第149話 伝染病…放置したら大変だ!
戦勝の宴が終わり約3か月。
すっかり色づいた遠くの山々がセピア色に染まる頃――
ライトたちの通う学園では、最近“風邪”のような症状が蔓延していた。
「こほっ…おはよう、ライト」
「おはよう…って、大丈夫?ミャルナ…何か顔赤いけど」
ここは魔力のある異世界。
でも当然だが“病気”というものだって存在している。
以前触れたが――この世界の医療分野は異常なほど遅れている。
そんなわけで。
実は風邪、余り楽観視していいものではなかった。
「あー、うん。こほっ…少しだるいね」
「熱あるんじゃないの?」
「……熱?」
うーむ。
そこからか。
一国の第4王子がこういう認識だ。
平民など、きっと意味も解らず体力を消耗させていく事だろう。
僕の訝し気な視線に、ミャルナは恐る恐る問いかける。
「えっと…こほっ。…この状態って…もしかして“呪い”とか?」
風邪と言う概念が欠如している世界。
多少の具合の悪さは、ここの世界の人たちは「気のせい」として誤魔化して生活してきていた。
そして体力のないお年寄りや生後間もない命が失われていた事実。
僕は背中に嫌な悪寒を感じてしまう。
「…呪い?…それって……そういう話、あるってことなの?」
「う、うん…えっと、ライト、圧が…こほっ」
「あ、ごめん」
ついにじり寄る僕を、控えめに押し戻すミャルナ。
接近する僕とミャルナ。
気付けばあと数センチで顔が触れてしまう距離。
なぜかクラスの女子、顔を赤らめフリーズしてますけど?
「コホン。…ねえミャルナ。もしかして陛下とか皇后とか…体調悪かったりする?」
僕は懸念に踏み込む決意をした。
もしもこれ、僕の思っている『ただの風邪かあるいはウイルス性の感染症』なら。
正直対策はいくらでも取れる。
何しろ僕はルードイーズの時。
ありとあらゆる病気で死んでいる。
つまりは既に“耐性を獲得”しているんだ。
でも。
このミャルナの反応。
もしも何かしらの呪いが含まれているとしたら…
僕の大好きなこのミラリルス。
恐ろしい未来が待ち受けてしまう。
「えっと…こほっ…ライト」
「っ!?…うん」
途端に覚悟を込めた瞳に変わるミャルナ。
僕の背に嫌な汗が流れる。
「…放課後、時間取れる?…少し相談したい…こほっ」
「…分かったよ…一応…『キュア』……どう?」
「っ!?…ふわあ、すごく楽になったよ…ありがとう」
そんなタイミング。
ウェレッタ先生が教室にきて、ホームルームが始まったんだ。
(…ねえ、ティア)
(…はい)
(病気…この世界ってどういう認識なの?)
(…はあ。……あとでよろしいですか?わたくしも情報の整理、しておきたいですから)
(うん)
こうして新たな脅威、静かに蔓延を始めていた。
僕はまだ知らない。
今回の風邪騒ぎ…
いくつかの悪意が絡んでいたことを。
※※※※※
一方王宮。
陛下の寝室。
「陛下?…お顔が…」
「ごほっ…う、うむ。…いまいち体調が悪くてな」
他国での留学を終え、戻ってきた第2王女メリルーギュ。
彼女は嫌な気配を感じ、戻ってきた足でそのまま陛下の寝室を訪れていた。
「メリ…留学を終えたのだな…ごほっ」
「っ!?陛下…お父様、どうかしゃべらず…ムニーサ、かの国の薬用茶を」
「はっ」
テキパキと指示を出し、陛下のベッドの横に腰を掛けるメリルーギュ。
その瞳には父を心配する17歳の美しい表情が浮かぶ。
そっと手を握り、優しく声をかけた。
「このような状況、ですが王族として伝えなければなりません…わたくしの留学していたフィニール聖王共和国…猊下であるロガッティ様…病に倒れました」
「っ!?なあ?…げほっ、ごほっ…」
慌てて陛下の背中を優しくさする第2王女。
どうにか用意できた薬用茶を、そっと差し出した。
「…一般的には過労と伝えております。ですが…むしろ呪いに近い…わたくしのスキル『真実の眼』…それにはそう映ります」
「……まさか…」
「影の騎士ノアール様…いえ、大公爵であるライト様…彼との面談、お願いできますか?」
期せずして蔓延する病に似た呪い。
国外にいた第3王女、彼女に瞳が覚悟の色に染まる。
(これはきっと…自然な発生ではない…何かが…動いている――)
異星の神と言うとんでもない脅威にさらされ。
ライトと言う超絶者により救われたミラリルス。
新たな脅威、それは静かに。
そして世界を蝕み始めていた。
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