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『異世界でも、また私だけが叩かれるらしい』  作者: シェイプシフター
第六章 魔導学園・無許可聖具編
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第51話 禁止の余波

大会会場は、まだ騒がしかった。

教師達が慌ただしく動いている。


負傷者搬送。

結界確認。

観客誘導。


でも。

誰も落ち着いていなかった。


「今の見たか!?」


「魔物出たぞ!?」


「やっぱEクラスやばいって!!」


恐怖。

なのに。

興奮している。


つめは、その空気が少し気持ち悪かった。


エルトは担架で運ばれていく。

完全に意識はない。

つめは少しだけ目を伏せた。


「……私のせいかな」


フィオナが即座に言う。


「違うわよ」


でも。

言い切れない空気だった。

ミレイだけが、黙ってエルトを見ていた。


教師達が怒鳴る。


「大会は一時中断だ!!」


でも。

観客席は、まだざわついている。


怖がっている。

なのに。

どこか楽しそうだった。


その時。


「失礼」


低い声。

つめ達が振り返る。


クロードとシエルだった。

周囲の空気が少し変わる。


生徒会。

しかも、この二人。

観客席の生徒達まで小さくざわついた。


クロードが真っ直ぐ言う。


「カノ・フィオナ・ミレイ・ガルム」


「生徒会室まで同行を頼む」


有無を言わせない声だった。


ミレイが小さく笑う。


「えー、私も?」


「関係者全員だ」


クロードは淡々としている。

シエルだけが、じっとつめを見ていた。

観察するみたいな目。


つめは少し嫌そうな顔をする。


「……絶対めんどいやつじゃん」


「でしょうね」


フィオナがため息をついた。


廊下を歩く。


途中。

まだ今日の試合の話が聞こえてきた。


「青い炎見た!?」


「魔物やばかったよな」


「次どうなんの?」


誰も。

冷めていない。


むしろ。

熱は広がっている。


つめだけが、その空気に少し寒気を覚えていた。



生徒会室。


空気は重かった。

机の上には、回収された護符。

クロードが腕を組む。


「先ほど、大会再開は決定した」


「だが、このまま放置は出来ない」


教師が頷く。


「魔物発生前」


「会場全体の魔力流動が異常だった」


シエルが静かに資料をめくる。


「発端は、カノの試合後です」


空気が少し止まる。

つめは黙ったまま。

シエルは続ける。


「未知の炎。

 異常出力。

 長詠唱。

 その直後に、エルト・シェーファーが暴走。

 関連性を疑うには十分です」


ミレイの顔が少し強張る。


クロードが、つめを見る。


「単刀直入に聞く」


「君の力は、本当に護符と無関係か?」


つめは眉を寄せた。


少しだけ。

心当たりはある。

因習村。

穢れ喰らい様。


でも。


「……知らない」


少し間。


「……ううん、わかんない」


シエルは感情を変えない。


「ですが、類似点が多すぎる」


その時だった。


「違うよ」


皆が振り返る。


入口。


レイン・アルヴェルトが立っていた。

教師が顔をしかめる。


「またお前か」


レインは気にしない。

つめを見る。


それから。

小さく首を横へ振った。


「カノは違う」


断言だった。

空気が止まる。

クロードが低く聞く。


「なぜそう言える」


レインは少し考える。

それから。

机の上の護符を見る。


「これ」


「悪意が巻いてあるんだよね」


意味不明だった。

教師達が顔をしかめる。


でも。

レインは続ける。


「カノのは違う」


「もっと別」


シエルが静かに目を細める。


「……根拠は」


「なんとなく」


教師が頭を抱えた。


でも。

レインだけは妙に確信していた。


「護符は、人の感情に引っ張られてる感じ」


「でもカノのは逆」


つめだけ。

少し嫌な顔をする。

レインは窓の外を見る。

まだ騒がしい。


歓声。

噂。

熱狂。

全部。

学園中へ広がっている。


「今の学園さ」


「すごく火事の現場に似ていない?」


シエルが静かに立ち上がる。


「……なら確かめましょう」


クロードが眉を寄せる。


「シエル?」


シエルの視線は、つめへ向いていた。


「あなたの力が護符由来でないなら」


「再現性がないはずです」


少し間。


「模擬戦をお願いします」


つめが嫌そうな顔をする。


「いやなんだけど」


「拒否権はあります」


シエルは淡々と言った。


「ですが」


「もしあなたが原因だった場合、放置は出来ません」


空気が重くなる。


その時。

ミレイが小さく口を開いた。


「……護符、禁止になるの?」


教師が頷く。


「学園内での使用は禁止だ」


ミレイの表情が、一瞬だけ固まった。


でも。

すぐ笑う。


「そっか」


誰も気づかなかった。

つめ以外は。



夜。


学園寮。

廊下のあちこちで、まだ今日の話が続いていた。


「魔物出たんだろ?」


「護符ヤバすぎ」


「でも力は本物だったよな」


「なんか、核を飲むともっと強くなるって噂あるぞ」


「は?」


「都市伝説だって」


笑い声。


けれど。

皆どこか本気だった。



部屋。


ミレイは一人だった。


机の上。

自分の護符を見る。


護符禁止。

つまり。

次からは。

“素”になる。


ミレイは唇を噛んだ。


「……無理」


今の視線。

今の注目。

失いたくない。

頭の中に、さっきの噂が残っていた。


――核を飲み込めば。


護符以上の力を得られる。


エルトは壊れた。

魔物まで出した。


危険。

そんなの分かってる。


だけど。

ミレイは護符を握りしめた。


「……見て、ほしいよね」


小さく。

笑った。

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