブツブツ言っている。

 「山路さん。御社は物件の先行引渡しはできますか?」


 「えっ。確認してみないと分かりませんが、先に引き渡すのは厳しいと思います。どうしてですか?」

 

 「私としたことが……。ローンの実行のタイミングですよ。金利度外視で仮審査が早いところに出したとしても、今からだと厳しいな」


 「まだ1ヶ月ありますよ?」


 「3月は繁忙期なので、審査に時間がかかるんですよ。完全に失念してました」


 ローンが間に合わなければ物件は渡せない。

 汗で背中にシャツが張り付く。


 とにかくなんとかしないと。

 「私だけじゃ判断ができないので、上司に聞いてみます」


 部長に電話したが出ない。

 葛城にかけると、折り返してくれた。


 「先輩、どうかしましたか?」


 「部長は一緒?」


 「はい」


 「部長に代われる?」


 「あっ、はい。あ、先輩」

 少し疲れてそうな声。


 「どうした?」


 「忙しいのにすいません。先輩、まだ時間かかりそうですか? こっちは終わって、部長がそっちに行くみたいなこと言ってるんですが……」


 部長がきたら、全部をぶち壊されかねない。


 「今はまずい。絶対に来させないで」


 「分かりました。部長に代わります」


 「悪いな」

 そう言う前に保留音になった。


 「山路君? どうした」

 部長だ。電話口だとさらに濁った声。


 「物件の先行引き渡しはできますか?」


 「どういうこと?」

 部長の声が低くなった。


 「お客さんの感度は出てるんですが、3月中に引っ越しできることが条件なんです。でもローンの実行が間に合わなそうで」


 俺が言い終わる前に、言葉を被された。


 「先に引き渡しちゃって契約解除になったらどうするの。もうそんなユーズド物件売れないよ? 金をもらう前に火事になったら?」


 「そこを何とかなりませんか?」


 「しかも、よりによって決算期よ? 金が今期中に入ってこないとか、あり得ないでしょ」


 「いや、でも」


 「金と商品は同時交換。そんな常識もわからない奴には売るな!! ブツッ」


 怒鳴り声で耳鳴りがする。

 ムカつくが、今回ばかりは部長の言うことが正論だ。


 ……諦めるしかないのかな。

 俺は天井を見上げた。この天井ってこんなに低かったっけ。

 


 すると、宮園さんが顔を上げた。


 「あの、さっきのお支払いの件、何とかなるかも知れません。無理なお願いにはなってしまうのですが……」

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