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無限の影  作者: Nick Occam


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第九章 最初の友

外は深い夜だった。


これほど穏やかな眠りは、リックがずっと前から受け取るべきだった贈り物だった。


だが、良いものは長くは続かない。


眠っていた男は、ゆっくりと目を開けた。


頬を誰かに撫でられているような感触が、眠りを破ったのだ。


手が反射的に横へ伸びる。


指先が毛に触れた。


次に、大きな頭に触れた。


「坊や、飼い主はどこだ?」


答える代わりに、その獣は巨大な舌で彼の顔を舐め始めた。


リックは目をこすり、ようやく自分の上に大きな頭を垂らしている熊を見た。


彼はその獣を優しく撫で、身体を起こそうとした。


すると熊は、リックが支えにできるように頭を差し出した。


「ありがとう、友よ」


リックはその首に腕を回した。


だが、両腕でもようやく抱え込めるほどだった。


「見たところ、君は少しも小さくないな」


毛深い巨体を見回し、男は思わず驚いた。


自分の身長は平均より少し高い程度だったが、熊の肩は彼より頭二つ分ほど高かった。


その時、リックはある違和感に気づいた。


熊からは、運命の糸が伸びていなかった。


糸がないということは、ただ一つの意味しか持たない。


リックの顔に、静かな悲しみが浮かんだ。


「なるほど。だから僕を見ることができたんだね。……気の毒に」


熊は長く吠えた。


大きな声ではなかった。


低く、深く。


まるで言葉ではなく、リックが理解したことそのものに答えているようだった。


やがて熊は片方の前脚を上げ、ある方向を示した。


「道を教えてくれているのか?」


熊はうなずき、リックが背に乗りやすいように身を伏せた。


「ありがとう、友よ。でも、それくらいなら自分で乗れたよ」


リックは慎重に熊の背へ上がり、厚い毛を軽く叩いた。


熊は立ち上がり、マーカスのいる方向へ歩き出した。


「今、この世界で何が起きているのか、教えてくれるか?」


熊は言葉では答えなかった。


首の向き。


短く低い唸り。


重い前脚の動き。


巨大な身体に走る、わずかな緊張。


彼は、そうやって答えた。


そしてリックは理解した。


言葉ではない。


意味を。


進むにつれて、この世界が思っていた以上に変わってしまったことが、少しずつ見えてきた。


「つまり、これはマーカスの仕業か……世界中が超人だらけになっている」


リックは片手で頭を押さえ、首を横に振った。


熊の答えは、彼を困惑させるには十分だった。


「本人が言っていたはずなのに。大いなる力には、大いなる責任が伴う、って」


前日に手帳を読んだ時、リックはマーカスの過去にも少しだけ目を通していた。


兄は、その言葉を何度も口にしていた。


時間は、気づかないうちに過ぎていった。


やがて太陽が地平線の向こうから顔を出し、柔らかな光で周囲を照らし始める。


彼らはかなりの速さで進んでいた。


全力で走る人間に近い速度だった。


それでも、傍から見れば熊は歩いているというより、滑るように進んでいるように見えただろう。


それほど一歩一歩が滑らかだった。


小さな村を通り過ぎた時も、誰も彼らに気づかなかった。


ほとんど、誰も。


リックがそのまま家々の前を通り過ぎようとした時、澄んだ子どもの声が聞こえた。


「ママ、見て! 大きな怪物が走ってる!」


四歳ほどの女の子が、母親に手を引かれて歩いていた。


彼女は振り返り、リックたちを見て、動きを止めた。


小さな顔に、あまりにも純粋な驚きが浮かぶ。


彼女はその場で跳びはねながら、遠ざかっていく二つの影を指差した。


「やめなさい、エリ」


母親は疲れた声で言った。


「また何かが見えたのね」


彼女は娘が指差す方向を見た。


母親にとって、そこには何もなかった。


「ほら、見てごらん。何もいないでしょう」


「いるもん!」


女の子は頑固に言った。


「大きいの! すごく大きいの! 熊さんみたいで、その上におじさんが乗ってるの!」


母親は少し厳しく言おうとして、言葉を止めた。


