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俺は普通の高校生なので、  作者: 雨ノ千雨
3章 俺は普通の高校生なので、帰還勇者なんて知らない
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断章 夢の懸け橋《ドリーミン・ワンダー》 ➂


 夜になって、眠りに落ち――


 そしてあたしは今夜もあいつの夢を観る。




 や、待って。



 なんかこの言い方だと、あたしがあのバカのことをめっちゃ好きみたいじゃん。


 違うから。


 そういうんじゃないし。


 誰が聞いてるわけでもないけど、誤解のなきようお願いします。



 これはそういうんじゃなくって情報収集だ。


 でも、昨日までとはその意味は違ってる。



 攻撃するためとか防御するためとかじゃなくって。


 バカなあたしがこれ以上おかしな誤解をしないために。



 あれから観たのはアムリタ事件での戦いと、日中に観た悪魔との戦いのリピートだ。


 またなにか見落としてヘンな勘違いしないようにそこだけ観てた。


 それ以外のことは観ないようにした。



 ホントは愛苗のことを観たかったんだけど。


 魔法少女関連のことね。


 でも、なんとなくやめた。



 それでアムリタ事件なんだけど。


 なんかこれもちょっと観ちゃダメだったかも。


 情報的にどうとかってよりも、エルフィーネさんが出てたから。



 新しく知れたことは結構あった。


 弥堂がどんな戦い方をしたのかとか。


 その中で使ったあたしの知らないスキルとか。



 戦い方は望莱の言ったとおりで、なんかすんごかった。


 グロイって意味でもそうだけど、でも別に感じることもあった。


 それは戦いに対するあいつの執念みたいなものだ。



 どれだけ不利だろうが、何が何でも勝ちにいくって姿勢って言えばいいのかな。


 わかってたつもりだけど、改めて実感した。



 でも。矛盾するみたいだけど、なんとなくそれには不思議もなかった。


 これが弥堂なんだって、あたしはもう知ってたからだ。



 顛末としては結局龍脈暴走の時と一緒な気もした。


 あの時は悪魔で、今回はテロリストや“G.H.O.S.T(ゴースト)”で。


 関わった人全員が酷い目に遭ってた。



 これに関して言えることや言わなきゃいけないことはいっぱいあるのかもしれないけど。


 とりあえずノーコメント。


 やっぱこれが弥堂なのよねって感じ。



 あとはあたしの知らないスキル。


 ルビアさんの【燃え尽きぬ怨嗟レイジ・ザ・スカーレット】に。


 エルフィさんの必殺へんたいパ――じゃなくって、“零衝”――の超必殺バージョンみたいなの。



 これらはあたしとの戦いの時に使わなかったものだ。


 あの時にあたしに使おうとしてた蒼い焔が【燃え尽きぬ怨嗟レイジ・ザ・スカーレット】なんだと思う。


 こっちは使うのをやめたのか、不発だったのかはわかんない。



 でも、零衝の超必殺バージョンは使おうとしてなかった。


 これ使われてたら多分保険は通用しなくて、あたしは死んでたと思う。


 使わなかった理由はやっぱりわかんない。



 けど、それはもう別にいい。


 あたしはもうあいつと戦おうとは思わないから。


 少なくともあたしからは。



 だからこういった情報たちよりも、あたしが気になったことは全然別のことだ。


 それはなんというか、その……、エルフィさんとのやりとりだ。



 こっちが有利になるとかそういうことじゃなく。


 なんか「ふわぁー」って感じ?


 や、ホントに恋人だったのねーって。


 最後の方とかエルフィさんめっちゃカワイイしキレイだし。


 弥堂もなんかちょっと照れてた? 意外な一面よね。


 だから違う意味で見ちゃダメなやつだったなーって。



 そうすると今度はまた別のことが気になってきたり。


 ルビアさんやエルフィさんのことで。


 でもそれは今回のことや、そもそもあたしに全然関係ないこと。


 だからとりあえず今は考えないようにする。



 でも。


 そうするともう観るものはなくって。



 でも――



 キラキラと光の粒子が降り注ぐ。


 そんな中で空を見上げている。



――でも。


 あたしはまた、悪魔を全部やっつけた後のシーンを観ていた。



 特にここに気になることや、重要なことがあるわけじゃない。



 ただ、意味もなく。



『世界』に広がる蒼銀の煌めき――


 その優しい輝きを観ていた。



 この時、弥堂はどんな顔をしていたんだろう。


 あたしは別にそれを知る必要はない。


 だけどなんか気になって、ここのシーンだけを何回も。


 観たところで見えないのはわかってるのに。



 こんな出来事があった。


 それを知っていたとしても。


 知ってるだけじゃ結局なんにもわかんない。



 さて。


 ずっとこんなことしててもしょうがない。


 そろそろスキル切ってあたしもフツーに寝よ。



 そう思った時――



 ん?



