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避暑という名の夏休み

王族、と言わず身分の高い貴族は、夏に避暑に出かける習慣があることは知っていた。それは王太子も例外ではないことも確認済みだった。さすがに、王太子になったばかりであり、表向きには、国王の養子になっていることもあるために、国王の許可を得てという条件付きだったが、ようやくそれが出た。


「避暑は五日間を予定しております。こちらは、レルフエルを予定しています」


シェイスは無表情のままそう言った。……あまり俺を休ませたくないのだろうということはわかるが、五日間とは短い。それは移動を含めての五日間かと聞くと、そうだと言う。であれば、実質三日しか休めないことになるので、さすがに逗留期間を五日にして欲しいと言うと、彼はしぶしぶながら、それでよろしゅうございますと言って頭を下げた。


ちなみに、レルフェスは、王都から一日の距離にある場所だ。少し方向は違うが、ユアザライ村に一番近い場所にある。子供のころからそこに王室専用の離宮があることは知っていた。恐ろしく広い敷地があり。俺たちなどは到底近づくことさえできない場所だった。


レルフエルの場所を決めたのは、国王陛下だ。ついこの間、陛下にお目にかかった際に、レルフエルに行ってみたいと言ってみたのだ。それがそのまま叶えられた形となった。


シェイスらはイヤな顔をするかなと思ったが、そんなことはなく、彼らは淡々と、避暑地に向かう準備を始めた。


すぐにその日はやって来た。朝食を済ませると、すぐに出立する。俺がこの城に来て初めての外出だ。あのときは、車寄せからずいぶん長い廊下を歩いたが、今回は俺の部屋から少し歩いたところにある扉から外に出ることができ、そこに馬車は止まっていた。


お供にはシェイスのみ。侍女たちも連れて行ってもいいと言われたが、それは断った。彼女らは彼女らでそれなりに働いてくれている。俺がいない間、里に帰るなり、王都で遊ぶなりして羽を伸ばしてもらうことにしたのだ。それに、レルフエルにも侍女はいるのだそうで、だったらなおさら、彼女らが付いて来る必要はないだろう。


馬車は三台あった。その中の真ん中に俺は乗り込む。シェイスは、姿が見えなかったので後ろに乗り込んだのだろう。前には誰が乗っているのかはわからない。


馬車は王宮を出るとすぐに城壁の外に出た。王都はとんでもなく広いと思っていたのだが、これはどうしたことだろうか。何かあってもすぐに逃げられるように、そういうルートを確保しているということだろうか。


馬車は途中、テオスロイと名乗る侯爵の屋敷に立ち寄って昼食を摂り、少しだけ休息した後ふたたび走り出した。そこで初めて、四人の男が付いてきていることを知った。四人とも知らない男たちだ。どこかで紹介されるのかと思ったがそれもなく、屋敷の主人と夫人が挨拶に出てきたが、あるといえばそれだけで、屋敷の逗留は一時間半程度だった。それでも、レルフエルに到着したときには、陽は傾き、辺りは薄暗くなりかけていた。


「お待ち申し上げておりました」


到着するなり挨拶に出てきたのは、何と妹婿のクレストだった。そう言えば忙しすぎて、この男の存在を忘れていた。何をしていたんだと聞きたかったが、バツが悪いのか、彼は到着時にあいさつに出てきただけで、それ以降は俺の前に出ることはなかった。


屋敷は広大だった。何と、庭に滝があるのには驚いた。険峻な山のふもとにあり、その山からの湧水がそのまま庭に落ちてきていて、そこから川ができていた。なるほどこれは、夏でも涼しく過ごせそうだと感心してしまった。


このレルフエルの屋敷は、国王か王太子でなければ使うことが許されていない場所らしく。そうたびたび使われることはないのだという。それでも、美女たちが控えていて、王宮と何ら変わらない扱いを受けた。もちろん、風呂は一人で入ったし、手洗いにも紙を用意してもらったのは言うまでもない。


クレストは、ここでの五日間は何をしてもよいが、規則正しい生活を送るように釘を刺された。つまりは、毎日六時に起きて、十一時には寝るというリズムを崩すなということだろう。俺はわかったと言うと同時に、この屋敷の造りに感動していた。緑は多く、花畑などもある。さらには、農場までもあり、一体この敷地内に何があるのかを知りたいと言った。彼は馬で廻れば一日で済みますと事も無げに言ったが、まさか馬で一日もかけて廻らねばならない程の規模だとは思わず、呆然とその話を聞いた。


早速翌日に、この屋敷を廻ってみようということになり、俺はそのままベッドに入った。日々の稽古事から解放されたからか、その夜はいつも以上によく眠れたのだった……。

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