表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『異世界でも、また私だけが叩かれるらしい』  作者: シェイプシフター
第六章 魔導学園・無許可聖具編
PR
51/93

第47話 捨て駒

王立リスティア魔導学園、朝。


学園全体が妙に浮ついていた。


大会前。

順位予想。

賭け。

人気投票。


廊下では、

どのクラスが勝つだの、

誰が落ちるだの、

そんな話ばかりが飛び交っている。


Eクラスの教室へ入ると、教師がだるそうに黒板へ紙を貼っていた。


「編入組は知らねぇだろうから言っとく」


つめは席へ座りながら顔を上げる。

教師は振り返らないまま言った。


「Eクラスは大会で結果残せなきゃ切られる」


教室が少し静まった。

つめが眉を寄せる。


「……切られる?」


「除籍」


リオンが軽く答える。

慣れている声だった。

教師は面倒そうに続けた。


「正確には“可能性なし”判定だ」


「勝てなくてもいい」


「上が“残す価値ある”と思えば残れる」


リオンが嫌そうに顔をしかめる。


「要するに見世物」


「学園ってそういうもんだ」


教師は黒板を軽く叩いた。


「あとEだけ特別だと思うなよ」


「CもDも落ちる」


「逆にEから上がる奴もいる」


「だから皆必死なんだ」


その言葉に、エルトだけが小さく俯いた。


机の下。

手が少しだけ強く握られている。


教師が対戦表を指した。

その瞬間。

教室が固まる。


「……は?」


リオンが素っ頓狂な声を出した。

フィオナも露骨に顔をしかめる。


「ちょっと待ちなさい」


対戦カードが露骨だった。


EクラスはA上位。

DクラスはBクラス。

本来なら、実力の近い者同士が当たる。


なのに。

今年だけ。

まるで。

“魅せる”ための組み合わせになっていた。


「こんなの調整試合じゃない」


フィオナが低く言う。

リオンが鼻で笑った。


「露骨すぎだろこれ」


つめは対戦表を見ながら、小さく呟く。


「……炎上企画じゃん」


昼休み。


廊下では、すでに大会の話題で持ちきりだった。


「今年のE終わってね?」


「Aと当たるとか事故だろ」


「でもちょっと見たい」


笑い声。

野次。

期待。


つめは廊下を歩きながら、妙に視線を感じていた。


好奇。

嘲笑。

下克上期待。

色んな感情が混ざっている。


その横で、ミレイは妙に機嫌が良かった。

白いアクセサリーがまた増えている。


「逆に目立てるくない?」


「負け役の発想」


リオンが即答する。

ミレイは笑った。


「でも見られた方が勝ちじゃん」


つめだけが少し嫌そうな顔をする。


最近。

ミレイの動きが少しずつ大きくなっていた。


髪を払う仕草。

笑う角度。

立ち方。

全部。


どこか。

“演技っぽい”。


その頃。

エルトは一人で対戦表を見ていた。

不安そうな顔。


制服の内側へ触れると、少しだけ呼吸が落ち着く。

護符。

エルトは小さく呟いた。


「……勝たないと」


中庭。


ベンチの上で、レイン・アルヴェルトが寝ていた。


Eクラスが横を通る。

片目だけ開く。


「あ、ポーンにされたクラス」


リオンが眉を寄せる。


「どういう意味だよ」


フィオナも不機嫌そうだった。


「一番弱い駒って馬鹿にしてるの?」


レインは少し考える。

それから。

眠そうな顔のまま笑った。


「でも」


「ポーンだけが好きな駒になれる」


少し間。


「一番面白いよね」


つめが眉を寄せる。


「……何が面白いの」


レインは空を見る。


「プロモーションする瞬間?」


冗談みたいな声。


でも。

目だけは。

ちゃんと見ていた。


つめの背中へ、嫌な汗が流れる。

何も興味なさそうなのに。

あれは。

“見てる”


レインは小さく欠伸をした。


「じゃあ僕は行くよ」


ゆっくり立ち上がる。


「あとは本番でしょ」


そう言って去っていく。

つめだけが、少しだけ身構えたままだった。



ノクト視点――


放課後。


王立リスティア魔導学園、研究棟。

古い研究室。


机の上には、大量の資料と護符が散らばっていた。

ノクト教授は、静かに対戦表を見ている。


「本来なら実力の近い者同士を当てる」


紙をめくる。


「だが、それでは観測が弱い」


机の上。


格差。

嘲笑。

下克上。

熱狂。


全部。

観測を強くする。


ノクトは少し笑った。


「勝っても、負けても、魅せやすい」


視線を落とす。


「低クラスほど出力が伸びている」


「観測されているからだ」


その時。

ノクトは少しだけ振り返った。


研究室の奥。

ローブ姿の人物が、黙って立っている。

顔は見えない。


ただ。

窓の向こう。

大会会場を見ていた。


ノクトは小さく笑う。


「これが君の目的にも合っているんだろう?」


返事はない。

ローブの人物は動かない。


ただ。

静かに会場を見ていた。



つめ視点――


夜。


つめは一人で大会会場を見上げていた。


歓声。

期待。

視線。


胸の奥で、黒い風が小さく揺れる。


ざわ。


つめは振り返る。

誰もいない。


でも。

確かに。

“見られている”。


学園全体が。

何かを待っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