第二十四章 竜虎相搏つ
閉ざされた広間で、ふたつの力がぶつかり合った。カグツチの力は封じられている。それでも彼は、今なお火の神だった。そして向かいに立つのは、王その人の筆頭宮廷魔導師。王国最強の魔導師だ。
円蓋の下に、本物の嵐が生まれようとしていた。
オルトヴィンは、カグツチにならった。呪文書に置いていた手の指先で、装丁の結晶に触れる。
石は、なかなか応えなかった。そこで魔導師は、目を覚まさせようと、少しずつ魔力を流し込み始めた。
(お前は、気まぐれが過ぎる……)
オルトヴィンは、胸の内でつぶやいた。
結晶が震え、緑に輝いた。呪文書が腰から離れ、ベルトに鎖でつながれたまま、氷の魔導師のそばに浮かび上がった。
これで、もう片方の手も空いた。オルトヴィンが目もやらずに手のひらをひと振りすると、ページがひとりでにめくれ、ざわめいた。そして、ぴたりと止まる。魔導師は己の力で術式を読み取り、声に出すのは呪文の名だけだった。そのあいだも、相手から目を離さない。
同じころ、カグツチは空いた手で杖の結晶に触れ、話しかけていた。
「ん? 自分の魔法の力を、全部見せたいって?」
火の神は頷きながら、耳を傾けている。彼が黙るたびに、杖頭の石はひときわ強くまたたいた。
「お前に、任せてみるか?」
カグツチは重いため息をつき、結晶を撫でた。それからオルトヴィンへ目を上げると、眼窩の熾火が燃え上がった。
「俺抜きで、攻められるか?」
杖が、せわしなくまたたいた。
「よし」
橙色の炎が薄い膜となってカグツチを包み、杖へと移っていった。火の神が指を開くと、杖は主のそばに浮かんだ。
二人の魔導師は互いを見据え、力を溜めていく。結晶はそれぞれの色で、いよいよ明るく燃え立った。
先に口を開いたのは、オルトヴィンだった。短いひと言。手のひらの下のページが、緑に光った。
彼の足もとから、霜が石の上を駆け抜けた。またたく間に場は氷の膜に覆われ、それは手近な柱を円蓋まで這い上がった。皆の息が、白くなった。
次のひと言。場の上の宙から、氷の槍がじかに生え始めた。はじめは数本、やがて何十本も。オルトヴィンがわずかに指を動かすと、槍は一本残らず、穂先をカグツチへ向けた。三つ目の言葉とともに、槍が一斉に放たれた。
カグツチは、身じろぎもしなかった。代わりに応えたのは、杖だった。
杖頭の結晶が燃え上がり、杖が宙でくるりと回った。そこから火の玉が次々と、途切れることなく撃ち出された。火の玉は、場の真ん中で槍を迎え撃った。氷は乾いた音を立てて弾け、炎は消え、二人のあいだに白い湯気の壁が垂れこめた。
それでも、何本かの槍は抜けてきた。だが、一本も届かなかった。カグツチを薄い橙の膜となって包む熱にぶつかり、彼の一歩手前で溶けて消えた。
杖は、せわしなく、得意げにまたたいた。
「調子に乗るなよ」
カグツチは、小声でたしなめた。
そのあいだにも、オルトヴィンはもう次のページをめくっていた。ページはめくれ、止まり、またひらめく。魔導師の唇は、ほとんど声もなく動いていた。
カグツチは一歩踏み出し、湯気の中へまっすぐ入っていった。足もとの氷が音を立てて溶け、濡れた足跡が残った。
ハラルトは組んでいた指をほどき、わずかに身を乗り出した。見ていたのはカグツチではない。どこを撃つかを自分で選んでいる、杖のほうだった。
「自分で、戦っておる……」
王は、低くつぶやいた。
そして、また背もたれに身を預けた。だが、指はもう組まなかった。
カグツチは振り返らず、唇も動かさなかった。オルトヴィンに聞かれぬよう、命令は心の中で下した。
(援護しろ。俺が近づく)
