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レストランから一歩外に出ると、サウナが待ち受けていた。屋外なはずなのに、熱気の逃げ場がない。ものの数秒で溢れた汗を拭い、もどかしい思いで固い日傘を開く。架純ちゃんの手を握って先を歩いていた佐倉さんが、振り返った。
「今日は付き合ってくれて、ありがとね」
「こちらこそ。家にいたら、絶対ダラダラしてたもん」
「美味しいご飯に、楽しいお喋り。この後は……」
「ママぁ、あつーい、だっこしてー」
帽子を被った架純ちゃんが体をくねくねさせ、暑さが倍増しそうな音量で騒ぎ始めた。
「買い物行ったりマッサージにでも行けたら言うことないんだけど。あと五年は無理だわ」
騒ぐ我が子を押しやって、肩をすくめる。
ロウリュみたいな熱風が吹いた。眉をひそめて、日傘を風の来る方向に向ける。
「ここら辺にさ、ウワサのマッサージ屋さんがあるんだって。探してみたかったんだけどなぁ」
佐倉さんが、タオルでひっきりなしに首元を拭きながら言った。
「評判がいいってこと?」
「うん。病気も治るくらい凄腕だって」
胡散臭そうな表情がなるべく表に出ないように頷く。
「へぇ。何てとこ?」
「それが、店名までは分からなくって。一日三人限定で、何ヶ月も先まで予約が埋まってるらしいよ」
手を肩に当て、首をポキポキ鳴らしてみせる。
「マッサージいくの? かすみもいっていい?」
「だーめ」
不服そうに頬を膨らます架純ちゃんに、わたしは手を振った。いつまでも引き止めていたら、彼女たちが干からびてしまう。駅の方に消えていく二人を見送って、バス停へと歩を進めた。ここら辺に土地勘はあまりないのだが、不思議と足取りに迷いはなかった。
『ちょっとヤバいよ』という言葉が、スピードを上げさせる。街路樹の葉が、誘うように上下に揺れていた。




