一難去ってまた一難
「ふーー。満腹満腹!」
こんなにおっさんくさい始まり方ですみません……
こんな事を言ったのはもちろん、この、ひなのです。
私はあの正座地獄から解放されたあと、20種類以上のスパイスをブレンドした、インド人シェフ特製のこだわりインドカレーをたらふく食べ、満足感に浸っていた。
そしてなぜか、他の二人ともインドカレーを食べて、結局一緒に昼食をとる形となってしまったのだ。
「はー、久しぶりにカレーを食べたよ」
「そうなの?まぁ、そういう私もだけどね」
あっ…
「唯君、ついてるよ?」
「え?」
私は口の端についたご飯粒を取ってあげた。
「あ、ありがと……」
一度ぶつかった視線がふいっとそらされる。
カチャン
「ごちそうさま」
その時突然、無駄に大きな音をさせ千里君が席を立った。
ビックリした……
その驚きで、唯君からパッと離れる。
すると、
「先輩にもついてるんじゃない?」
と言って顔を覗き込まれる。
「うそ?どこどこ??」
「えっと……ココとか?」
スリッ
唇を指でなぞられる。
「ちょっと……唯君、くすぐったいから」
そう言っても、唯君は触れるのを止めてくれない。
顔を右にそらしても、唯君の右手が後頭部、左手が顎に添えられているから、すぐに上を向かせられる。
「唯君??そろそろ離して…?」
唯君はこっちをずっと見つめているだけで、何も言わない。
「唯君?」
顔が近づいてくる。
え?うそ?まさか??それはないない…
その事が頭をぐるぐる回って、体が上手く動かない。
唯君のサラサラなクリーム色の髪が鼻にかかる。
「ちょっと…本当に離し……」
バンッ
その時、ちょうど扉が開いた。
「何をしている、二人とも……」
文だけを見るとそこまで感じないかもしれないが、そこに立っていたのはいつものクールな千里君なのだが、とてつもない怒りのオーラが感じられる。
一気にその場の空気が冷たくなる。
その殺気立った空気に、二人とも固まって何も喋れない。
「何をしているのかと聞いているんだ。」
さっきとは明らかに声のトーンが違う。
「千兄…もしかして……」
「何か言ったのか?唯」
「いや…何も……」
沈黙が少しの間続くが、それを破ったのは千里君だった。
「もう君は帰れ。それと唯、二度とこの家に女を連れて来るな。お前でもそれ位の事は分かるだろう」
「分かってるよ、千兄。でもっ、先輩にそんな言い方ないじゃん」
「これ以外にどんな言い方があると言うんだ?それと、君ももう二度とこの家には来るな良いな?」
「え……う、うん。」
千里君、どうしたんだろ……
途中からいきなり態度が変わった。
「それなら良い。」
そういうのと同時に千里君は何処かに行ってしまった。
「ごめんね…先輩。ボクのせいで…」
「唯君のせいじゃ無いよ?気にしないで?」
そう、今日は楽しかったし…
「そう言ってくれると助かるよ。家まで送ってくよ」
「え…ありがとう」
断ろうかと思ったが、道がわからないので大人しく黒塗りの車で送ってもらうことにした。
……………。
車の中では何を話したら良いのかわからず、沈黙が続く。
「先輩には、ボク達の話を聞いて欲しいんだ
千兄はどうか知らないけど……。聞いてくれる?」
「うん。」
なぜ千里君が怒ったのか気になる私は、軽い気持ちでこの時は答えた。
でも、私はこの後、唯君から、信じられない事を聞くことになる。