杖頭の結晶が、応えるようにまたたいた。
杖は少し高く浮かび上がり、炎の塊を吐き出し始めた。濃く、重く、拳ほどの大きさの塊を。塊は石に当たっては跳ね返り、柱にぶつかってはまた弾け、そのたびに向きを変えた。次がどこへ飛ぶのか、どうやら杖自身にも分かっていないらしかった。
その雨の中を、カグツチは駆け出した。右へ、左へ、ジグザグに走り、絶えず攻める筋を変えていく。塊は脇をかすめ、彼の体にも当たった。だが、自分の炎がカグツチを焼くことはない。彼を包む薄い橙の膜が、明るく燃え立つだけだった。
オルトヴィンは悟った。次がどこから来るのか、読むことはできない。彼は塊を目で追うのをやめ、自分のまわりの温度を下げ始めた。
円蓋の下が、一気に冷え込んだ。湯気は宙で細かな水滴に変わり、水滴は重くなって、氷の魔導師のもとへ集まっていく。オルトヴィンがそれを一度に解き放つと、水の幕が炎へ向かって叩きつけられた。
じゅっ、と音がした。塊のいくつかは宙で消え、ほかのものは勢いを失って逸れた。だが、杖は止まらなかった。炎は次から次へと飛び出し、石に、柱に跳ね返り、跳ねるたびに、ひとつの方向へと正確に引き寄せられていった。
氷の魔導師のほうへ。
オルトヴィンはもう一枚ページをめくり、両腕を左右に広げた。
彼のまわりに、雪のひとひらが現れ始めた。はじめはまばらに、ひとつ、またひとつ。やがてそれは舞い始め、どんどん速さを増して、ついには魔導師を巻く激しい渦となった。
雪は、恐ろしい速さで増えていった。
オルトヴィンは、ぐっと両腕を胸に引き寄せた。そして、すぐさま前へ突き出した。
手のひらを追うように、吹雪が走り出した。冷気と氷雪の分厚い奔流が、壁となって場を横切る。その通り道の石は白い膜に覆われ、流れに呑まれた炎の塊は、ひとつ、またひとつと消えていった。
同時に、オルトヴィンは靴の先に氷の塊を作り出した。蹴る。氷の塊が、カグツチが一瞬後にいるはずの場所へ、先回りして飛んでいく。続いて二つ目。三つ目。
火の神のジグザグを、氷の魔導師はすぐに見抜いた。だからこそ、先回りしたかと思えば当てずっぽうに、拍子もなく、でたらめに蹴った。塊はカグツチのそばの石に食い込み、氷の粒になって砕け散った。あるものは彼の前に落ち、あるものは背後に落ちる。次がどこへ飛ぶのか、オルトヴィン自身にも分かってはいなかった。
オルトヴィンは、わずかに体の向きを変えた。雪の奔流はいまや右手一本で操り、左手で本をめくっていく。ページが、次々に流れていった。魔導師のこめかみを汗がひと筋伝い、そのまま小さな氷の粒になって固まった。
冷気は、カグツチのもとにも届いた。足に食らいつき、肩を締めつけ、一歩ごとに体が重くなっていく。火の神を包む橙の膜が、くすんだ。カグツチは頬骨がこわばるほど歯を食いしばり、己の炎をさらに燃え立たせた。彼を包む炎が、白く変わった。
杖も、すぐに応えた。杖頭の石がいっそう明るく輝き、そこから噴き出す炎は、より濃く、より熱くなった。その性質も、変わっていった。
塊は、相変わらず跳ね返っていた。一度、二度。だが、何度か跳ねたあとは、もう先へは飛ばなかった。床に、柱に、氷の膜に、ぴたりと張りついた。そして、そのまま燃え続けた。下の氷はじゅうじゅうと音を立て、炎は少しずつ横へ広がっていった。
戦いで舞い上がった塵が、張りついた炎の滴に触れるたび、小さな放電がぱっと走った。円蓋の下に、また雷雨の匂いが立ちこめた。
オルトヴィンの結晶が主の意図に応え、ついに眠りから目覚めた。場が、分厚い霜に覆われ始める。霜は石を、柱を、炎の染みを這い、カグツチのもとまでたどり着いた。
