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いざ、出陣

そうしていよいよ出陣の日がやって来た。俺たちは一旦、エルドライの帝都に向かい、そこで各国の軍勢と合流してトリデリアに向かうことになった。ただ、ブライアルは敵国と国境を接しているため、抑えとして、三千の兵士をユアザライ村のあった場所に向かわせた。


今回は親父も一緒に言ってくれるとのとこで、不安はいくらか軽減された。彼は彼で自分の鎧をちゃんと持っていて、少し古くはあったが、よく手入れが行き届いた鎧を装備して、側に控えてくれている。


剣聖・ジサが俺に帯同するとあって、国中から志願兵が多く集まり、しかもそのほとんどが親父の弟子だった。城にやって来た彼らはまるで同窓会のような趣となり、一瞬、コイツらも腑抜けなのだろうかと思ったが、やはり親父が手塩にかけて育てただけあって、皆、面構えが違う。中には子供の頃に遊んでくれた者たちの顔も見えて、俺自身も懐かしかった。ただ、昔の名残で坊ちゃんと呼ばれてしまったのは、少し面映ゆかったが。


心配性のフィリアは、部屋を出る直前まで俺を抱きしめてくれた。そうしていないと彼女自身も不安なのだろうが、何となく、抱きしめられている時間に比例して、生還する確率が上がるような気がした。きっと、今回も無事に帰ってこられることだろう。


俺は別室で用意されていた美々しい鎧に身を包んで、王都を出発した。町には華やかな出陣を一目見ようと、押すな押すなの人だかりができた。そんな中を縫うようにして俺は馬に乗ってゆっくりと出陣したのだった。


軍の編成や隊列はすべて、総司令官・コレハが行った。彼は、慇懃無礼な態度を俺の前では取っているが、腹の中では、素人は黙っていろと思っている節があって、俺はあまり好きにはなれない男だった。まあ、最終決定権は俺にあるので、間違っても独断で軍を動かす男ではないとシェイスが言っていたので、ある程度のことは任せようと考えていた。


ちなみに今回は、俺の周囲を親衛隊が固めている。つまりは、剣聖・ジサの弟子たち二百人が馬廻りとして俺の周囲を固め、さらにその前後には、オジキがの弟子たち二百名が固めている。すべて、名のある剣士たちばかりであり、ちょっとやそっとでは、俺の許に近づくことさえ難しい程の様相を呈していた。


途中、二か所で休憩と野営を行いながらエルドライを目指す。野営と言ってもそれは兵士たちだけで、俺は親父やオジキらと共に、近所の領主の屋敷に逗留する形だった。俺だけそんなことをしては兵士たちに示しがつかないのではと思ったが、野営中に国王が襲われて死んでしまっては元も子もないので、このような形を取っているのだと説明された。ちなみに、大上王は兵士と一緒に雑魚寝をしていたらしいが、いびきがことのほか煩く、国王の位置がバレバレだったために、仕方なく、館に逗留することになったのが最初だと、オジキがコッソリと教えてくれた。


行軍は順調で、まったく敵に襲われることなくエルドライに到着した。帝都の城壁の外には夥しい数の野営テントが張られていて、そこに兵士たちが犇めいていた。ブライアル軍は城壁の中に入ることを許され、エルドライ軍の練兵場を宿舎として宛がわれた。だだっ広い草原があると同時に、兵士用の宿舎もあり、そこを利用させてもらえるのだという。ただ、やはり全員を収容することはできずに、一部の兵士たちはグランドでテントを張って野営する形になった。


聞けば、練兵場は帝都内に四か所あり、そこを宛がわれたのは、ブライアルを含めて四カ国だけなのだそうだ。つまり、この国たちが大帝や皇帝の側近くに陣を構えて彼らを守護する役目を担っていて、そういう意味では、我が国は特別待遇を受けていると言えた。


ふと、あの大帝の顔が目に浮かぶ。彼のことだ、お前を優遇してやったのだから、俺を裏切るなよと恩を着せてくるに違いない。あのオヤジはそういう人間だろうし、当たらずとも遠からずと言ったところだろう。


そんなことを考えていると、使者がやって来て、作戦会議があるので城に来るようにと言われる。家来は五人まで伴って構わないとのことで、総司令官・コレハとカルハスという副官を連れていくことにした。あとはシェイス、親父とオジキの三人を連れていくこととして、俺たちは城門を潜った。


通されたのは、金銀で装飾された豪華でだだっ広い部屋だった。あとで聞いてわかることだが、そこはダンスホールらしく、本来は美々しい衣装を身に纏った男女が踊る場所なのだそうだ。前列に並べられた椅子に各国の王が坐り、家来たちは少し離れた場所で座る。すると、大帝と皇帝がやって来て、俺たちの目の前に座る。二人とももう今すぐにでも出陣するかのような鎧を着ている。しまった、俺も鎧を着てくるべきだったかとは思ったが、もう遅い。周囲を見ると、半分くらいの王は鎧を着ている。先に言ってくれよ。


大帝はやおら立ち上がると、俺たちの前に出てきて口を開いた。


「これから、各国の陣立てを発表する」


陣立て? もう、戦いは始まっているのか?

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