来客
その日、俺は山に出かけていた。家の裏山では山菜が豊富に獲れるので、折に触れて山菜採りに出かけることが多い。そこでイノシシなどの獣を狩ることもあるし、川が流れているので、魚を釣ったりもする。ほかの野菜などの食べ物は村の人が分けてくれるので、意外と食うには困らないのだ。
思った以上に山菜が獲れ、野イチゴなどの果実も獲ったので、帰りが遅くなってしまった。日が暮れるまでに帰らないと家族が心配するなと思いつつ、俺は足を速めた。
ようやく家に帰ってきて、やれやれ、ただいまと扉を開けると、そこには予想外の光景が飛び込んできた。
何と、俺の目の前には青い服を着た二人の男が背中を向けて立っており、そのすぐ前で、親父とおふくろが片膝をついて頭を下げていた。
もしや、この二人は王族か、という考えが頭をよぎる。王族を前にする際は、片膝をついて頭を下げねばならない。さもなければ、下手をすると不敬であるという理由で兵士に拘束され、最悪の場合、首を刎ねられることすらあるのだ。
ただ、この二人の格好は王族のものではない。こんな村に王族など来るわけはないし、服の様子から見てこの二人は、よくて王族の従者といういで立ちだ。
ふと、その一人が後ろを振り返った。
目が合った。一切情を感じさせない冷たい目だった。その目を見て、我に返る。両親が片膝をついている相手だ。俺が立ったままでいいわけがない。すぐさま俺は腰を落とした。
「あ、いや、そのままで……」
男が口を開いた。そのときには、男は俺の間合いに入っていた。両手を前に出して、膝をつく必要はないという態度を取ってきたが、それよりも、俺に気づかれることなく、間合いに入ってきたことに衝撃を受けた。
これでも相当に剣の修業はしてきた方だ。ウチの流派ではイキと間を大切にする。攻撃も防御も相手の呼吸を読んで行うし、間合いを大切にする。相手の間合いに入ると斬られる。だから、相手が踏み込んでくると、こちらもそれと同じ距離を下がるというのが基本だ。それは徹底的に叩き込まれたのだが、この男はいとも簡単に間合いを詰めてきた。態勢が崩れていたとはいえ、俺にそんなことができるのは親父くらいだ。ということは、この男は親父と同等の力を持っていることになる。
「恐れ入りますが、あなた様は、シェン様であらせられますか」
男が口を開いた。落ち着いた声だ。変な物の言い方をするなと思いつつ、俺も口を開く。
「左様です。ジサ・ミイツ・ダンドの子息、シェン・ダンド・ミイツと申します。失礼ですが、あなた方は……?」
俺の言葉を聞き終わらないうちに、青い服の男たちが、俺に向かって片膝をついた。
「初めて御意を得ます。私は国王様の近習を勤めますシェイスと申します。以後お見知りおきを。あなた様を、お迎えに上がりました」
……お迎え? それに、国王様って言った?