 ブツリと――



 あたしがスキル解除する前に、映像がブツ切りになった。


 そして真っ黒に。



 あれ……?


 これって前にも……



 そんなことを思った時――



「――あーあー? き、聴こえますかぁー?」



 おや? この声はもしや――



「――ゴ、ゴメンなさぁーい! さっきは途中で切れちゃって……」


 あら、プァナちゃん。



 前に観た時と同じ構図でプァナちゃんの映像が現れた。


 彼女は何故かとっても焦った様子で喋ってる。



「あ、でも……。前のやつより先にこっちを見ちゃってたらどうしよう⁉ 全然意味わかんないですよね? あ、あの、私プァナっていうんですけど……」


 知ってるってば。こないだのいきなり切れちゃったからビックリしたわよ。


「ゴメンなさい。前回は途中で時間制限きちゃって。今緊急で魔法を回してます……」


 そんな配信者さんみたいな……


「では今回のは“vol.2”ってことで……」


 え? まさか3もあったりすんの? シリーズものなのこれ?



 お互いに通じてないけど通じてる風の言葉を擦れ違わせて――



「どこまで言いましたっけ……?」


 えっと、なんか注意点? あのバカのことで気を付けないといけないことって。


「――あ、そうそう。お兄さんのことで、気を付けないといけないことがありまして……」


 うんうん、なに? 気を付けるとこだらけだけど。



 プァナちゃんは咳ばらいをして体裁を繕ってから本題に入る。


 もう1分くらい経ってるけど時間だいじょぶそ?



「お兄さんってなんていうか、その、ちょっとアレじゃないですか? こんな言い方よくないですけど」


 あーね。うんうん、わかるわかる。


「あの人自身、日頃の行いが悪すぎて。だからとっても誤解されやすいというか……」


 誤解じゃないことの方が多そう。今のあたしが言えたことじゃないけど。


「あ、誤解じゃないことの方が多いんですけど! でもでも――」


 それ今あたしが言ったし。でも、そうね。やっぱ日頃の行いが悪いに終着しちゃうのよね。ホントはもっと言いたいけど今は言えた立場じゃないから代わりにお願い。



 もしも彼女が目の前にいたらきっと共感の嵐なんだけど。


 でもそれは叶わない。



 プァナちゃんはまた弥堂のために何かを一所懸命伝えようとしてくれてる。


 でも彼女は――



 そっか。


 プァナちゃんにとっては、“殺された”んじゃない。


 “殺させてしまった”、なのよね。



 あたしはそれがすごく悲しく感じて、遣る瀬無く思う。


 でも今は、なにも考えない。



「お兄さんって、誤解されてもそれを解こうとしないんです!」


 あー、うん。かも。


「それって甘んじて受け入れるとかそういうカッコイイのじゃなくって。単純にめんどくさがったり。あと、誤解されておけば嫌われるから楽とか、そのまま戦いになるから効率いいとか。そんな頭おかしいこと考えてるんです!」


……うん。そーね。頭おかしーよね……


「だからなんにも説明してくれないし。そもそも誤解じゃないことも多いしで、こっちはどうしていいかわからなくなっちゃいます!」


 ノ、ノーコメントで……っ!



 どうしよう。すっごくノリたい。一緒に文句言いたい。


 でもガマン……



「でもでもっ! ホントにごく稀に、いいことする時もあるんです! あ、いいことって言っても……」


 うんうん。善意があったわけじゃなくって、結果的に“いいこと”になっただけってことでしょ?


