不機嫌な兄弟
その声を頭に残しながら、夢にあの人が出て来ますようにと願いながら、私は眠りに落ちた。
その日の夢に結局あの人は出てこなかった。
そして金曜日、ダルい授業を受けながら、明日か…唯君と映画見に行くの。
なんの映画が良いかな……
やっぱり定番のアクション?それとも、最近マンガが原作の物が多いラブストーリー?
それとも、ホ、ホラー?
ホラーはやだなぁ……
なーんで事を考えながら授業を受けていると、いつの間にか終わっていた。
#注 高2生の皆さんは、真似しないように!
やっと帰れる!
と思って帰り支度をしていると、隣の千里君が、
「明日は唯とどこかに行くのか?」
と、聞いてきた。
「え??なんで知ってるの?」
そっか、そういえば兄弟だったっけ……
あんまり似てないから忘れてた。
「唯を見てれば分かる」
ワァオ!長年の絆……
はぁ……ちょっとおどけてみたけど、ばれているという事実は、変わらない。
「まあ、ちょっと映画に……」
「……」
それを聞くと何か考え込むような素振りをする。
聞いておいて何も感想なしかい!
「あの?えっと…?」
千里君が何も喋らない沈黙の場をなんとか埋めようとする。
が、
「……………」
それも無駄だった。また、沈黙沈黙沈黙!
このシチュエーション多いな…
もういっか、帰り支度も終わったし帰ろうと踵を返した途端に、手首を掴まれる。
「え?」
びっくりして思わず振り返る。
でも、びっくりしている人はもう一人いた。
千里君だ。
「……?」
無言で首をかしげる。
なんだろ…この状況……
どうしたらいいの?このまま帰るべき?それとも、そのまま動かない方がいいのだろうか?
私が頭の中で考えていると、千里君は
「すまない、時間を取らせてしまったな」
と、パッと掴んでいた手を放す。
「無意識に君の手を掴んでいたようだ。何でだ?」
と、私に聞いてきた。
「えっと…私に聞かれても……」
「そうか…。」
また考え込んでいる。
沈黙が再び支配する中、それを断ち切るために、私は帰る事にした。
「じゃあ、私帰るね?バイトあるし」
「あぁ、またな」
ガラッ
私は教室を出て、なんで手を掴まれたのだろう?とふと疑問に思ったけど、何となくだよね!と軽く考えていた。
この時、千里君が教室で私の手首を掴んだ自分の手を見ながら理由を考えて、
「君といると、僕のペースが乱される……何故なんだ?何故か落ち着かないし、少しの事で怒りやすくなる。分からない……」
何てことを呟いていたなんてことを知る訳がなかった。
うどん屋 安一 でのバイトを終わらせた後、家に帰って明日着ていく服を選ぶ。
「何にしよう……まぁ、いつものでいっか」
面倒くさくなった私は、結局よく着る普段着で行くことにした。
この事で、唯君の機嫌が悪くなるのも知らずに……




