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第14話 祠の奥

赤い目が光った。


「――ッ!!」


次の瞬間。

黒い影が祠の奥から飛び出してくる。


「きゃあああ!!」


村人達が悲鳴を上げた。

つめも反射的に後ろへ飛び退く。


狼型の魔獣。

昨日見た奴より小さい。


でも近い。

怖い。


「なんでいるのよ!?」


魔獣が唸る。

女の子が泣き崩れた。

老人は顔面蒼白。


「そ、そんな……封じは……!」


「封じ?」


つめは目を見開く。


その瞬間。

魔獣が女の子へ飛びかかった。


「危なっ!!」


つめは咄嗟に女の子を突き飛ばす。

代わりに自分が倒れた。

爪が肩を掠める。


「っ痛!!」


熱い。


裂けた衣装から血が滲む。

魔獣が牙を剥いた。


近い。

臭い。


(無理無理無理!!)


死ぬ。

今度こそ本当に。

その時。


ひゅっ!!


矢が飛んだ。

魔獣の目に突き刺さる。


「グルァァァッ!!」


「つめ!」


ルカだった。

後ろにはガルドとミリもいる。


「何やってんのよあんた!!」


ガルドが叫びながら突っ込んでくる。


「いやだって子供が!!」


「だからって一人で行く!?」


ガルドの短剣が閃く。

魔獣の脚を切り裂く。

ミリが杖を向けた。


「……燃えて」


ぼっ!!

火球が炸裂する。

魔獣が悲鳴を上げた。


「村人は下がって!」


ルカが叫ぶ。


でも。

村人達は動かなかった。


いや。

動けなかった。


祠を見ている。

怯えた顔で。


「……なにあれ」


つめは息を切らしながら言う。

老人が震える声で呟いた。


「祠の主だ……」


「は?」


「昔より、村の穢れを喰らってくださっていた……」


つめは意味が分からなかった。


「いや普通に魔獣じゃん!!」


「黙れ!!」


老人が怒鳴る。

目が狂気じみていた。


「お前が儀式を邪魔したからだ!!」


「はぁ!?」


「捧げ物が必要だったのに!!」


つめは一瞬、言葉を失う。


その隙に。

魔獣が再び飛びかかった。


「つめ!!」


ガルドの声。

間に合わない。

つめは反射的に腕で顔を庇った。


その時。


どんっ!!


誰かが突き飛ばした。


「え……」


昼間の女の子だった。

代わりに転ぶ。

魔獣が牙を向ける。


「っ!!」


つめの頭が真っ白になる。

考える前に動いていた。


「このっ!!」


近くの松明を掴む。


熱い。

でもそのまま魔獣へ突っ込んだ。


「うあああああッ!!」


火を押し付ける。

魔獣が怯んだ。


ガルドがその隙を逃さない。


「ルカ!」


「任せて!」


矢。

火球。

短剣。


数分後。


魔獣はようやく地面へ崩れ落ちた。


静寂。

つめはその場へ座り込む。


「はぁ……っ、はぁ……」


怖かった。

本当に。

手が震える。


ガルドが近づいてくる。


「馬鹿」


低い声だった。


「……ごめん」


「なんで一人で行ったの」


「だって気になったし……」


「死ぬよ」


「……」


その言葉に、つめは少し黙る。

異世界へ来てから。

命が軽いとは感じていたけど、初めて死の間際を実感した。

自分、本当に簡単に死ぬんだ。


その時。


「……ありがとう」


小さな声。

女の子だった。

涙目でつめを見ている。


「助けてくれて……」


つめは少し目を逸らした。


「……別に」


本当は怖かった。


でも。

見捨てる方が、もっと嫌だった。

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