旅館で…なの
"ゆーびきーりげーんまーん…"
熊谷と柊先輩が小指をつないで指切りげんまんをしようとしている
「柊先輩!ダメ!!」
あたしは叫ぶが、柊先輩は気づかない
"嘘ついたらー、針一万本、心臓に突き刺す…"
「ダメぇぇ!!!!!」
"ゆーび切った!"
その瞬間、柊先輩は右胸を押さえる
一瞬、苦痛の顔を浮かべた柊先輩の口から血がタラリと流れる
次の瞬間には、柊先輩は咳込み、口から大量の血を吐いて倒れた
「柊先輩!!!!」
あたしは走って柊先輩に近づこうとするが、なぜかどれだけ走っても柊先輩に近づけなかった
氷室と熊谷が倒れた柊先輩を見て笑っている
あたしは涙が溢れてきて、泣きながら柊先輩に駆け寄ろうと必死だった
「柊先輩!!」
…さん!
!?声が聞こえる
美里さん!!
この声は…
いきなり視界が白くなっていく
「美里さん!」
あたしはハッと目を開けた
そこには心配そうに覗き込む健一くんがいた
「大丈夫ですか?すごくうなされてましたよ」
夢か…
ずっと見続けている悪夢
「悪い夢でもみたんですか?」
あたしはゆっくり起き上がると、周りを見回した
そうだ…
温泉旅館に来てたんだ
「あ、うん…。ちょっとイヤな夢見てた」
汗もかいてるのか、なんか服が気持ち悪い
「汗もかいてるじゃないですか。旅館の浴衣に着替えたらどうです?」
あたしは部屋に置いてある時計を見る
「うん…。温泉入ってくる…」
そう言って着替えを持って大浴場に向かった
大浴場にはもう何人かのお客さんもいた
あたしは服を脱ぎ、まずシャワーで身体を流す
そして湯船に浸ると、カラダの中からジワリと温かくなるのを感じた
ここでやっとホッと一息つけた
さっき見た悪夢のことも考えないようにしないと…
カラダがジワジワと温かくなる
あぁ…幸せ…
やっぱり温泉っていいなぁ
そんなことを考えていると、視線が気になる
あたしはそっちの方を向くと、少し年上の人と目が合った
その人はバツが悪そうにペコリとお辞儀をしたので、あたしもお辞儀をした
いや、その人だけじゃない
他からも視線を感じる
どうやらジロジロ見られているようだ
まぁ、たぶんカラダの火傷の跡がみんな気になるんだろう
そういえば、火傷を負ってからは銭湯にも行ってなかったなぁ
そんなことを考えていたが、視線が気になりすぎて、すぐに温泉から出て部屋に戻った
「あれ?早かったですね」
健一くんがあたしを見てそう言った
「あ、うん…。なんかちょっと…。やっぱり部屋にある露天風呂に入ろうかなって…」
あたしがそう言うと、健一くんの顔が明るくなった
「じゃあ入りましょう!俺も入ります!」
うわ…やっぱりそうなるか…
「じゃあ先に健一くん入りな?」
「え…?一緒に入ればよくないですか?」
「いいけどさ、エッチなことはしないよ?」
あたしがそう言うと、明らかにガッカリした表情になった
「わ、わかってますよ」
健一くんはそう言ったが、いざ一緒に入るとくっついてくる
そのうちカラダを触ろうとしてきた
「ねぇ!エッチなことしないって言ったじゃん!ゆっくり温泉にも浸かれない」
あたしがそうピシャリと言うと、健一くんはションボリした
「なんか最近美里さん冷たいなぁ…。レスだし…。そういえば、柊さんが組織に戻ってから冷たくなってきたような…。もしかして浮気してます?」
あたしはドキッとした
もちろん浮気はしてないけど、柊先輩への気持ちが蘇ったのは本当だ
「はあ?してるわけないじゃん」
「本当ですか?前までは割とエッチしてたけど、最近はずっと拒否されてるんでそうだと思いました」
「だ、だって露天風呂でエッチなんてしたらダメでしょ!?汚れるし、旅館の人もそういうつもりで貸し出してないでしょ!」
「じゃあ布団のとこならいいんですか?」
「え?」
「ここがダメなんですか?それとも俺がダメなんですか?」
あぁ…。こうなると健一くんは面倒くさい
そういう気分になれないのに…
そういえば上条とも一晩付き合うって約束したんだった…
約束を守ることになると、健一くんを裏切ることになるもんね…
まぁ、もう気持ちが柊先輩にいってる時点で裏切ってるようなものだけど…
「ここはダメ」
あたしは覚悟を決めてそう言った
「じゃあ布団のとこでならいいってことですよね?」
あたしはコクコクと頷いた
健一くんは嬉しそうな顔をすると、あたしの手を引っ張った
「美里さん、もう我慢できないんです」
そう言いながら、あたしをタオルで包むと布団のある所まで引っ張る
そしてあたしを布団の上に押し倒した
「ま、待って!旅館の人来るんじゃない?ほら、晩ご飯の用意とかなんとか言ってたじゃん」
「こっちから連絡しないと準備しにこないって言ってましたよ!だから大丈夫です」
健一くんの手があたしのカラダを弄ってくる
美琴は…、晴翔くんと今エッチしてるのかな…
いいなぁ…好きな人と…
ごめんね健一くん…
せめて想像の中だけでも…
あたしは目を閉じて柊先輩を想い、喘ぎ声をあげた




