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第73話 傍聴席

「はー!しんど。そろそろ行かなあかんな」

アルマを制圧し、疲労を回復していた風間。武器が立ち並ぶ部屋で出口を探す。しばらく探したが出口がない。

「どーなってるんや?この部屋出口ないやん」

風を部屋中に飛ばすが空気の通り道も感じられなかった。

悩んでいると、目の前の空間が歪む。

「なんや!」

風間は風刃を出し、構える。

「アルマ。負けたの。」

エゴが目の前に現れ、アルマを空間の中へ引き込み、こちらを見る。

「さっきは行ってやったけど、今回はそうはいかんで!」

風刃を飛ばす。風刃はエゴの前で消えた。同時に風間は自分の能力が使えなくなる。

「は!?」

「うるさい。」

目の前の空間が裂けてそこに飲まれる。

「やられた」

空間から抜けるとそこは透明なケースのような場所で椅子が何個も並べられていた。

「なんやここ」

ケースの外を見ると研究室のような場所で神城と白衣の男が対面している。

「かみっちゃん!!」

風間は能力を出そうとする。しかし自分の能力が発動しない。

「どうなってるんや」

そうこう言っていると、もう一度空間が開く。

そこから北見さんが出てくる。

「ちょっと。乱暴ねー。あら凌ちゃん。無事だったのね」

「北見さん!良かった無事で!あの女の子は?」

「もちろん、可愛がってあげたわよ」

それ以上、風間は聞かなかった。

「それより、これなんなの?透ちゃんがいるけど、私達の声は届いてないし、能力も使えない」

「そうなんですよ。これ、割れないですよね?」

風間がケースを指差す。北見は一度本気で殴ってみるがびくともしない。

「椅子に座れと、そういうことかしらね」

「そうみたいですね」

二人は椅子に腰掛け、そうすると、黒瀬と神城の声が聞こえてくる。


——「真様…。この空間に出口がございません」

朧がすぐに帰ってきて、報告をする。

「どういうことだ」

「分かりません。ただこの空間には出口がないのです」真は一瞬で周囲を探り、その事実を確かめた。

「俺たちは最初から嵌められてたってわけか…黒瀬は初めから俺たちを一ヶ所へ集めるつもりだったのか。」

「っっ!!」

正面の空間が裂けエゴが現れる。同時に二人の足元で寝かせていたひよりの身体がなくなる。

「二人とも。抵抗ダメ。このまま来て。」

エゴが開いた空間の先にひよりがいる。真と朧は戦闘態勢を解き、エゴの指示に従う。

そして、空間の先には神城と黒瀬が対面している。

「真様…この空間では能力が使えません」

「そうみたいだな…だが、ひよりから託されたこれは使えるみたいだ」

指輪が少し光る。

「だがここは、大人しく待ったほうが利口だな」

「一旦俺たちの馬鹿弟子でも見てやるか」

「きっと神城くんなら大丈夫です」

真はひよりを抱えたまま、朧と椅子に腰掛ける。


——「黒瀬ぇぇぇ!!!」

培養液入りの水槽を割って進む鬼塚は、黒瀬への怒りをぶつけていた。

水槽に入っているクローン達は、管理者がいなくなり、もはや活動することはない。

鬼塚はせめて、あの水槽から解き放ってやろうと思い、無造作にクローン達を開放していた。

「暴れすぎ。」

気付けば目の前にエゴが現れる。

「エゴ!お前達は!」

鬼塚は白銀の獣と化し、エゴへ襲いかかる。鬼塚の拳はエゴの前で見えない壁に当たり、止まる。触れた瞬間に、獣化は解かれる。

「なんだと?」

自身の意図していない変身の解除に、違和感を覚え、もう一度、能力を使うが上手く使えない。

「どうなってる!なぜ使えないんだ」

「あなた。暴れる。良くない。」

鬼塚は自身の周りに透明の壁があることに気づく。

「これか…こんなもの!」

全力で壁を殴るが、びくともしない。むしろ殴った拳から血が出ている。

「このまま。連れてく。」

壁に包まれたまま裂けた空間に入れられる。そこには風間と北見が椅子に座っていた。

「あれ、豪さん」

「どうなってるんだ」

「俺らもさっき来たばっかですよ」

「豪ちゃんも連れてこられたの?」

「ああ。能力を封じられた」

「やっぱり!俺らもそれで連れてこられたんですよ」

「あのエゴとかいう子の能力なのかしら…」

3人が揃いあれこれ考察していると、中央の黒瀬が話し始める。


「さぁ、傍聴者も揃いつつある。話をしてもいいが…どうだ?透。ここで賭けをしないか?」

「賭け……?」

そう言いながら黒瀬は中央のスクリーンに視線をやる。そこには鷹見さんとカナが戦っていた。

「彼らは、暴走したソルス——霧島一輝と戦っている。どちらが勝つか。それを賭けようではないか」

黒瀬は不気味な笑みを浮かべる。

俺は、迷う事なく

「カナが勝つ。絶対にだ」

「そうか。お前の賭けはそっちだな。エゴ、彼を引き離しなさい」

「はい。お父様。」

エゴが空間を開き、その中へ入る。するとモニターの先にエゴが現れる。


——カナは暴走する一輝と対面し、何度も斬り合う。

そこに空間が裂け、エゴが現れる。

「エゴ!?なぜここに!」

鷹見はソルスに向けていたカードをエゴに向け直す。「あなたは。邪魔」

鷹見のカードがその場から消える。エゴの壁により無効化されている。

「なんだと…」

エゴの空間に鷹見は呑まれる。

「霧島くん。あなたなら大丈夫です」

そう言い残し、鷹見とエゴは消えていった。

「一人にされたか…。」

状況を冷静に判断し、先ほどまで流していた涙はもうない。カナは深く息を吐いき、言葉の通じなくなった一輝へ向け、居合を放つ。

「がっ!」

居合は一輝から生える夥しい数の赤刀に防がれる。赤刀が自我を持っているかの如く、増殖しカナを串刺しにしようとする。

赤刀のスピードは遅く、簡単に弾き落とせる。しかし、こちらからの攻撃も全て赤刀に防がれる。

「埒が開かないな」

「ががが!」


——俺は拳を握り締める。


「負けるな……カナ」

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