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両親との再会

王都から馬車で走ること一日。俺たちは夕暮れ時になってようやくリアネスに到着した。休憩はたった一回で、途中の小さな村で昼食を摂っただけだったので、腰が痛い。ただ、久しぶりに着慣れた服を着ているので、体は動かしやすい。


結構過酷な旅であったにもかかわらず、フィリアは辛いともしんどいともいわずに、淡々としている。それどころか、馬車の中で服を着替えたのだが、彼女は揺れる中それを甲斐甲斐しく手伝ってくれ、あまつさえ、俺が脱いだ服をきちんと畳んで仕舞ってくれた。本当にいい女性を妻に持ったと思う。


メイルとクレストの夫婦も馬車から降りてきた。二人とも特に何ともなさそうだ。


メイルの案内で、親父たちが軟禁されている場所に向かう。リアネスはもともとは砦として建てられた場所であり、大きな川が近いために、徐々に町として発展したという歴史がある。ユアザライ村の人々は、もともと砦として使われていた場所に集められているのだという。


その場所に近づくと、武装した兵士たちの姿が見られるようになった。徐々にその数は増えていき、入り口は四名の兵士が固めていた。


通行証を彼らに見せる。ずいぶん胡散臭そうな顔をしながら確認し、俺たちを首を何度も上下させながら眺めていたが、渋々ながら通してくれた。


指定された場所には、大きな倉庫のようなものが立っていた。どうやらそこに親父たちがいるらしい。


建物の扉を開ける。中は意外に広い。少し薄暗いが真ん中に大きな囲炉裏のようなものが置かれていて、兵士たちもいれば、村人たちもいる。見回してみると……親父とお袋がいた。壁を背にして静かに座っている。尻には、ボロボロの布を敷いている。俺は思わず声を漏らした。


「お父さん、何ですこんな……」


その声に親父が驚いた表情を浮かべながら右手で俺を制した。何と語かと思っていると、奥にいた男たちが立ち上がって、ドスドスを音を立てながらこちらにやってきた。


「オイ、何だ。何か文句でもあるのか? 俺たちゃ、こいつらのために家を作ってやっているんだ。それが出来上がるまでいろいろと面倒を見てやっているのに、何か不足でもあるというのか?」


親父が小さく首を振っている。


「いえ、そういうわけではありません。すみません、気に障ったのであれば謝ります。違うのです。こんなボロ切れを尻に敷いていましたから、何をこんなものを敷いているのかと言おうとしたのです」


「……このジイさんは、いつもこれを敷いている。俺たちも敷物を進めたが、頑として使いやがらねぇんだ」


「そうでしたか。お心遣い、ありがとうございます。あとで親父によく言って聞かせますので」


俺の言葉に納得したのか、男たちはその場を後にしていった。


「お父さん……」


親父に声をかけるが、頭を下げたまま動かない。俺が王太子だからか、喋ろうとしない。いつもであれば、よく来たね、くらいは言うのに、人形のように頭を下げたまま動かない。隣でお袋がオロオロしている。あなた、シェンが帰ってきてくれましたよと言っているのに、それでも微動だにしない。


お袋がハッとした表情を浮かべて、居住まいをただす。小さな声で、殿下にあらせられましては、このような場所までお渡りになり、恐縮でございます、などと言って頭を下げた。


……涙が出そうになった。メイルが前に進み出て、お兄ちゃんよ、お兄ちゃんがお父さんとお母さんに会いに来てくれたのよ、と言っているが、二人は顔を上げない。母親の肩が微かに震えていた。


「お父さん、お母さん……」


メイルが泣きそうになっている。そのとき、フィリアがスッと前に進み出ようとしたが、俺は手で制した。大きく深呼吸をして、ゆっくりと口を開く。


「ジサ・ミイツ・ダンド」


俺の言葉に父の肩が少しだけ揺れた。


「そなたに命じる。余と、以前のように対話せよ。遠慮は無用である。遠慮は余に対する不忠と心得よ。それは、妻・タルネも同様である。これは、命令である」


ややあって、親父がゆっくりと顔を上げて、俺をじっと見た。


「シェンさん、よく戻ってきてくれました」


「お父さん……」


「シェン、よくぞ、戻って……」


「お母さん、戻りました」


母は泣いていた。それを見て、俺も泣いた。メイルも泣いていた。俺は親父とお袋を抱きしめ、何度も返ってきましたと言いながら泣いた。


「……ハハハ、シェンさん、苦しいですよ」


親父の頓狂な声で我に返る。ああ、いつもの親父だ。いつもの親父がいると思うと、なぜか笑いが込み上げてきた。


「そうですね。苦しかったですね。少し力を籠めすぎてしまいました。ごめんなさいお父さん、お母さん」


「いいや、私は全然平気ですよ」


「そうでしたか。それはよかった。ハッハッハ」


「ハハハ」


「アハハ」


先ほどまでの涙模様が嘘だったかのように、俺たちは笑いあった……。

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