娘は母親の手を強く握っていた。


見たものを必死に伝えようとするその顔に、苛立ちより先に不安が浮かんだ。


リックは彼女たちに気づいた。


彼は振り返り、遠くから女の子に手を振った。


エリは目を大きく開いた。


最初は、自分に気づいてくれたのだと信じられなかった。


だが次の瞬間、その顔に明るい喜びが弾けた。


すぐに恥ずかしくなったのか、彼女は母親の手の陰に隠れた。


「ママ、聞いて!」


彼女は慌てて話し始めた。


言葉は少し乱れ、手は熊の大きさと、その背に乗っていた人の姿を必死に示している。


「あんなに大きかったの! 熊さんみたいで! それで、おじさんが……おじさんが手を振ってくれたの!」


母親は何もない道を見た。


それから、もう一度娘を見る。


言い争うことはしなかった。


「ええ、そうね。私にも見えたわ」


エリは固まった。


「ほんと?」


「ほんとよ」


「おじさんも?」


母親は柔らかく笑った。


けれど、その指は小さな手を心配そうに握りしめていた。


「おじさんも」


子どもの喜びは、それだけで十分だった。


だが突然、エリが咳き込んだ。


最初は小さく。


すぐに、それは強くなった。


発作は瞬く間に重く、荒いものになった。


エリは身体を折り、胸を押さえ、息を吸おうとした。


けれど咳は止まらなかった。


母親の顔から血の気が引いた。


「エリ……」


彼女は素早く薬を取り出し、娘に飲ませた。


咳は少しずつ弱まっていった。


母親は娘の前に膝をつき、口元を拭い、震える指で乱れた髪を整えた。


「いい子ね。少し驚きすぎただけよ。急ぎましょう。お医者さんに遅れてしまうわ」


「うん」


エリは、何も怖いことなど起きなかったかのように、明るい声で答えた。


リックは止まらなかった。


それでも、しばらくの間、彼の視線は母娘のほうに残っていた。


やがて熊は、彼をさらに先へ運んでいく。


「友よ。マーカスが動き始めたのを感じる」


熊は、耳を澄ませるように頭を少し上げた。


「速く進めるか?」


相棒は小さくうなずいた。


「頼む。急いでくれ。兄のそばに、弱くない誰かがいる」


彼の最初の友は、嬉しそうに吠え、勢いよく速度を上げた。


今や彼らは、風の翼に乗って駆けていた。


リックの髪が風に揺れる。


そして彼は、不意に歌い始めた。


「風のある場所に、

悲しみはない。

ただ信じてくれ。

必要な時に、僕は行く」


目的地へ急ぐ途中で、リックは異変を感じた。


その顔が、すぐに真剣なものへ変わる。


「何か起きそうだ」


彼は警戒し、最悪に備えた。


「ありがとう、兄弟。散歩はここまでだ。ここからは、僕が連れていく」


彼にとって、空間の織り目を踏み越えることは、もう慣れたものになっていた。


速度を落とさないまま、二人は水の中へ潜るように空間へ沈み、その場から消えた。


空気には、かすかな波紋だけが残った。


サリー州の学校近くに、二人の屈強な男が現れた。


一人は、武僧の装いをしていた。


もう一人は、まるで浜辺からそのまま出てきたかのような姿だった。


海水浴用の短パン。


軽いシャツ。


サンダル。


そして、サングラス。


二人とも、周囲の人間には見えていなかった。


「ニック、彼はもうすぐ来る」


武僧が言った。


「そうだな、兄さん。すぐに結界を張って、生徒たちを守らないと」


二人は警戒した。


学校の敷地には、あまりにも多くの子どもたちがいた。


休み時間はもう終わっている。


だが、いじめっ子たちはまだ立ち去っていなかった。


「マーク。片づいたら、あいつらの親を呼ばないとな」


浜辺の格好をした男が、サングラスを少し持ち上げた。


その目には、怒りが宿っていた。


だが、その怒りは子どもたちへ向けられたものだったのか。


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


作品を気に入っていただけましたら、下部の評価(★★★★★)やブックマーク登録で応援していただけると幸いです。

皆様の反応が、今後の執筆の大きな支えとなります。


次回もよろしくお願いいたします。

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