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NTR復讐のはずが、義妹が可愛すぎて自分がデレた  作者: 白井 緒望


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101/132

第101話 管理

 13:28

 物件のエントランス前。


 俺は腕時計を見た。

「あの人、また遅刻か?」


 「先輩、その時計のイルカちゃん。可愛いですね」

 葛城が腕を覗き込んできた。


 「そうか? 桜藍からもらったんだ」


 葛城の口の端が上がる。

 「そうなんですか。先輩、もうすぐロリコン卒業ですね?」


 「どういうこと? ってか最初からロリコンじゃないし」


 「だって、桜藍ちゃん。今年で18歳ですよ?」


 そうか。

 桜藍ももうすぐ18歳か。


 

 ♦︎



 「お待たせしました」

 山田さんがやってきた。

 額から汗を流している。


 「いえいえ。汗かいてますけれど、大丈夫ですか?」


 「走ってきたもので。じゃあ、管理人室に行きましょう」


 

 管理人室には『巡回中』の文字。

 しばらく待つと、紺色つなぎの男性がやってきた。


 「すいません。◯◯不動産の山田と申します」

 

 「あぁ、そういえば今日だったね」

 管理人は名刺を受け取ると、グシャっと尻ポケットに突っ込んだ。


 「5階△△号室について、教えて欲しいのですが。あ、こちらはオーナーの飯島エステートの方です」


 管理人は俺らを一瞥すると、腰に手を置いた。


 「で、何?」


 「近隣の方から、こちらのマンションで飛び降り自殺があったと聞いたのですが……」


 「あぁ、ちょっと待ってね」


 管理人は管理人室の棚からノートを持ってきた。ページをめくりながら話を続ける。


 「私もここはまだ3年目でね。その事故については直接はみてないんだよ。でも、引き継ぎノートには確か。あ、あったあった」

 管理人は首から下げていたメガネを掛けた。


 「ええとね。事故があったのは5年前」


 山田さんの手がギュッと握られた。

 管理人は続きを読んだ。


 「女性の飛び降り自殺。『5階のどこかの部屋からの落下』とあるね」


 「どこの部屋とか分からないんですか?」

 俺は思わず声を出した。


 「んー。なにせ私が来る前の話だしね。私から伝えられるのはそれだけかな」


 「ありがとうございます。あ、これ。よければ」

 俺の指示で、葛城は近隣挨拶用の菓子折りを渡した。


 「いやぁ。悪いね。あ、そうそう。事件当時の住民説明も同じ内容になってるから。んじゃあ、巡回に戻ります」

 そう言い残して管理人は去っていった。


 「5年前か。重説に書かない訳にはいかないですね。あっ、山路さん。出し値は幾らになりました?」

 山田さんは小声になった。


 「6,980万円です」


 すると山田さんは、目を閉じて腕を組んだ。

 数秒の沈黙。


 「うん。ロクキュッパね。重説には聞いたままを書くとして……うんうん。山路さん、専任専属媒介契約書を持ってきましたので、お願いします。今日中に発送できますか?」


 山田さんは封筒から媒介契約書を出すと、価格欄に6,980万円と記入した。宅建業者欄には、すでに◯◯不動産のゴム印が押されている。


 「はい。社内で押印してすぐに送り返します」


 山田さんは笑顔になった。

 「あっ。この返信封筒どうぞ。いやぁ、一億円とか言われたらどうしようかと思いましたよ〜」


 「私も、事故がウチの部屋じゃなくて一安心しました」


 「ですね。今はお客様の囲い込みもできないからね。イヤな時代になったもんです」


 山田さんは手を振りながら帰っていった。



 帰ろうとすると、袖を引っ張られた。

 「先輩、なにが一安心なんですか? 自殺が判明しちゃって最悪じゃないですか」


 葛城は首を傾げた。


 「あぁ。部屋を特定されなかっただろ?」


 「それも訳がわからないです。落ちた場所は分かるんだから、その真上のどこかの部屋からじゃないですか」


 「だな。部屋が分からないってことは、同フロアの全部屋でリスクを分散するって意味なんだよ」


 葛城は口を尖らせた。


 「納得できないです。そしたら『事故現場の上の部屋のどこか』ってしたらいいじゃないですか」


 「その場合、最上階から飛び降りたなら、その下の全部の部屋を横切って落ちたことになるよね」


 「そうですけど」


 「葛城ならさ。同じフロアの遠い部屋で自殺が起きたのと、自分の部屋の最上階から落ちたの、どっちが嫌?」


 葛城は腕を組んで目を閉じる。

 眉間に皺を寄せると、首を横に振った。


 「そりゃあ、上の方が嫌に決まってます。落ちる時に目が合うかも知れないし、もしかしたらバルコニーの手すりに頭をぶつけたかも。ひぃぃ」


 「だろ? だから管理人はああいう曖昧な言い方をしたんだよ」


 「ふぅーん」


 「事故時には警察も来てるのに、場所が分からないなんてあり得ないじゃん」


 「……大人の思いやりってやつですね」


 葛城はメモ帳を閉じた。

 

 

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