唯君とのダンス
唯君と踊るのだが、かなり唯君はリードが上手い。
だから久しぶりな私でも安心して踊る事ができる。
「先輩ってダンス上手なんだね?」
「え?そんな事ないよ。久しぶりだから…」
「先輩って、てっきり踊った事ないかと思ってたよ」
そうですねー…そう思われるのが普通だよね
なんたって庶民ですからね……
「小さい頃に叩き込まれたからね…」
あんまりいい思い出ではないけど…
私の小さい頃にはろくな思い出はない。
まぁ、それでもあの人のおかげで生活は出来たのだけどね…
この話は舞踏会なんかで、すべき話じゃないのだ。
これ以上詮索しないで……
というオーラを送っていると…
「そうなんだ?」
ちょっと空気が悪くなったのに気付いたのかはわからないけれど、唯君はこれ以上この事には触れてこなかった。
唯君はこう言う事にはきっと敏感なんだとおもう。
自分も親の事で苦労してきているからだろう
「でも良かった。先輩が踊れて」
「ん?なんで??」
「だって……」
グイッ
「唯君?近くない??」
確かにダンスは密着しなきゃいけないけど、これは近すぎる。
唯君の鎖骨に鼻先があたりそうだ。
唯君が耳元で囁く。
「ダンスが上手だったら、くっついても足踏まれないでしょ?」
「は?え?」
近い近い近い!
早く曲終わってーー汗
こんな至近距離だったらいろんな意味で心臓に悪いよ……
オーケストラの演奏が終わった。
やっと終わった……
と、一安心しているところで…
「先輩、ドキドキした?」
なんていう質問をしてくる唯君。
「え?えっと……」
「その反応は図星?」
「え、違うよ……多分」
「多分?まぁ、いいや。」
ニヤッとしながらこっちを見てくる。
「……踊ってくれてありがとう」
それだけ言って次の曲になる前に抽選の結果を見に行こうとすると、
「もう行くの?」
「うん、だって抽選だし……」
「あ…そっか。じゃあ一個だけ言わせて?」
「何?」
「先輩、今日すごくキレイだよ。これだけ言いたかったから」
「え?え?えぇっ⁉︎」
唯君どうしたの?
いつもの感じじゃないから調子くるうではないか……
「あ…ありがと」
そう言って私は次の抽選結果を見に行ったのだった。
「はぁ……どうせ今行った事本気にしてないんだろうな……。本当に鈍過ぎるよ。ほんとうは誰にも渡したくないんだけどね……。
はぁ、こんな事なら千兄に遠慮せずにバディになっとけば良かった……」
なんて言う唯君のつぶやきはもちろん届くはずもなかった。
抽選結果を見に行くと、
「あ、今度は聖夜さんとだ。」
また知ってる人で良かった…
ふと思ったけど、私、運良すぎじゃない?
だって抽選の女子って少なくとも30人は居るんだよ??
それなのに、この高倍率の中、私なんかが人気のある人と踊ってもいいんだろうか……
まぁ、クジ運だよね。
この次はきっと知らない人になるんだろうな
なんて事を考えながら、聖夜さんの所に向かうのだった。




