表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
74/93

第68話 役割分担

翌朝。


宿の一室。

長机を囲むように全員が座っていた。


窓の外では祭りの準備が続いている。

朝から賑やかだった。


ユイガが資料を机へ並べる。


「それでは説明します」


真面目な声だった。

自然と全員の視線が集まる。


「千種族大祭は約二週間続きます」


紙が広げられる。


「最後の2日間に十種族会議が開催されます」


会場地図。

交流区域。

種族別会館。

十種族会議会場。


かなり広かった。


「今年、王立リスティア魔導学園の皆さんは来賓として招待されています」


ユイガは続ける。


「教育機関としての交流。


 魔法研究の共有。


 若者同士の交流。


 それが主な目的です」


シエルが頷く。


学園名代として事前に聞いていた内容だった。


だが。

話はそこで終わらなかった。


シエルが資料を閉じる。


「学園側の目的はもう一つあります」


部屋が静かになる。


「サクラ教団です」


つめの表情が変わる。

リオンも姿勢を正した。


シエルは続ける。


「護符事件は終わっていません」


静かな声だった。


「開花。サクラ教団。護符。


 全て未解決です」


窓の外から祭囃子が聞こえる。


でも。

部屋の空気だけは少し重かった。


「今回」


シエルは言う。


「私達は交流だけでなく情報収集も行います」


フィオナが腕を組む。


「第二の護符事件を防ぐために?」


「はい」


シエルは頷いた。


「それが最優先です」


リオンが手を挙げる。


「つまり見つけたら殴る?」


「証拠を集めます」


即答だった。


「その後、学園とヤマナギへ報告です」


「殴らないのか」


「殴りません」


「つまんねぇな、なぁカノ」


リオンがつめに話題を振る。

シエルがつめを見た。


「……こっち見んなって言いたい」


つめは目を逸らした。


フィオナも見ていた。


レインも見ていた。


全員見ていた。


「信用無いなぁ」


「あると思ってたの?」


フィオナが聞く。


「少しは」


「無いわね」


即答だった。

つめは地味に傷付いた。


ユイガが苦笑する。


「それで」


気を取り直す。


「私一人では全員を案内できません」


地図を指差した。


広い。

本当に広い。


「なので別行動になります」


なるほど。

つめは納得した。


シエルも頷く。


「夜は情報共有をしましょう」


「毎日?」


リオンが聞く。


「なるべく毎日です」


シエルがばっさり言う。


「何か見つけたら必ず共有を」


誰も反対しなかった。


ユイガは資料をめくる。


「まずシエルさん」


「はい」


「学園代表なので来賓としての対応をお願いします」


予想通りだった。


「私が同行します」


ユイガが言う。


「種族代表への挨拶。研究機関での情報交換。会議見学。ヤナマギ学園での交流。その辺りです」


シエルは頷いた。


「了解しました」


続いてユイガはフィオナを見る。


「フィオナさん」


「私?」


「人族代表団から面会希望が来ています」


フィオナが頭を抱えた。


「やっぱり」


「まさか?」


リオンが聞く。


「父よ」


「あー」


納得した。

全員納得した。


すると。

部屋の扉が叩かれる。


「失礼します」


聞いた事のある声だった。

扉が開く。


灰がかった桜色の髪。


昨日の受付会場にいた女性だった。


相変わらず疲れている。

本当に疲れている。


「はじめまして、カガリと申します」


「昨日の人だ」


つめが言う。


女性は少し考えた。


「……あぁ、昨日の人です」


認めた。


ユイガが紹介する。


「ヤマナギ出身で祭りの実行委員会を手伝ってくださっているカガリさんです」


「よろしくお願いします」


小さく頭を下げる。


「祭り運営を担当しています」


眠いのか少し目が虚ろだった。

リオンは思わず聞いた。


「寝てる?」


「寝てません」


即答だった。

少し怖かった。


「案内役を頼まれました」


カガリは続ける。


「人族代表団。交流会場。来賓区域。


 その案内を担当します」


フィオナが聞く。


「断れる?」


「無理です」


また即答だった。


「ですよね」


フィオナも諦めた。


「じゃあ俺はカノ達と情報収集か」


リオンが聞く。


「待ちなさい」


フィオナが止める。


「リオンはこっちで私の付き人として動いてもらうわ」


「なんでだよ!?」


「問題児同士を固めるわけないでしょ」


「勘弁してくれよぉ……」


リオンは嫌そうに頭を押さえた。


「それでいいわね」


ユイガが頷く。


「お願いします」


リオンは少し考える。

そして。


「まぁ旨いもん食えそうだしいいか」


軽かった。


カガリは少しだけ首を傾げる。


「旨いもんですか」


「出るだろ?」


「なるほど」


無表情の中に少しだけ目が輝いていた。


最後。


「サクラ教団の情報収集ですね」


カガリが少しだけ目を細めた。

でも。

それに気付いた人は居なかった。


残ったのは。


つめ。


レイン。


そして。

案内役不在。


ユイガが資料を見る。


その時だった。

窓の外から影が落ちた。


ばさり。

翼だった。


開いた窓から少女が飛び込んでくる。


「やあ」


聞き覚えがあった。


昨日の翼人族。

ツヅリだった。


「ボクがやるよ」


当然のように言った。


ユイガが驚く。


「え、ツヅリさん?」


「暇だから」


ユイガは何を言いたそうにする。


絶対嘘だった。

つめでも分かった。


「昨日の僕っ娘だ」


「まだ言ってる」


ツヅリが呆れる。


「キャラ付けは大事だから」


つめは大真面目だった。


ツヅリは笑う。

そして。


「じゃあ決まり」


そう言った。


すると。

レインが先に口を開いた。


「つめと行く」


少しだけ意外だった。

いつものレインなら面倒臭がって宿で寝ているからだ。


リオンが見る。


フィオナも見る。


つめも見る。


レインは平然としていた。


「一人にすると面倒だから」


「……失礼」


「否定できる?」


できなかった。

つめは黙った。


班が決まる。


シエルとユイガ。


フィオナとリオンとカガリ。


つめとレインとツヅリ。


それぞれ違う役割。

違う場所。

違う目的。


でも。

目指すものは同じだった。


サクラ教団。

そして。

第二の護符事件の阻止。


窓の外では祭りの準備が続いている。


人が増える。

音が増える。

熱気が増える。


そのどこかに。


教団もいる。


シエルは立ち上がった。


「それでは」


静かな声だった。


「調査開始です」


千種族大祭。

一日目が始まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