火の神の足が、床に凍りついた。彼は、その場に釘づけになった。
荒れ狂う魔法の流れが、四方へ広がっていく。リチャードは王の椅子の後ろに立ち、深く息を吐いた。彼と王のまわりに、見えない繭が生まれたかのようだった。その中へは、何ひとつ入ってこない。魔法さえも。
ハラルトは振り返り、リチャードを見た。その顔は、少しも揺らいでいなかった。
「便利なものだな」
王は、それだけ言った。
二人の魔導師は、もはやまわりで何が起きているのか、気にも留めていなかった。戦いに、すっかり呑まれていた。
オルトヴィンは左手を上げ、手のひらを下にして後ろへ引き、指をまっすぐに伸ばした。指先から、液のような魔力が流れ出す。それはすぐさま結晶となり、重さと大きさを増しながら育っていった。魔導師が手のひらを四分の一だけ回すと、できあがったつららが縮み始めた。縮んで、縮んで、ついには細い氷の矢になった。
吹雪の中で、矢は細く、かすかな音を発し始めた。
オルトヴィンは、手首を返して手のひらを上に向けた。振りかぶりながら体をひねると、矢はその動きに素直に従い、少しずつ手から離れていく。振りかぶった腕が、鋭く前へ振り抜かれた。
矢が、放たれた。はじめはゆっくりと。そのまわりで、霜がぱちぱちと音を立てるほどに。
凍りついたカグツチは、その場から動けなかった。炎を燃え立たせても、足もとの氷はあまりにも遅くしか溶けない。そのあいだにも、矢はどんどん速さを増して迫ってくる。体は芯まで凍えていた。避けるのは、間に合わない。
リチャードは見つめたまま、動かなかった。だが王は両手を上げ、声を張った。
「そこまで。戦いは終わりだ」
その声は、届かなかった。
矢が触れる寸前、杖が光った。柄の先に、ほとんど色のない炎の塊が集まる。杖は宙でひと回りすると、それを渦を巻く軌道で、障壁の縁すれすれを走らせ、まっすぐオルトヴィンへ放った。
氷の魔導師は、右から迫る炎を見ていた。右手で矢も、冷気と雪の奔流も操っているせいで、わずかに身をそらすことしかできない。術から意識を逸らすことは、集中が許さなかった。そこで彼は、息を吐くのに合わせて、右手の奔流をほんの一瞬だけ緩め、炎から頭を下げた。
その一瞬で、十分だった。カグツチを縛る氷が緩み、腕が再び動くようになった。火の神は、ぐっと両の拳を握りしめた。
床に、柱に張りついていた炎の塊が、放電をまとったものも残らず、一斉に撃ち出された。灼熱の炎の濃い弧となって、それらは寸分違わずオルトヴィンを打った。四方から、逃げ道ひとつ残さずに。弧は、次から次へと飛んでいった。
そして氷の矢は、もうほとんどカグツチ本人に触れかけていた。
(調子に乗りすぎだ……)
リチャードは悟った。二人とも、もう自分を抑えられていない。彼は、ハラルトの耳もとに身をかがめた。
「陛下、お許しを……」
彼は指を鳴らす形にした手を前へ伸ばし、手のひらを魔導師たちへ向けた。
「急いで、耳をおふさぎください」
ハラルトは逆らわず、すぐさま両手で耳をふさいだ。
リチャードが、指を鳴らした。
鋭く、耳をつんざく衝撃波が、飛び交う攻撃を薙ぎ払った。続いて場のすべての魔法が吹き飛ばされ、それと一緒に魔導師たち自身も吹き飛んだ。二人は王の反対側の障壁の壁まで飛ばされ、そこに押しつけられた。
塵は、なかなか収まらなかった。ハラルトはゆっくりと耳から手を離し、しばらく黙って場を見つめていた。ようやく塵が落ち着き、魔導師たちが立ち上がれるようになると、リチャードは障壁を消した。
