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衝撃の発言

開いた口がふさがらなかった。フウミはやっと戻ってきたタウマ姫の姿を見て、驚きを隠さなかった。


小麦色に焼けた肌。少しふっくらとしたいで立ち、これまで心血を注いでお育て申し上げた姫様の姿は、どこにもなかった。


……まるで、大切なものを汚されたような心持がした。泣きたかったが、涙も出なかった。その直後から、シェン――国王に対して、猛烈な憎しみが噴き出してきていた。


エルドライでは女性は、白い肌に細身の体というのが美人の条件とされている。それは、前皇帝、現在の大帝の好みが反映されているのだが、とりもなおさず、帝国ではそれが美女の条件とされている。


フウミはその大帝陛下の考えを至上としていた。大帝陛下に褒めていただくために、彼の好みに合う女性とするために、心血を注いでタウマ姫を育ててきたと言って過言ではなかった。


それが功を奏してか、大帝陛下はタウマ姫を痛く気に入ってくれた。掌中の珠とまで言っていただいた。陛下には多くの子女がいらっしゃるが、その中でも最も愛情を注がれたのが、このタウマ姫であった。


その姫様が、よりにもよってブライアル王国の王太子に嫁ぐことになった。先王の妾腹の子で、城外で育った者に、だ。それだけ見ても沙汰の限りではあるが、ブライアルは大国だ。国としての視点で見れば、この国をエルドライに取り込むというのは、得策であると言えた。


出立前にフウミは大帝に呼ばれ、ブライアルのシェン王太子を骨抜きにせよと命令されていた。彼女は、自分がお育て申し上げた姫様の美貌に絶対の自信を持っていたし、大帝陛下も、この姫を見れば、どんな男であれ、心を奪うであろうと太鼓判を押していた。


確かに、まだあどけなさの残る姫に閨を強いるのは心苦しくはあったが、フウミの頭はあの、大帝陛下に褒めていただきたいという思いが勝っていた。


しかし、ふたを開けてみれば、王太子・シェンは姫様に手を付けるどころか、閨を三日に一度などと言ってくる有様だった。閨を終えて部屋に戻った姫に、夜の有様を聞いても、ただ、寝ていたというばかりで埒が明かなかった。それなりの衣装を着せて閨に送っても、その衣装が乱れていることはなく、そのままで帰されてきていた。それを見るにつけ、フウミは何とも言えぬ悔しさを感じていた。自分がお育て申し上げた姫様に、魅力が足りないのか、と。


一方で、彼が心を寄せている妃・フィリアは、小柄ではあるが、丸みを帯びた体で女性らしい女性と言えた。彼女を見て目を引くのが、眼だった。いかにも知性を帯びた眼だった。その眼と共に、凛とした佇まいは、辺りを払う気品を醸し出していた。だが、どう贔屓目で見ても、姫様が彼女に劣っているとは思えなかったのである。


その姫様は、まるで連れ去られるようにして、即位式が終わると離宮に連れられて行った。フウミはすぐに人をやって姫を取り戻そうとしたが、ロースマイに皇帝陛下の書状を突きつけられて動きを封じられてしまった。そのすぐ後に彼女は皇帝ではなく大帝陛下に早馬をやって、この件を報告した。そして、何人たりともフウミの許可なくして姫の様々に立ち入ることを禁じる命令を出して欲しいと要請していた。ただ、そこにはロウロも同行していると聞いて、彼女は何とかして留飲を下げた。彼女ならば、何かあれば報告して来るであろうし、陛下と姫様の間を取り持つのではないかという淡い期待も持っていたのだった。


だが、待てど暮らせどロウロからの報告はなく、出発から一週間たって、やっと姫様は戻ってきた。戻っては来たものの、この有様だ。さらに姫はまたすぐにでも離宮に行きたいという。まさにフウミとしては、すべてが予想外で、空いた口がふさがらなかったのである。


まるで人が変わったかのように、タウマ姫は喋り倒した。そこからは、毎日日光の許で遊び、場合によっては、釣った魚を焼き、毒見も付けずにそのままそれを食したりもしていた。聞く話のすべてが沙汰の限りであった。よくぞ無事で戻ってきた、と泣いて喜んでも差し支えない仕打ちを受けていたのだ。


「姫様……恐れながら……」


フウミはやっとのことで言葉を絞り出した。今後は、この私の許しなくして勝手なことを為されては困りますと言おうとしたそのとき、姫が驚く内容を話し始めた。


「今夜は陛下がお渡りになるから、とても楽しみ」


「あの……陛下とは……」


「今夜も陛下と一緒に寝るの。お姉さまも来られるかしら? お姉さまともね、また一緒に寝ましょうと約束したの」


「一緒に……寝る? それは……どういう? お姉さまとは?」


「フィリアお姉さま」


「フィリアさまとは、どういう……」


「お姉さまになってもらったの」


「お姉さま?」


「そう。また、陛下とお姉さまと私の三人でしましょうって約束したの」


「何をなさったのです」


「毎日裸になって三人で遊んだの。また、三人で遊ぶの」


「……は? 三人で、裸?」


フウミの時が止まった……。

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