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夢を見た。
広がった暗闇の中に、ひらりと落ちる、紅ひとつ。それが弧を描き、いつの間にか、無数の花びらが渦を作っていた。幾度とみた、この夢景色。
描かれた円の奥に、一本の木が見えた。初めて見る木だ。背の高いその木は、灰白色の樹皮が所々剥げ、枝葉を落としても、凛としてそこに佇んでいた。
ゆっくり離されていく意識を繋ぎ止めるように、わたしの体から剥がれた花びらたちは舞い続ける。
忘れないで、と。
泣き声ともうめき声ともとれる紅い風が、今にも朽ちてしまいそうな老木を包む。
忘れないで、愛しいあなた。
翌朝、狂い咲きの白木蓮が、小ぶりながらも美しく開花していた。その花びらは一枚だけ、真紅に染まっていた。