王は椅子から立ち上がった。その声が、丸天井の下を転がっていった。
「示した忍耐、意志の強さ、そして筆頭宮廷魔導師オルトヴィンに渡り合うだけの魔法の才を鑑みて……」
王は、落ち着いて魔導師たちを見回した。二人とも、ずいぶんとやられている。服はびしょ濡れで、ところどころ焦げ、ところどころ霜に覆われていた。
「……この引き分けをもって、カグツチがこの結晶を持つにふさわしい証としてよかろう」
氷の魔導師は、そのあいだに身なりを整えていた。肩から氷の粒を払い落とし、服を直し、呪文書をベルトに留め直す。それが済むと、王は彼に声をかけた。
「そなたも、異存はあるまいな、筆頭宮廷魔導師?」
オルトヴィンは一礼した。
「はい、陛下。あれほどの機転は、称賛に値します」
ちょうどそこへ、カグツチが歩いてきた。その後ろを、杖が宙を漂ってついてくる。オルトヴィンは、その姿を目で追った。
「伊達に、サファイア級のパーティにいるわけではありませんな」
それから、まっすぐ火の神を見て、目を細めた。
「戦いのあいだずっと、これが全力ではないと感じていましたよ」
カグツチは何も言わなかった。ただ眼窩の熾火が、ほんのわずかに燃え上がった。
二人の魔導師は、王に一礼した。皆が引き上げようとしたそのとき、ハラルトは壁際のマトゥンに気づいた。熊はちょうど目を覚ましたところで、関節が鳴るほど大きく伸びをしていた。
「あれほどの戦いも、そなたらの友の邪魔には、まるでならなかったようだな?」
リチャードは、ただ微笑みで答えた。
皆が出ると、衛兵たちは寝棚や樽や袋を元の場所に戻し始めた。重い両開きの扉が背後で閉じ、閂が柔らかな音とともに、また扉の真ん中に横たわった。
目の前には、また階段があった。今度は、上りだ。
マトゥンは最初の段を見て、それからその上、段が巻いて薄闇の中に消えていくあたりを見上げた。上りたくないのは、見るからに明らかだった。熊は大きく鼻を鳴らし、力を振り絞って、また縮み始めた。子熊はふた跳びでリックの背中に飛び乗り、外套に小さな爪を立てた。
リックは、小さな脇腹がせわしなく上下しているのを感じた。一日に二度目ともなると、この姿はマトゥンにとって、いっそうこたえるようだった。
「しっかりつかまってろ、兄弟」
マトゥンは、布地にいっそう強くしがみついただけだった。
上りも、同じ順だった。先頭に王、次にオルトヴィン、そのあとに一行。鉄の輪の松明は、相変わらず等しい間隔で燃え、そのあいだには、相変わらず闇がたまっていた。ただ、足音だけが、前よりも重く響いた。
一周するごとに、空気は温かくなっていった。壁にはもう霜はない。オルトヴィンは黙って歩き、そこから冷気が漂ってくることも、ほとんどなかった。カグツチはそのあとを、いつもよりゆっくりと上っていく。杖は主の肩のすぐそばに寄り添い、主の呼吸に合わせて、鈍くまたたいていた。
リックはまた、何周目かを数えようとした。そして、またやめた。
ようやく、前方が明るくなった。階段は柱の陰の目立たない扉へと一行を導き、玉座の間から、温もりと昼の光が流れ込んできた。
マトゥンはリックの背中から飛び降りた。もう、まったく力が残っていなかった。元の姿に戻ると、手近な柱のそばに重たげに寝そべり、目を閉じた。少しでも、ひと眠りしようと。
ハラルトは玉座に腰を下ろし、伝令を呼んだ。ほどなく、朝ここにいた者たちが皆、広間へ戻ってきた。衛兵は扉のそばの持ち場につき、そのあとから、マイヤーが遠慮がちに、そっと入ってきた。
王は、手招きで商人を呼び寄せた。
「余が都へ戻ったら、商人ギルドを通じて、そなたらにヒンメルを渡すよう命じておく。前と同じ額をな」
