第24話 空気の変化
翌日。
「……いた」
ギルドへ入った瞬間、つめは顔をしかめた。
また見られてる。
昨日より増えてる気がする。
ひそひそ声。
視線。
笑い。
「例の」
「祠壊し」
「黒髪の」
普通に聞こえる。
「……最悪」
でも。
どくん。
少しだけ身体が軽かった。
「つめさーん!」
昨日の若い冒険者達だった。
三人。
全員つめより少し年下くらい。
「また話聞かせてくれよ!」
「怪物マジで目いっぱいあった?」
「祠ってどんな感じだった?」
距離が近い。
つめは少し戸惑った。
「……なんなのあんたら」
「いや普通に気になるし」
「つめさん有名人じゃん」
「やめて」
でも。
悪い気はしなかった。
つめは少しだけ胸を張る。
「まあ、普通の人なら死んでたと思う」
「おお」
「ガルド達いなかったら無理だったけど」
「でも最後戦ってたんだろ?」
「まあ……ちょっと」
ちょっと盛った。
でも完全に嘘じゃない。
若い冒険者達は楽しそうに聞いてくる。
その時。
「朝から騒がしいな」
低い声。
中年冒険者達だった。
昨日酒場にいた連中。
「またお前か」
「……なに」
「新人の癖に悪目立ちしすぎなんだよ」
空気が少し張る。
若い冒険者達が気まずそうに黙った。
「別に目立ちたくてやってないけど」
「でも揉め事ばっかだろ」
「村でもギルドでも」
「空気悪くする奴っているよなぁ」
くすくす笑い。
つめの眉がぴくっと動く。
どくん。
また身体が熱くなる。
「……で?」
「は?」
「だから何?」
周囲が静かになる。
「嫌なこと見ても黙ってろって?」
「空気守るために?」
「極端なんだよお前は」
「極端なのそっちじゃん」
また空気が止まる。
その時だった。
「……すみません」
小さな声。
受付前で、若い女冒険者が頭を下げていた。
革鎧。
初心者っぽい。
受付嬢が困った顔をしている。
「だからぁ、三回連続失敗はちょっとねぇ」
横にいた男冒険者が鼻で笑う。
「向いてないんじゃね?」
周囲もくすくす笑った。
女冒険者は顔を赤くして俯く。
「……」
つめの眉が動く。
まただ。
誰か一人を、空気で押し潰す感じ。
「おい」
つめが口を開く。
ガルドが嫌そうな顔をした。
「やめなさい」
「なんで?」
「今のあんた絶対ろくな顔してない」
でも。
つめはもう止まれなかった。
「失敗したら笑っていいルールあんの?」
しん。
受付前の空気が止まる。
男冒険者が顔をしかめた。
「は?」
「いや普通に感じ悪いなって」
「関係ないだろ」
「あるけど」
つめは女冒険者を見る。
まだ俯いてる。
周囲は見てるだけ。
因習村と同じだった。
「新人なんでしょ?」
「……だから」
「最初から完璧な奴いる?」
「……」
「失敗した奴囲んでニヤニヤしてる方がダサくない?」
ざわっ。
空気が荒れる。
「あーあ」
ガルドが頭を押さえる。
若い冒険者達は、ちょっとわくわくした顔をしていた。
完全に見世物を見る顔。
どくん。
また身体が軽くなる。
つめは、その感覚に気づかないふりをした。