「……あと、ほっといたらほっといたで何するかわかんないし、余計に大変なことしちゃったり……」


……うん。


「だけど、あんまりうるさく言ったり、しつこく訊いたりすると不貞腐れちゃって……」


 あー、そういうヤツってマジめんどいわよね。



 なんか、何言ってるかよくわかんないけど。


 でも何故か、何を言おうとしてるのかすっごくよくわかってきちゃった。



「でも、何も言わないで大人しい時は何考えてるかわかんなくて怪しいし。姿が見えなくなると、どこでどんな悪いことしてるかわかんなくて不安になるし。あ、これは私というより他のみなさんがそんな感じでした。えへへ」


 あーん。プァナちゃんかわいー。


「私それ見てたから知ってて。それで実際一緒に行動するようになったら思ってたよりもその……。でも、私のせいで大変な状況だから、あんまり強くは言えない立場というか……」


 あー……っ! わかる! その気持ちいまスッゴクわかる!



 まさに今のあたしだ。


 共感がハンパないけど。でも時間ヤバくない?


 このペースだとまた……



「……なので! 今回もどうせ悪いことしてるんだって決めつけちゃうと、とっても大変なことになっちゃいます!」


……ハイ、ソーデスネ。


「直接本人に訊いてもちゃんと答えてくれなかったり。めんどくさそうにしたり、ヒドイこといっぱい言ってきたりで……」


 うん。なんか言ったと思ったらさ――


「――ウソばっかり吐いたり! だからお話するのもそれはそれで大変なんですけど! だけどほっとくとやっぱりもっと大変なことになっちゃいます! ていうか、なってました!」


 そうよね……。あたしもちょっとだけ観た……


「その、なんというか……。気を遣うとか、配慮……? そういうのって普通は人間関係で大切なことだと思うんですけど……」



 うぅ……、もうわかった。わかっちゃった……。ていうか今日でもうわかってる。


 次結論よね? 


 聞きたいけど聞きたくない……



「あの人相手にはそれダメです! ちっともこっちに来てくれないから、お兄さん相手に遠慮とか配慮とかしてるとなんにも進みません!」


 いやー!


「みんなそれで失敗してました! だから、多少嫌がられても、普通だったら無礼とか無遠慮になっちゃうとしても! それでも体当たりでいくしかないです! あの人難しすぎて攻略法とかありません! ゴメンなさーい!」


 ゴメンなさーい!


「それを言いたかったんです。迷惑かもしれないですけど、どうかお願いします。がんばってください!」




 そこでプツリと映像は途切れてしまった。



 …………



 も、



 もっと早くききたかったーっ!


 探ったり配慮したりとかしてる内にわけわかんないことになって気付いたらキスなんかしちゃってましたー!


 なんでぇ⁉



 うぅ……、プァナちゃんにはわかってたのね……


 それが前回ので訊けてたら――



――とは、思わない。


 これは自業自得だ。



 だって。


 プァナちゃんのアドバイスがなくても。


 ちゃんと大正解をしてた子はすでに居たんだから。



 そして今は、あたしもわかってる。


 今度こそ、ちゃんと。



 こんな夢の中なんかじゃなくって。


 現実であいつを目の前にして――










「――ゴメンなさいっ!」



 次の日の朝。


 昨日とおんなじように弥堂を屋上に呼び出して。



 あたしは勢いよく頭を下げる。


 そのまま相手の反応を待った。



 待った、けど。



 いつまでたっても弥堂からの返答がないので、チラリとあいつの顔を見てみる。


 なんか口開けたまんま固まってた。


 あによ、その顔。



 でも今日は謝りにきたのであって、ケンカとかお説教をしに来たわけじゃない。


 とりあえず様子見よ。


 あんまりあいつっぽくない、ちょっとマヌケな顔をジッと見る。


 そしたらようやく弥堂が喋る。



「…………なにが?」


「は?」



 なに? そのアタマおかしいヤツを見るみたいなリアクション。


 だからゴメンって言ってんじゃん。


 なんでわっかんないかなあ。


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― 新着の感想 ―
プァナの励ましがあれば……これはもう、行くしかありませんね!
ツンデレ(?)系ヒロインでここまで文句来なそうなの初めてだわ、そうだよね弥堂がイかれすぎてるもんね。
弥堂くん相手の謝罪は自己満足だけで終わらせた方がいいと思うけど七海ちゃんは真面目ギャルだからしっかり謝っちゃうんだろうな これで七海ちゃんとは大体和解したようなものだけど聖人がどう動くかがとっても気…
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