表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
6/93

第6話 雑務係

「生活補助枠ぅ?」


つめは受付カウンターに突っ伏した。


「もっとこう……あるでしょ。特別枠とか」


「ありません」


受付嬢はにこやかに言った。

でも目が笑ってない。


「異世界転移者優遇とか」


「なんですかそれ」


「チートとか」


「ありません」


現実だった。

つめはぐったりする。

ガルドが横で笑っていた。


「よかったじゃない。仕事あるだけマシよ」


語尾が少し柔らかい。

でも内容は厳しい。


「荷運びとか絶対腰痛くなる……」


「もう痛そうな顔してるよ」


「失礼なんだけど」


「実際そうじゃない」


否定できない。

つめは唇を尖らせた。


その日の仕事は、倉庫整理だった。


「うそでしょ……」


ギルド裏の木箱を見て、つめは絶望する。


多い。

普通に多い。


「これ今日中ね」


受付嬢がさらっと言う。


「いやいやいや! 新人にやらせる量じゃなくない!?」


「他の新人はもっとやりますよ?」


「筋肉あるでしょそっちは!」


つめは細腕を見せる。

説得力はあった。

でも受付嬢は冷たい。


「冒険者は体力仕事ですので」


「コスプレイヤーにそんなこと求めないでよ……」


「こすぷれ?」


「なんでもない」


通じない単語を説明するの、地味に疲れる。

つめは木箱を持ち上げた。


「おっっっも……!」


腰が終わる。

なんで異世界来て肉体労働してるんだろう。

普通もっとこう、「勇者様〜!」とかじゃない?

いや一回それっぽかったけど。


エルフ許さない。


一時間後。


「……はぁ、はぁ……」


つめは床に転がっていた。


無理。


人間ってこんな重い物運べるんだ。

ガルド達は近くで依頼確認をしている。


「ほんと体力ないね」


「うるさい……」


「普段なにして生きてたの?」


「写真撮られてた」


「は?」


「……なんでもない」


説明が難しい。

ガルドは呆れた顔をした。


「まあ、顔はいいもんね」


「え?」


「見た目だけなら金持ちの愛人とかやれそう」


「言い方」


でも。

つめは少しだけ嬉しかった。

褒められるのは好きだ。

かなり好き。


「……ガルドって意外と見る目ある?」


「調子乗るの早いね」


笑われた。

つめはむっとする。


昼休憩。


つめはギルドの隅でスープを飲んでいた。

薄い。

なんか野菜の味。


(肉ほしい……)


その時。


「おい」


低い声。

振り向くと、大柄な男達が立っていた。


筋肉。

酒臭い。

嫌な予感しかしない。


「新人の嬢ちゃん」


「……なに」


「その耳、本物か?」


きた。

つめは内心で舌打ちした。


「偽物だけど」


「へぇ〜?」


男達が笑う。


「触っていいか?」


「嫌ですけど」


「減るもんじゃねぇだろ」


「減るよ接着力が」


「接着?」


「あっ」


しまった。

男達が顔を見合わせる。


「やっぱ作り物じゃねぇか」


「だからそう言ったじゃん」


「紛らわしい真似してんなよ」


言い方が地味に腹立つ。

つめもイラッとした。


「そっちが勝手に勘違いしたんじゃん」


「あぁ?」


空気が変わる。

やばい。

でもつめは止まれない。


「ていうか人の見た目で勝手に期待して勝手にキレるの意味分かんないし」


「嬢ちゃん」


「なによ」


「喧嘩売ってんのか?」


「先に絡んできたのそっちでしょ」


周囲がざわつく。

ガルドが遠くで頭を抱えていた。


「……うわぁ」


「また始まったね」


ミリが小声で言う。

ルカは苦笑いしていた。


つめは男達を睨む。

別に勝てる気はしない。


でも。

こういう時、引くのが負けな気がしてしまう。

昔からそうだった。


「……面白ぇ」


男の一人が、つめの肩を掴もうとした。

その瞬間。


ばんっ!!


ギルドの扉が勢いよく開いた。


「緊急依頼よ!!」


受付嬢が叫ぶ。


「北の村で魔獣被害!」


空気が変わる。

男達も舌打ちして離れた。


「ちっ、仕事かよ」


「命拾いしたな嬢ちゃん」


「そっちでしょ」


「言うねぇ……」


また空気が悪くなる。

でも今度は受付嬢が怒鳴った。


「遊んでる暇あるなら出発してください!!」


男達はぶつぶつ言いながら去っていく。

つめは小さく息を吐いた。


「……助かった」


「全然反省してないって顔してるね」


ガルドが呆れたように言う。


「いやだって感じ悪くない?」


「まあ相手も感じ悪かったけど」


「でしょ?」


「でもつめ、煽るのが上手すぎるよ」


「褒めてる?」


「褒めてないよ」


ガルドは肩をすくめた。

そして。


「……でも」


「?」


「怖いなら、最初からそう言えばいいのに」


つめは少し固まった。


「別に怖くないし」


「はいはい」


ガルドは流した。

それが少しだけ、楽だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