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剣舞②――メイル視点――

父と兄が剣舞を踊ったことを、私は昨日のことのように覚えている。


兄の舞は素晴らしかった。どこをどう見ても欠点などあるはずもないのに、父は気に入らなかった。何度も何度も兄にやり直しを命じた。母にも、一体何が悪いのかがわからなかった。ただ、腰だ腰だと言うだけで、何をどう直せばいいのか、もっと具体的に教えてくださいなと言おうとしたのだが、父の尋常ではない雰囲気に、私たちは口をつぐむしかなかった。


子爵様のお屋敷に出発する直前に踊った兄の踊りは、今でも覚えている。躍動感にあふれた、素晴らしいものだった。だが、父はそれでも気に入らず、兄は号泣していた。あんなに取り乱した兄を見たのは、後にも先にもあのときだけだった。それを見て私も泣いたし、少しだけお父さんのことを嫌いになった。


私から見てお兄ちゃんは、ヒーローだった。困ったときにはいつも、お兄ちゃんが助けてくれた。転んだ時も、村の子供たちにいじめられた時も、いつも兄が助けてくれた。私は、そんな兄が大好きだった。


お兄ちゃんは私に剣の才能があるというけれど、私の剣はただ、お父さんのコピーに過ぎない。決して私はお父さんを超えることはできない。でも、兄は違う。構えても、型によっては兄の方がきれいな場合があるし、剣の振るい方にしても、父よりも剣速が早い場合がある。それは子供のころから垣間見えていた。


忘れられない思い出がある。ある夜、母が父に、兄の型が父のものと違っているから、直してあげたらといっていたことがあった。その母に父が言ったのは、


「それはいけないね。シェンさんは天凜で剣を振るっているのです。天凜をいじっちゃいけないよ」


つまりは、天から授かった才能があるということだ。父を超える才能があるということだ。きっと私は兄の足元にも及ぶことはできないだろう。だったら、早めに剣を諦めた方がいい。


そんな父と兄が再び剣舞を披露するのだと言う。私は正直大丈夫かと思った。あの兄が、どう頑張っても父の眼鏡にかなわなかった。また、同じことが繰り返されるのではないか。また、あんなことがあったら兄は剣を止めてしまうかもしれない。家を出てしまうかもしれない。直感的に私はそう思った。でも、二人は驚くような会話を交わしていた。


「シェンさん、振りは覚えているかい?」


「はい。すっかり覚えています」


「そうかい。じゃあ、稽古は必要ないね」


「……大丈夫です」


私は、兄が気が狂れたのではないかと思った。稽古もなしで、ぶっつけ本番でやろうと言うのだ。私だったら、絶対にそんなことはできない。だが、兄は落ち着いているし、そんな兄を父は満足そうに眺めていた。二人には、男同士でしかわかり合えない、何か不思議なつながりがあるのかもしれない……。



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