一行は、顔を見合わせた。リックが一歩進み出て、異を唱えようとした。
「ですが、陛下……」
ハラルトは片手を上げ、それだけで彼の言葉をさえぎった。
「これは、すべてではない。そなたらの身分の証となる、ほんの一部にすぎん」
それから王は、肘掛けのクッションを、ぽんと落ち着いて叩いた。
「今日はここまでとしよう。下がってよい……」
王は、火の神へと目を移した。
「それと、カグツチ。余の頼みを、忘れるでないぞ」
カグツチは、黙って頭を下げた。
一行は帰路についた。途中でマトゥンを起こしながら。熊はしぶしぶ起き上がり、大あくびをひとつして、のそのそとあとをついてきた。
屋敷を出るとき、門の衛兵たちが一行に頭を下げた。一行は一瞬まごつき、小さく礼を返した。
帰り道は、行きよりも早かった。通りにはもう人だかりはなく、人々はそれぞれの用事へ散っていた。ときおり誰かが一行に気づいて、手を振るくらいだ。その代わり、通りすがりの子どもたちは、マトゥンを撫でる機会を決して逃さなかった。熊は、鷹揚にそれを許していた。
マイヤーは、重いため息をつき、寂しそうに言った。
「もう、いい時間ですな。宿へ戻って、昼にしましょう」
彼は、自分の腹を軽くぽんぽんと叩いた。
「それで、腹がふくれたら……」
商人は、少し考え込んだ。
「いや、それとも明日に。商人ギルドへは、明日お連れしましょう」
そこから先は、いつもの少しせかせかした足取りで、一行の先に立って歩き、楽しげに口笛を吹いていた。
宿の戸口では、リーゼルが右へ左へと行ったり来たりしていた。待っていたのだ。
遠くに戻ってくる一行の姿を見つけると、彼女は足を止めた。そして、ほとんどすぐに、皆の服の上できらめく徽章に気づいた。言葉にならないほど嬉しかった。それでも彼女はじっと立ったまま、皆が階段を上りきるのを待った。
リックが上がってきたとき、彼女はぴょんと跳び上がり、両腕で彼の首にしがみついた。
「リチャード様……」
リーゼルは、彼の胸に頭をあずけた。
「本当に、嬉しい……」
マイヤーは憤然と、彼女の背中をぽんぽんと叩いた。軽く。
「リーゼル、邪魔をするんじゃない」
それから腹の上で手を組み、もったいぶって続けた。
「我々は、昼食をとりに来たんですからな」
娘は顔を赤らめてリックから離れ、脇へよけた。
「みんな、また夜にね」
そして、誰もが思いもしないうちに、彼女はまた駆け戻ってきた。リックの腕に手をついて跳び上がり、その頬に口づけをした。それから、走りながら叫んで去っていった。
「じゃあね、リチャード様! 私、仕事に行ってきます!」
リックは戸口に立ち尽くしたまま、手のやり場に困っていた。
マイヤーは舌打ちし、真っ先に宿へ入っていった。
「まったく、手に負えん娘だ」
そのあとに、一行の皆が続いた。
リーゼルは通りを駆けていった。その頬は、真っ赤に染まっていた。
第二十四章をお読みいただき、ありがとうございます。
竜虎相搏つ。
結晶を手にした火の神と、王国最強の氷の魔導師。
ついに、本気の戦いが始まりました。
自分で撃つ場所を選ぶ杖。
跳ね返るたびに向きを変える炎。
先回りして蹴り出される、氷の塊。
そして、王の「そこまで」という声さえ届かなくなった二人を止めたのは……指を一度鳴らす音でした。
戦いのあとには、王からの思いがけない言葉と、
宿の前で待っていた、ある娘の小さな勇気も。
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ニック・オッカム




